悲しみの逢瀬
モノクロの世界の中で一人涙する。今日は待ちに待った金曜だというのに千善を想うと涙が止まらない。早く涙を止めなければ。千善が来てしまう。そう思っている時だった。足音が聞こえてくる。あぁ。間に合わなかった。
「雅楽!ようやく逢いに来れた...。雅楽?どうした?」
雅楽は涙に濡れた顔を上げると...千善を中心に世界に色が戻ってくる。
「雅楽?!泣いているじゃないか!何があった?」
「い、いえ...。なんでもありません...。」
「何でもない事は無いだろう。...?雅楽、手首が紅く...これは縄の痕?!まさか乱暴されたんじゃないだろうな?!」
雅楽は思わず項に手をやる。千善はその動作に気が付き雅楽の手を取ると髪をかき分け項を見る。そこには忌々しい噛み痕が。千善は全身の血液が沸騰するかのような怒りを覚えた。
「...番ったのか....オレ以外の奴と...。」
「千善様。誤解があるようなので言っておきます。...僕はここに来る前に既に番がいたのです。...ですが同意ではありません。とある集落の古い習慣によるものです。...この噛み痕は、その番によるものと楼主様によるものです。」
「!...すまない。嫌な事を思い出させたな。忘れろ、と言うのは難しいかもしれない。だが、オレといる時間は楽しんではくれないか?」
千善はそう言うと雅楽の手首に残った紅い縄の痕にそっと口づけた。
「...今日、千善様が来るまで世界はモノクロでした。...でも、千善様が来てくださったお陰で僕の世界は明るく、色を取り戻しました。貴方様の存在だけが僕の拠り所です。遊女である僕がこんな事を言っても遊女の戯言と信じてはもらえないかもしれませんが...愛しています。この世の何よりも貴方様を。」
「...信じないわけがないだろう?だってオレも同じ気持ちなのだから。...手放したく無い。叶う事ならオレの元で囲ってしまいたい。そう思うほどに。」
「...千善様。お願いがあるのです。」
雅楽はそう言うと千善を布団の上へと押し倒した。そして、深い深い口づけをする。甘い甘い吐息が二人から漏れ出る。
「んン...ハァ...千善様。どうか抱いてはくれませんか?この穢れた身体を貴方様に抱かれることで清めてほしいのです。」
雅楽の言葉に千善は返事をすることはなかった。しかし、雅楽の身体を押し倒し返し布団へ組み敷く。そして着物をはだけさせると、所有の印をその身体に咲かせていく。白い身体に紅い花がよく映える。
「雅楽。いいんだな?」
「...はい。貴方様にこの身を捧げたい。それが僕の願いです。
「愛している。オレの運命...。」
そうして、この日二人は初めて結ばれた。




