外の世界
あれから金曜がやって来た。雅楽はドキドキとしながら千善の到着を待つ。すると、扉がバーンと大きな音を立てて開き早足で階段を駆け下りる足音が聞こえてきた。
「!!雅楽!!お前外に出れるとは本当か?!」
「は、はい...。誕生日に特別にと、楼主様が...。」
「...そうか。それは喜ばしい事だ。」
「そ、それで...せっかくなら千善様と共に出たいのです。」
雅楽はダメ元で千善に願うと、彼は笑みを浮かべ「当たり前じゃないか。拒否するわけがない。」と嬉しい返答をしてくれた。そして千善は言いにくそうに先週の事を謝罪した。
「雅楽。先週はその...、申し訳なかった!心にも無い事を言ってしまった。どうか許してはくれないだろうか...。」
そしてそのお手に握られていたのは美しい碧の装飾が施された簪だった。
「千善さま?これは?」
「誕生日プレゼントだ。これが一番雅楽に似合うと思って...。」
「...嬉しいです...。この碧、僕の目見たい...。」
「角度によっては黒にも碧にも見えるだろう?お前の目と同じだ。」
そう言うと千善は雅楽の頬に手を当てた。そして口づけをしようとしたところで、"コホン"と小さな咳払いが聞こえた。音の先にいたのはお花である。
「お二人とも。早くしなければ外を楽しむ時間が無くなりますよ?」
「!それはいけないな。雅楽行こう。」
「はい...!!」
そう言うと、二人は手を取り合いながら地上への階段をのぼっていく。あぁ...何時ぶりの地上だろう。そう雅楽は心を踊らせていた。それは一緒にいる千善も同じだ。雅楽と共に外に出られるなんてなんて夢の様だろうか...と。地上と地下を繋ぐ扉を開けると、雅楽はあまりの眩しさにに目を細める。それに気がついた千善は「大丈夫か?」と声をかけてくるが、雅楽は目がチカチカするなと感じ、そっと千善の袖を掴む。それに気がついた千善は雅楽の手を握ると、「行こう!!」と力強く声をかけて来た。雅楽はその手から伝わる体温に安心を覚えると、こちらも力強く「はい!」と返事をした。そして二人は"金糸雀"の外へと出た。花街の夜は夜なのに昼間までとはいかないが、十分明るい。そして、今の時期は露店が出ているので、二人は露店を楽しむ事にした。
「雅楽、何か食べたいものはあるか?」
「えっと、えっと...、あ!あのお肉の串焼きが食べたいです!!」
「見た目によらず男らしい物をチョイスするな。」
「!失礼な。僕も立派な日本男児です!...見た目は外国人の様ですが。」
頬をぷくりと膨らませた様があまりにも愛おしく感じ、思わず千善は雅楽を抱きしめた。雅楽の誕生日はまだまだ始まったばかりだ。今は彼に満足してもらうことを最優先にしようと心に誓った千善であった。




