終わりの始まり
最高の一日が過ぎ去り、季節は夏から秋になろうとしていた。あれから千善と行為をすることはなかった。が、共にいれるだけで幸せだった。そんなある日の事、千善は珍しく木曜に店に来た。
「千善様、本日はどうしたのですか?来るのはてっきり明日かと...。」
「それが、仕事で明日から大阪に行かねばならなくなってな。せめて旅立つ前にお前の顔でも見ようかと。」
「もう。お上手なんですから。」
その日珍しく千善も酔っていた。気分は最高潮に達していた。雅楽は「あぁ。今日は抱かれるな」と心の中で呟く。その予想は的中し、千善は雅楽を布団の海へと押し倒した。雅楽は千善の名を呼びながら両手を彼へと伸ばし、そっと頬に触れた。千善はその手を取ると手の甲に口づけを落とす。
「雅楽...。いいか?」
「...はい。貴方様がそれを望むなら。」
その言葉を皮切りに、千善は飢えた獣の様に乱暴に。且つどこか優しく雅楽を扱った。行為が終わると千善は電池の切れたおもちゃの様に眠りについた。
「...忙しい中来てくださったんですよね?ありがとうございます。愛しております。僕の運命。」
雅楽はそう言うと千善の横に横たわった。そして自らも眠りへとついた。夢で逢えますように、そう願いながら。
朝になった。千善は脱いでいた背広をきちんと着こなし、雅楽を起こさないようにそっと牢の外へと出て行った。地上波と戻ると扉の前でお花が待っていた。
「本当に行ってしまわれるのですか?」
「あぁ。この仕事が上手くいけば大金が手に入る。そうすれば雅楽を身請け出来るかもしれない。」
「...雅楽様のためだったのですね。」
「あぁ。...だが雅楽には言うなよ?驚かせてやりたい。」
千善の突然の出張は全て雅楽のため。もう雅楽なしでは生きていけない。そんな境地にまっでやって来たのであった。
「お約束ください。必ず雅楽様を迎えに来ると。」
「あぁ。その約束必ず果たして見せよう。では、またな。」
「お気をつけて。」
千善を見送ったお花は雅楽を起こしに地下へと向かった。雅楽はとてもよく眠っていて、その顔は幸せそのものであった。
「雅楽様、起きてください。朝ですよ。」
「んー...千善様起こしてくださいまし...。」
「寝ぼけないでください。私はお花です。皇様なら朝一番に店を後にしましたよ?」
「...え?!」
ここでようやく雅楽の意識が覚醒した。隣に千善の姿がない事に絶望して、「お見送りしたかったのに...」としょんぼりと顔を暗くした。
「またすぐにお逢いできますよ。それこそ、良い土産話でも聞かせてくださるんじゃないですか?」
「...本当かい?」
「えぇ。私が雅楽様に嘘をついたことがありますか?」
そんな恋愛話でもしている時だった。楼主、和武が現れたのは。
「雅楽、お花。おはようさん。早速で悪いが雅楽に良い話しがある。」
「?良い話、ですか?」
「あぁ、まだ返事は保留してはいるが遠里小野様がお前を身請けしたいと申し出てきてな。番なんだろう?良かったじゃねぇか。」
あぁ...。神様。僕は運命と引き離される定めなのでしょうか。




