幸せを望む者
「雅楽様。いつまでそうしているつもりですか?」
「...千善様は僕が遊女だって事を忘れてっらしゃる。...遊女は本来男の人に抱かれるのが仕事なんだからさ、僕が望もうが望まないが関係ないのに...。こんなにも心を乱されるのは初めてだよ...。」
「...それほど皇様は雅楽様の事を想っていらっしゃるのですよ。」
お花がそう言うと、雅楽は顔を赤くしながらそっぽを向く。しかし、次第にその顔を暗くすると、顔を膝にうずめ込む。
「こんな想いをするくらいなら"抱いてほしい"なんて言わなければよかった...。次逢った時どんな顔をすればいいんだろう...。」
「いつも通りでいいんですよ。だって何も悪い事をしたわけではないのですから。好きだからこそ出た言葉だったのでしょう?」
お花がそう言うが雅楽はいまだに自信が持てないようで、先程から"うーうー"と唸り声をあげている。そんな時だった。楼主である和武が姿を見せたのだった。
「おーおー。雅楽。皇の坊ちゃんとは上手くいってんのかい?」
「...ほおっておいてください。」
「折角いい話しを持ってきてやったのに邪険にするんじゃないぞ?」
「...いい話し、とは?」
どうせ碌な事ではないであろう。そう思っていた雅楽だが、次の瞬間に和武から出た言葉に驚愕する。
「来週の金曜。お前さん誕生日だろう?少しばかりの親心だ。特別に皇の坊ちゃんと外に出ることを許してやる。勿論、監視は付けるがな。」
「!僕は外に出れるのですか...?!」
いつも父親らしい事など言いも、しもしないというのに。寧ろ息子というより遊女として自分のよくをぶつけるだけぶつけに来るというのに...。何か裏があるのでは?と疑問を持っていると、それが伝わったのか、和武はため息をついた。
「そんなにオレは信用がないもんかねぇ。...何ならこの話し白紙にしてもいいんだぞ?」
「い、いえ!滅相もございません!とても嬉しいです。ありがとうございます。...父さん。」
「!...言いたい事はそれだけだ。休める時に休んでおくようにな。」
そう言い残し、和武は地下牢から去って行った。
「雅楽様!良かったですね...!まさかこんなことになるなんて...!」
「で、でも今は千善様と仲たがいしているわけで...。」
「そう思ってるのは雅楽様だけです!皇様帰り際とても後悔していましたよ?"心にも無い事を言った"と。」
「千善様が...。もとはと言えば僕が我儘を言ったからなのに...。」
そう言った雅楽の目には涙が溜まっていた。お花は"なんて綺麗な涙だろう"と思いながら雅楽以上に来るべき金曜に心を馳せるのであった。...どうかこの二人が幸せな時を過ごせますように、と。




