この心、貴方のもの
「...た...うた...雅楽!!」
「!...千善様?」
「酷く魘されていたぞ?大丈夫か?それに酷い汗だ。」
「申し訳ありません...ご心配おかけしました。」
「もう大丈夫です。」そう言うと雅楽は笑みを浮かべて千善を安心させようとした。千善はそんな雅楽見て壊れ物に触れるかのように、そっと手をやった。「遠慮するな。何でも話せ。」そう千善に促され、雅楽はおずおずと話し始めた。
「...よくは覚えていないんです。...けれど、最初は幸せな夢でした。でも突如その幸せが崩れていくのです...。」
「それがとても恐ろしくて...」そう言う雅楽を千善は優しく抱きしめ絹糸のような髪をサラサラと撫でた。
「雅楽。心配するな。夢は夢だ。現実にはならない。」
「...ですが正夢ということも...」
「雅楽。夢に囚われてはダメだ。現実の"今"に目を向けよう。」
そう言うと千善は雅楽の顔に口づけの雨を降らせた。すると雅楽は擽ったそうに笑う。暫くそうして過ごしていると、外から、カツンーカツンーと言う音が聞こえてきた。...どうやらお別れの刻が来たようだ。そして姿を現したのはお花であった。
「皇様。お時間です。」
「...もう行ってしまわれるのですか?」
雅楽は切なそうな声を出しながら千善の着物の裾を掴んだ。待ってくれ、行かないで欲しい。と言う願いを込めながら。千善はそれを察して雅楽の手を両手で包み込むと、優しく微笑みかけた。
「大丈夫。また来週の金曜、必ず、必ず逢いに来る。だからどうか待っていてくれ。」
「...はい。絶対、絶対ですよ?破ったら許してあげませんからね...!!」
「あぁ...。身体は誰かの物にされてしまっても、お前の心は誰にも渡すな。」
「当たり前です!僕の心は千善様だけの物です!!」
「だから僕の心を救いに来てください。」雅楽の言葉に千善は力強く頷いた。
「名残惜しいが...もう行かねば。」
「...最後に口づけを。」
「あぁ...」
そうして二人は再会を誓う口づけをした。
「またな、雅楽。」
「はい。また、千善様。」
そうして長いようで短い逢瀬の時間は終わりを告げた。




