第22話 旭解散!
若松弘氏自独党を離党
新党M! に入党
全国政党を目指す
新聞各紙は大見出しで報じた。
きっかけは、暴露系ユーチューバー、ソバーバ。
「さいたま市ひめ子の投稿だ」
梨奈とヒロムくんが握手をする映像をアップ。
ソバーバ
アラビア語で蠅。
正体は、芸能記者、蠅島耕三。
蠅島は週刊真相を退社。ユーチューバ―に転身。
ソバーバは視聴者から寄せられた情報を積極的にアップ。
知的障がい者を踏み台代わりにして書庫の資料を探す人権派弁護士
女子職員に抱きつく県警本部長
夫の不貞を訴え離婚裁判中の妻とラブ・ホテルに入る裁判官
高級焼肉店でトクリュウの幹部と乾杯をする検察庁幹部
仕返しが怖い。
特に検察。
女子トイレを盗撮する次席検事
異動を持ち掛け女性検事に性的関係を迫る特捜部長
検察がもみ消した映像、画像をソバーバはYouTubeにどんどんアップ。
やり過ぎた
身の危険を感じた蠅島はソマリランド共和国の首都ハルゲイサに逃亡。
ソマリランド共和国
東アフリカ、ソマリアの西半分。
レベル4。
外務省は退避勧告、渡航禁止。
「気候穏やか。治安もいい。
電気、通信環境、日本より快適。飯も旨い。
酒が飲めない。
健康状態、きわめて、良好」
日本の公安、検察、警察は腑抜け。
怖くてソマリランドに行かない。
蠅島を野放し。
「雷電のリーダー、大杉勉は釣り地蔵。西表島から出てこない。
ヒロムは、愛想をつかして、オカリナにすり寄ったんだ」
撮られていた。
さいたま市ひめ子
さいたま市の職員、稲田媛子だ。
市長室は大宮市民会会館の二階会議室。
ブラインドなし。
道路を隔てた向かいは、さいたま市の旧大宮区役所。
さいたま市にはデモシカ職員、教員が多数残った。
さいたま市の職員に『でも』なるか
さいたま市の教員に『しか』なれない
デモシカ職員、教員は仕事ができない。
自己主張は強い。
小泉、小林トマホーク、茂木、林、木原、野田、小渕、村井
梨奈が当選した翌日、大宮区役所から飛び出してきた奴らはデモシカ職員の筆頭。
「有休休暇は労働者の権利で~す」
勤務は週3回。
10時出勤
たばこ、コーヒー
早めのランチ
議題のない会議
コーヒー
4時早退
稲田媛子は、さいたま市のデモシカ職員とは一線を画す。
旧大宮区役所に土日も出勤。
窓側に陣取り、ビデオカメラを設置。
梨奈のあら捜し。
困った女だ。
ヒロムくん、M! 入党。
安田勝男は大興奮。
「夢は大きく、おかりんりん。みんなで行こう赤絨毯!」
アホか
梨奈は国会議事堂なんか行きたくない。
行きたいのは国立競技場。
イメージカラーの赤で染めるのが梨奈の夢。
ヒロムくんは群馬の選挙区選出。
自独党を離党しても、衆議院議員を続ける。
いい機会だ。
M! の代表をイチローくんに譲ろう。
「全国政党の代表は、国会議員がやるべきです」
梨奈はヒロムくんと安田に提案。
「僕は駄目だよ」
ヒロムくんは寂しげに顔を振った。
「盗撮されるだけ。誰もキャーキャー言わないんだもん」
拗ねている。
キャーキャー言われたいもん
雷電が活動休止になる前、高視聴率テレビ番組『雷電ためになるもん』のヒロムくんのコーナー。
ヒロムくんは、全国各地の女子高をサプライズ訪問。
女子高生にキャーキャー騒がれることを無上の喜びにしていた。
稲田媛子、ヒロムくんに手ぐらい振ってあげろよ。
ヒロムくんは、M! の副代表に就任。
国会対策委員長、全国組織委員長、選挙対策本部長。
「全国に支部を作るんだ」
日本中を飛び回る。
そんなに政治が面白いのかなあ。
雷電は復活しないかもね。
「栞を書いてきます」
梨奈は徳田さんに声を掛け、楽屋に向かった。
盗撮対策
対象は稲田媛子だけでない。
ネイチャーのメンバーが大宮市民会館で書いてくれた栞は大人気。
大宮市への温かいご支援ありがとうございます
僕たちも大宮を応援します
鷲宮照
出待ち入待ち。
ファンが市民会館を取り巻いている。
ふるさと納税返礼品の栞の作成、封筒宛名書きの作業場所は、会議室から窓がないホールの楽屋に変更。
梨奈も栞を書くときは楽屋に移動する。
栞の作業場所にしている楽屋に入った梨奈は息を飲んだ。
「友麻くん!」
旭の渡辺友麻くんが楽屋にいる。
ひとり
栞を書いている。
なんで友麻くんが大宮市民会館にいるの?
事前の連絡なし。
OMGのメンバーもいない。
どうしよう
楽屋にいるのは、梨奈と友麻くんだけ。
「友麻くん、国立ライブ、おめでとう」
胸の高まりを抑えて梨奈は友麻くんに話しかけた。
「すごいね。私も行きたいな」
『旭が、7月26日、国立競技場でライブを行う』
ソバーバ蠅島はハルゲイサからスクープを放った。
旭のファンは大喜び。
『雷電の代わりだ。
ビターバレーは雷電の25周年に合わせて国立を押さえていた。
オカリナがヒロムを誘惑したせいで雷電のライブはなくなったんだ』
マッチ・ポンプめ
復活の望みが絶たれた雷電のファンは大激怒。
くそ女、死ね
絶対に許さない
大宮市民会館には剃刀入り封筒が多数届く。
ソバーバ蠅島に送りつけてやりたい。
ソマリランドに届くかな?
栞を書いていた友麻くんが顔を上げた。
どうしたんだろう、目が潤んでいる。
「オカリナさん、オイラ、もう、嫌になりました。
旭の代わりに国立でライブやってください」
はい?
梨奈は友麻くんの前に座った。
「友麻くん、どうしたの?
須田くんと、喧嘩、したの?」
旭のメンバー、須田宗隆くんは、ライブの演出担当。
熱血。
完璧主義者。
ライブ開演直前にセットリストを変える。
邪魔だとトロッコ用のレールをはがす。
旭のメンバー、スタッフは須田くんに振り回されている。
「違います」
友麻くんは首を振った。
「ファンの連中、アーバンみらいまで押し掛けてきやがって。
母ちゃん、寝込んじゃったんです」
友麻くんが疲れている
表情が冴えない
ネットで話題になっている。
原因は旭のファンか。
新幹線を止める
自宅まで押し掛ける
生理のパンツを送り付ける
旭ファンのストーカーまがいの過激な行動が度々報道されている。
「今日は、母ちゃんの様子を見に行こうと思ったんです。
止められるのはわかっていたんで、栞を書くってことで、市民会館まで来て抜け出そうって考えました」
友麻くんは首を振った。
「ダメです。行き帰りは事務所の車。ガードの人が四人も付いてきています」
可哀そうに
お母さんのお見舞いにも行けない。
自由に外出も出来ない。
たまんないだろうなあ。
友麻くんが顔をあげた。
「オイラ、もう限界です。旭は解散します」
なんですと!
「旭が解散って」
なんて返そう。
「友麻くんは、どうするの?」
「オイラ、西表島に行って、絵描きになります」
西表島。
おーちゃん、雷電のリーダー大杉勉くんが引き籠り中。
ツトムくんは絵が得意。個展も開いている。
誘われたのかな。
「誰かに相談したの?」
友麻くんは黙っている。
「解散したら国立のライブはどうなるの?
お金もたくさんかかっているんでしょ?」
梨奈は何を言っている
なんで、お金の話を持ち出す。
年長者ぶりしやがって。
そんな場面じゃないだろう。
解散しないで
友麻くんがいなくなったら、私、生きていけない。
正直に言えよ。
嫌だ
ホント、まるで政治家。
市長の仕事のせいだ。
感情を押し殺して市民に奉仕。
嫌だ、嫌だ、嫌だ
政治家の習性が身についた。
「先月、ジョージさんに言われたんです。
雷電の代わりに国立でライブをやれって」
友麻くんが、ぽつりと話し始めた。
ジョージさん
サン・ジェスト・カオルさんの弟。
ビターバレー芸能事務所副社長。
「おーちゃんは釣りが面白くて西表島から出てこない。
ヒロムくんは政治に夢中。
雷電は復活の目途ががたたないそうです」
ヒロムくんの新党M! 入党。
断ればよかったかな。
「オイラたちは、国立のライブを断りました」
なんで?
国立競技場。
アイドルの夢の舞台。
「須田くんは、ライブまで四か月もない、ロクに準備も出来ないライブなんかやりたくないって、ジョージさんに言いました」
須田くん、凄い。
さっすが、完璧主義者。
「須田くんは演劇をやりたいんです。アメリカに渡る話もあるんです。オイラたち、旭は9月でやめて、後は、みんな、好きなことをやろうって話していたんです」
やばい。
旭の解散。
メンバーはずっと話していたんだ。
「オイラたちは、サン・ジェストさんに訴えました」
ドキ
友麻くんが梨奈を見つめた。
「サン・ジェストさんは、国立のライブを代わりにやってくれるところがあれば、旭のライブを辞めてもいいって言ってくれたんです」
友麻くんは立ち上がると梨奈の両手を握った。
何?
どうしよう。
「OMGなら出来ます! オイラも応援します。
国立でライブをやってください!」
はい?
ちょっと待って。
無理だよ。
人気が出たといってもОMGは大宮の地下アイドル。
さいたまスーパーアリーナも埋まらない。
しかも、ライブまで四か月。
時間がない。
どうするの?
「旭に逃げ道はないんです」
友麻くんは梨奈の手を握りしめた。
「蠅島さんのスクープは、事務所が流したんです」
なんだと?
「おいらたちの逃げ場をなくすためです。
国立のライブはすごくお金がかかります。
もう公表した。旭が断るなら、おいらたちがキャンセル料を払えって、ジョージさんに言われました」
ひどい。
蠅島、周辺取材をしろよ。
ソマリランドの首都ハルゲイサにいたら無理か。
「わかった。国立ライブ、OMGが引き受ける」
梨奈は友麻くんの手を強く握りしめた。
「その前に、私を、ビターバレーの本社に連れてって」
梨奈は立ち上がると楽屋の入口に向かった。
「オカリナさんが乃木坂の事務所に? なんで?」
友麻くんが戸惑いながらついてくる。
「サン・ジェストさんに言います。
あなたは、それでもアイドル事務所の社長ですかって」
腹が立ってきた
恐喝まがいに国立のライブを強要。
雷電のおーちゃんの説得も出来ない。
ソバーバにリークして逃げ道をふさぐ。
最低だ
ビターバレーは所属のアイドルを家族みたいに扱うと聞いていた。
嘘ばっかり。
「アイドルは夢を売る仕事なの。
ビターバレーなんか、私が、叩き潰してやる!」




