動き出す恋?
「ねぇ蒼唯君」
宇海は勇気を振り絞って蒼唯に話しかける。
「どうしたの?」
「私修練組に入ったんだけどね。先輩から探求組と仲良くなっとけって言われたんだけど、蒼唯君探求組だから……その、仲良くしてほしいんだ」
蒼唯は迷うことなく
「俺と瀬世羅はもう仲良いだろ」
と言った。
宇海は茹で蛸より赤くなる。嬉しさとドキドキで胸が苦しくなる。
そんな宇海にさらに蒼唯は追い討ちをかける。
「だからさ、そっちも名前で呼んでくれてるし宇海って呼んでもいい?」
宇海はもう既にキャパオーバーだ。茹で蛸はそのまま、目はぐるぐるしている。ぷしゅーっと煙を吹いてるようだ。
そして頑張ってこくりと頷いた。
後日、宇海は家でゆっくりしていた。すると玄関のチャイムがなった。
宇海は駆け足で玄関へと向かう。
ドアを開けると宅配便の若い金髪のお兄さんがちょっと大きな荷物をもって立っていた。
「お届け物でーす」
宇海はお礼を言い、荷物を受けとる。
頼んだ覚えのない荷物。一人暮らしをしている宇海にとっては謎であった。恐る恐る荷物を開封する。
(これは…恵先輩がカスタムしてくれたコスチュームだ!)
ラベンダー色のシャツ部分に襟元はセーラーのような形。
胸元には白色のリボンが着いている。なんだか恵を連想させるようだった。
袖にかけて藍色にグラデーションされている。
スカート部分は膝上までの長さ。二枚重ね風になっている。一枚目部分はライラック色で下の方にはチューリップの刺繍がぐるっとされている。ちらっと下から出ている白色の二枚目部分。
しかも防水でよく伸びる生地でできているようだった。
そして濃いラベンダー色のハイソックス。
藍色の手袋は指先部分はない。手袋には剣を持つ時、滑らず痛くないようにというメッセージが込められている。
靴は何の革靴なのだろうか、白色でとても動きやすく滑りにくいブーツとなってる。
早速宇海はコスチュームに着替える。そして鏡の前に立つ。
(かわいい!それに見た目より動きやすい!)
にこにこ笑ってご機嫌な宇海であった。
(蒼唯君似合ってるって言ってくれるかな……)
次の日、いよいよコスチュームを着ての初めての部活動。蒼唯の反応が気になる宇海であった。
「宇海ちゃんのコスチュームかわいいー!」
周りからちやほやされる宇海。恵は自慢げにその様子を眺めていた。
そして入り口から蒼唯が来た。周りにはほとんど宇海が分かりやすいため恋心はバレている。そのため優しい皆は2人きりにしてあげた。だけどちゃっかり耳は傾けている。
最初に口を開いたのは蒼唯の方だった。
「宇海のコスチュームかわいいね。似合ってるよ」
言われたい言葉を言われてしまった宇海の嬉しさは頂点へ達する。顔は再びいつもの茹で蛸になる。
「ありがとう……恵先輩がカスタムしてくれたんだ」
「へぇ、あの人か。確かにセンスいいもんね。
それにその服計算されてるね。生地は防水?手袋もしっかり滑らないようにだね。靴とかも……。
とにかく愛を感じるよ。胸のリボンだけ戦闘要素があまり分からないけど、女の子らしくて良いと思うな」
女の子らしくてと言う言葉に過剰に反応する宇海の顔はもう茹で蛸ならぬ焦げ蛸だった。バクバクする心臓。か細い声で勇気を出す。
「…ありがとう。今更だけど、蒼唯君もコスチューム似合ってるよ」
「ありがとう。嬉しい」
はにかむ蒼唯に乙女な宇海。
そんな2人の他愛もない会話を恵はじーっと見ていた。自分の名前が出てきて嬉しかった。同時にただ純粋に恋する宇海を見てなんだか綺麗だと思った。
愛に気づくのが蒼唯じゃなければよかったのに。
そう思い空を仰ぐ恵の目には曇り空が映っていた。
はぁーー
深いため息。その中には吐き気のするような羨望が混じっていた。




