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地下牢の華  作者: 朱音小夏


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決意の夜

ここまで来るのは長かった。ようやく、ようやく雅楽を身請け出来る。千善はいつもお通り、金曜の夜に金糸雀へとやって来た。きっと雅楽は泣いて喜んでくれるに違いない。そう思いながら店の中へと入ると、小さい誰かが"ドン"とぶつかってきた。きっとお花であろう。そう思いながら下を見ると涙を流しながら嗚咽を漏らす彼女の姿があった。


「お、お花?一体どうしたんだ?...まさか、雅楽に何かあったのか?!」

「皇様...。申し訳ありません。私にはどうも出来なくて...。雅楽様を助けることが出来ませんでした...。」

「...助ける?...詳しく話してくれるか?」

「...はい。」


お花は千善にこれまでの事を全て話した。番である大和が雅楽を身請けすると言う事、今日までの間毎日の様に来ては雅楽を好き勝手していた事。...堕胎薬を飲むことを禁止された事。千善はお花の話しを聞いて呆然とした。自分が来なかった間にそんな事になっていたとは...。


「お花。まさか今日も?」

「...はい。遠里小野様がいらしております。」

「そうか。分かった。お花、楼主の所へ連れて行ってもらえるか?」

「は、はい。」


千善はお花に連れられて楼主の部屋へとやって来た。


「楼主様。皇様が楼主様にお会いしたいと。」

「あぁ。入れ。」


部屋の障子を開けると部屋の中は煙管の煙で充満していた。千善はそれに顔をしかめると、和武に詰め寄った。


「楼主。雅楽の身請けの件だが。」

「へぇ。残念ながら今回は別の方が身請けすることに決定しました。...皇様にはまた良いオメガをあてがわせていただきます。それでよろしいですか?」

「...オレは"雅楽を"と言っているんだ。」

「...残念ですが、その話しは終わりです。...決してこの決定が覆る事はありません。」


千善は食い下がったが、楼主は頑として意を覆そうとはしなかった。千善はしばらく考え込んでいたが、とある所にたどり着くと「楼主」と和武に話しかけた。


「なんでしょうか?」

「一度だけでいい。来週の金曜の夜。雅楽と最後の夜を過ごしたい。」

「...本気ですかぃ?」

「あぁ。それで雅楽の事は諦める。」

「分かりました。ではそのように。」


廊下で二人の話しを聞いていたお花は、この世の終わりとでも言わんばかりの顔で千善を見て来た。


「皇様...、本当に雅楽様の事を諦めてしまうのですか...?」

「お花。悪いな。ここから先はオレの考えるように動かさせてもらう。大丈夫。もう雅楽を傷つける事は無いと誓うよ。」

「皇様?一体何を...?」


千善は"シー"っとお花を黙らせると、その日は店を後にした。来週は勝負の日だ。そう自分に言い聞かせると、千善は花街の夜から消えて行った。


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