地獄と絶望
「そ、そんな...。よりにもよってこのタイミングで?す、皇様が黙っていないのではありませんか?」
「確かに、皇の坊ちゃんからも身請けの打診が来ているがな...。こちらとしても悩んでいるところなんだ。だが遠里小野様が提示される金額の方がデカくてな。こちらとしては、そちらと契約を結びたいと思っている。...なにより、遠里小野様はお前の番なんだから、そちらと結ばれる方が...」
「でも!僕は千善様と一緒にいたいです!!彼が本当の運命の番...。だからどうか...どうか...」
雅楽は和武に懇願するが...和武は父親としてではなく、楼主としての答えを選んだ。
「だが、雅楽。現に番であるのは遠里小野様。金額も上をいっている。これは楼主としての命だ。お前を遠里小野様に身請けしていただく。」
「そ、そんな...」
「...悪く思うなよ。こっちも商売なんだ...身請けまでは3ヶ月せめてその間に皇の坊ちゃんとお別れをしておくんだな。」
そう言うと、和武は牢から出て行った。雅楽は顔を真っ青にし、ガラガラと音を立てて心が崩れるのを感じた。...期限はあと3ヶ月。千善が帰って来るのは1ヶ月後。共にいられるのは長くて2ヶ月。もう絶望するしかない。やっと、やっとこんな牢の中でも幸せを掴めたというのに、こんなのってない。あんまりだ...。
「雅楽様...。」
「...お花。僕はとんでもない勘違いをしていたようだよ。...僕ははなから幸せになどなってはいけなかったんだ。」
「そんなことありません!そうだ!皇様が帰ってきたら身請けの話しをもう一度しましょう?きっと皇様も雅楽様のためなら...」
「お花。もういいんだ。もう期待するのは疲れた。大人しく大和様の元に行くのが...」
「そうだぜ?雅楽。お前はオレの所に来るのが一番だ。」
音もなく現れたのは大和であった。番のフェロモンに当てられ雅楽はヒートを起こし苦しんでいる。
「あぁ、雅楽。可哀そうにな。こんなにも苦しんで。誓え。オレの物になると。そうすれば楽にしてやるぞ?」
「だ、誰が...、そんな誓いをするもんですか。」
「おいおい。あんまり我儘を言っちゃあ、いけないぜ?」
大和はそう言うと、雅楽を抱きしめ耳元でささやく。
「今日はたぁくさん種付けしてやるからなぁ。それも孕むほど。嬉しいだろ?これからは毎日毎日来てやるからなぁ。なんせ、身請けは決まったも同然なんだから。」
雅楽は静かに涙を流す。これから己を待つのは地獄の日々。きっとこれは死ぬまで続くのであろう。あぁ、千善様ごめんなさい。貴方様に逢うのはもう無理かもしれません...。
「いいか?もうお前はオレの物なんだから堕胎薬を飲むのは許さない。必ずオレの子を産んでもらうからな。」
雅楽がいるのは地獄の門前。これからここへ入って行くのか...。千善様。貴方の幸せをずっと、ずっと願っております。




