指切りげんまん
どのくらいの時間が経ったのだろうか。地下にいるため今が夜なのか朝なのかも分からない。雅楽は酒に弱かったようで顔を真っ赤にしながら猫のように千善に撓垂れかかった。
「おいおい、雅楽。こんなに酒が弱かったのか?」
「んふふ。千善様と一緒だから楽しくって。」
流石は遊女。酔っ払っていても客を誘うような仕草が身についている。
「千善様ぁ。頭を撫でてくださいな。」
「仕方がないなぁ。そう可愛らしくおねだりされたら断れないだろう?」
「ふふっ...。この刻が永遠に続けばいいのに...」
「雅楽、それは...」
「大丈夫です。分かっています。...ごめんなさい。弱音を吐いてしまいました。」
雅楽は潤んだ瞳で千善を見つめると、むくりと起き上がり千善へと口づけした。千善はそれに応えるように雅楽の頭に手をやり、啄むような口づけから深いものへと変えていった。
「んン...ふっ、アッハァ...」
「ん...雅楽。いつか、いつかお前を正式に迎えに来る。それまで...それまで待っていてくれるか?」
「!それって...」
「確信した。お前はオレの"運命の番"だ。互いに香りを嗅ぎ取れるのが何よりもその証拠...。だからいつかオレがお前を身請けしてみせる。」
千善は雅楽を強く強く抱きしめた。雅楽はそっとその背に腕を回した。
「...待っています。いついつまでも。愛しています僕の"運命"。」
「オレも愛している。オレの、オレだけの"運命"。」
そうして二人は小指を絡めると、抱き合いながら布団へと倒れ込んだ。しかし身体を重ねるわけではない。ただただ抱きしめ合うだけ。今の二人にはそれだけで十分であった。
「雅楽。眠いのなら眠っても良いんだぞ?」
「...い、え...。僕は...千善様と...千善様との時間を無駄に、したくは...ありま、せん...。」
「大丈夫だ。目が覚めてもオレはここにいる。それに今日これきりと言うわけではない。また次の金曜も、そのまた次の金曜も...オレはお前に逢いに来る。絶対にだ。」
その言葉を聞くと、雅楽は小さく「...はい。」と答えると、直に「スースー」と言う寝息が聞こえてきた。その様子を見届けると、千善も眠りにつくのであった。どうか、雅楽が幸せな夢を見られますように。願わくば、夢の中でも逢えますように。そう祈りながら。
ここはどこだろう。こんなに明るい所へ出るのは何年ぶりだろうか。周辺には綺麗な花が咲き誇っている。その花畑の中心には想いを馳せる千善の後ろ姿が。
「千善様!」
そう大声で呼びかけ駆け寄ろうとした。しかし、その時だった。振り返ったのは千善ではなく...どこか見た覚えがあるが思い出せない人物であった。そして雅楽の足元がガラガラと崩れていくのであった。




