絶望の再会
こうして、また金曜を待つ日々が始まる。毎日毎日、ソワソワと過ごしている。お花はそんな雅楽の様子に笑みを零す。
「雅楽様、先週から毎日楽しそうで良かったです。」
「うん!だって千善様に逢えるのが分かっているのだもの。楽しみで仕方がないよ!」
雅楽は布団の上でゴロゴロリ、ゴロゴロリと転がりながら、ムフフと言う笑みを浮かべた。お花でも今までに見た事のない様子に嬉しく思いながら、「だから、お行儀が悪いですよ。」と注意をする。その時だった。地上に続く階段から誰かが降りてくる足音が聞こえて来た。その足音の正体は一人しかいない。足音が牢の前で止まると姿が露になった。ーやはり楼主、和武だ。雅楽とお花が姿勢を正すと、「畏まらんでいい。」と言われた。
「楼主様、本日はどのような用件で?」
「おいおい、雅楽。せっかく父親が訪ねてきたんだからもっと喜んでくれよ。」
「...楼主様が母を大切にしてくれているのであれば、僕はそれで良いんです。」
「古都は元気だよ。一切手は出していない。」
「お前が代わりに相手してくれてるからな。」
和武はそう言うと雅楽の顎をすくい上げ口付けを落とす。
「今日ここに来たのは相手をしてもらいたいから来たわけじゃない。」
「?では何故ここに?」
雅楽がそう問うと、和武は「ちと待ってな。」と言って地上へ戻って行った。雅楽とお花が顔をみあわせ「?」と疑問を持ったその瞬間だった。地上と地下を結ぶ扉が開かれると、雅楽の身体は"ズクン"と熱を帯び、息がハァハァと荒くなる。
「雅楽?!まさかヒート?!薬を飲んでいるのに!!」
「やっぱりお前で間違いなかったなぁ、"オメガ様"?」
「!!」
"オメガ様"。それは忌々しい記憶。まさか、そんな...。何故ここが分かった?何故ここに入る事が出来る?!
「雅楽。久しぶりだなぁ。あれから何年経ったかな...。あぁ...やはり"番"の反応は隠せないな...!!」
「...あな、たは...大和...様...」
そう。この男、大和はここに来る前に世話になった集落の長の一人息子で...儀式によって雅楽の番となったその人であった。
「おい、楼主。金はいくらでも払う。それにオレ達は"番"だ。雅楽を買う許可を。」
「えぇえぇ。遠里小野様でしたら是非に。雅楽も番との再会を喜んでいるでしょう。お花、こっちへ来い。これからはお二人の時間だ。」
あの夢はやはり悪夢だった。この事を示していたのか...。雅楽は熱に犯された身体に苦しみながら絶望の淵に立たされたのであった。




