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20/23

第20話 ふるさと納税返礼品

 8月1日。


「はい、こっち向いて」


  カシャ


「市長、今日もいい笑顔ですね」


  カシャ


「目線、ください」


  カシャ


「いいね、今の顔」


  カシャ


 市民会館のロビーにシャッター音が響く。


  オカリナの部屋


 大宮市役所のホームページにあるブログの写真撮影。


 撮影はボランティア。

 大宮在住のプロのカメラマン。


  煽《おだ》てが、上手い


 杉沢さんとОMGオタクが作った大宮市のホームページ。

 大宮に事務所を置くIT企業の支援を受けて充実。

 毎日、市民に役立つ情報を発信している。

 行政システムも新しく構築。


「分散システムにしましょう」

 IT企業が提案。


 大宮市には大きなコンピュータ―を買うお金も場所もない。

 市民から提供を受けたたくさんのパソコンをつないで分散処理。

 大手のメーカーも協力してくれた。


 大宮市民会館二階にあるのは市長の梨奈と副市長の徳田さんの執務室。


 大宮市の業務は市内各地の支所に分散。

 建物は昭和に建てられた。

 職員は役所を退職したОB、ОG。

 

  建物も職員も古い


 システムは最新。

 AIが中核を担う。


「本当の主役は皆さんです」


 IT企業の担当者は、ОB、ОGを煽《おだ》てる。


「AIを教育してください。

 皆さんの知識、経験が大事です。

 お子さん、お孫さんに伝えるようにアバターに話しかけてください」


 昭和の時代からの豊富な知識、経験。


  大宮市の貴重な財産


「指一本で操作できるようにしてくれ」

 お年寄りの意見を取り入れる。


 アバターの顔、声は自由設定。


「こんにちは」


 お孫さんの設定が多い。


「今日は、何を教えてくれるの?」

「戸籍の閲覧方法だよ。明治まで遡るテクニックを教えてあげる」


 大宮市の戸籍検索のスピードは日本最速。

 大宮市は誰でも簡単に行政に参加できる。

 大きな組織、建物は要らない。


 区制も廃止。

 見沼区は無くなった。


  めでたいこっちゃ


 梨奈の夢がひとつ叶った。


「子供ファースト。但し、無理はしません」


 教育長の松岡康子先生は意気軒高。


 さいたま市から志が高い教員が大宮市に移ってくれた。

 退職した先生も全国から大宮に集まった。


 馳せ参じたみなさんは、お爺さん、お婆さん。


  気力、充分

  体力、なし


 午前だけ、午後だけ、二《ふた》コマだけ。

 フル勤務なし。時限制。


「ラビット・テストは、埼玉の教師の怠慢の象徴です。

 大宮市は、ラビット・テストに参加しません。

 私たちが問題を作り、私たちが評価を行います」


  やるねえ


 大宮の子供たちは、レッドラビットの支配から解き放された。


「人手不足なんて、嘘っぱちだぜ」


 閻魔大王徳田さんが呟いた。


「役所も会社も若い奴らしか採らない。

 市長、なんでか、わかるか?」


  わかりません


「奴隷が欲しいんだよ。口答えせず、黙って仕事をする体力のある奴隷。

 ジジイババアはうるさい、文句を言う、誰も雇わない。

 もったいねえよ。杉沢もおだてりゃ木に登るのさ」


  杉沢裕、お前にしかできない

  

 徳田さんに煽《おだ》てられた総務担当杉沢さん。

 浦和の県庁、さいたま市役所、国との折衝役。


「おまかせください」


 諄い口調で浦和を翻弄。

 ゴミ焼却を担う膝子の見沼環境センターは大宮市の管轄になった。


「松岡先生、大矢先生、今日も一段とお綺麗ですね。

 実は、徳田さんに頼まれまして」


 独立運動の闘士と女性陣との調整役も担う。


 梨奈は杉沢さんにくぎを刺した。


「私やOMGのメンバーは、杉沢さんのアバターに設定禁止です」


  一応、守られている、みたい


 大宮市の収入の柱はふるさと納税。


 高額な手数料を取って自治体を食い物にするポータルサイトに頼らない。

 ポータルサイトに関わってきたお爺さんが大宮市のホームページに構築。

 

「冥途の土産さ。

 ギャラはいらねいぜ」


  長生きしてください


 ノウハウを自治体に提供。

 暴利を貪ってきたポータルサイトはテレビCMを取止めた。

 

  返礼品をどうする


「市長が決めてくれ」


  わかんないよ


「百万石まんじゅうはどうでしょう」


  うまいうまいうまいうまい


「駄目だね」

 閻魔大王が却下。

「返礼品は大宮市で作られたものに限るんだ。

 百万石まんじゅうは行田の忍城(おしじょう)の名産品だ」


「伯爵亭の大宮ナポリタン。

 大宮ナポリタンは、大宮市内に店舗があり、具材に埼玉県産野菜を一種類以上使うことが条件とされています」


「無理だな」

 税務の幽鬼秋山さんは手を振る。

「伯爵亭は24時間営業。

 レトルトを作る暇がない」


「盆栽」


 大宮の盆栽村は世界的に有名。


 施設担当牛頭天王神崎さんは否定。

「送料だけで返礼品基準オーバーだよ」


「大宮アルシェのお買い物クーポン券」


 アルシェはギャルの聖地。 


「私たち、買うものがありません」

 松岡先生が難色を示す。

「アルシェに爺《じじい》が入ったら不審者扱いさ」

 徳田さんも頷く。


「お相撲さんサイン入り手形」


 西大宮の私立高校は相撲の名門。

 大相撲、幕内十両、出身力士多数。

 大宮出身のお相撲さんに協力してもらう。


「大宮出身の関取、幕内十両力士はいません」

 ぬらりひょん杉沢さんが指摘。


「これからも出ないでしょうねえ」

 意外だねえ。


  どうしたらいいんだよ


「だったら、私たちのサイン入り生写真はどうですか?」

 研究生の駒場咲良と円阿弥沙織が提案。


「手書きの感謝の栞を付けましょう。

 封筒の宛名書きも、手伝います」


  採用!


 OMGは大宮に本拠を置く。

 写真撮影は大宮市内。

 サイン、栞作成、宛名書きは市民会館会議室。

 総務省が定めるふるさと納税返礼品の基準に適合。


  大宮市にご支援を頂き

  ありがとうございます。

  皆様のご多幸をお祈りします。

  梨奈♡


 大宮市民会館に掲示されたОMGメンバーの生写真と栞のサンプルは大好評。


  劇場でしか会えないアイドル

  ОMG634


 OMGはSNSでの活動を行わない。。


  さあ、これからだ


 ライブ、オンリー!


 今日は大宮市民会館小ホールでのОMG公演初日。

 


  ガラガラガラ~


 エントランスにガラポンの音が響く。

 

 OMG劇場公演は自由席。

 入場はビンゴ抽選。

 お客さまは受付番号順に10名ごとに整列。

 

「それでは、本日、最初のご入場の方は」

 ビンゴ担当は植竹暁美。

「131番から140番のお客様です」


  お~!


 エントランスに歓声があがる。


 狂ジローの毒牙にかかりパニック障害になった暁美は劇場スタッフとして復活。


 がんばれ。


  ♪ムーブ 君が好き

   ムーブ さあ動くんだ

   僕が動けば

   ムーブ 世界が動く

   変わる変える♪ 


 公演のラストは、M!。

 お客様、ありがとう。


  夢のまちが始まるよ


 ОMG劇場公演に、来てくれてありがとう。


 いろんなことがあった。


 OMGは家賃も払えなかった。

 狂ジローの襲撃、大宮市長選挙、浦和のいじめ、ラビットの攻撃。


 たくさんの人たちが助けてくれた。


 お礼をいいたい。

 思いを伝えたい。

 梨奈から皆さんへの返礼品。


「君が!」


 投げキッス


「大好き!」


「俺たちも!」

 客席から大きな声が返る。


「好き!」


  うお~! 


 大歓声が上がる。

 

「梨奈~が動けば、世界が動く!」


 大宮市民会館が揺れる。


「ありがと~。みんな~。

 じゃあ、行くよ~。君が~」

 客席にマイクを向ける。


「好き!」


「いいね! もう一度! 君~が!」


「好き!」


「君~が!」


「好き!」


♪みんな~が、動けば、世界~は、変わる変える~♪


  梨奈ちゃん~!

  オカリナ~!

 

 大歓声に包まれて、夢のまちが始まるよ、大宮市民会館初日公演が終わった。

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