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朱雀宮の主人  作者: 祥雨
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エピローグ

朱雀4

「遥、貴女まだめそめそしてるの?」

「めそめそしたっていいでしょ、ここに来る人なんて限られてるんだし」

「にしてもそんなに春蕾が好きだったとは思わなかったわ」

「顔に出さないようにしてたからね……失敗だったかもな……」

「顔にも態度にも出てなかったから、春蕾も気づいてないんじゃない? 今頃遠くで新しい女でもできて、楽しく過ごしてるんじゃなくて?」

「それならそれでいいよ……」

「はあ……、琳娜と遥を足して二で割ったらちょうどいいかわいげのある女になるかもしれないわね」

「にしても珍しいね、会いに来るなんて。それに春蕾の話をするのも」

「全然自分の宮から出てこないんだから、会いに来るしかないでしょ。それにそんな顔してたら、春蕾の話になってもおかしくはないじゃない」


うっ、ごもっとも


朱雀宮に玉風が遊びに来て、楽しく話をしていると思っていたけれど私の態度を見て投げかけてきた。春蕾たちとお別れして二年が経った。特に何か大きな変化があったわけでもなく、私は興味がある手紙が来たら門を開けるのは変えていない。そのせいで使用人たちはたまに門を開くと大騒ぎする。


「十四年後にはどうせ帰っちゃうし、その時春蕾は連れていけないんだからこのまま帰ってこないほうが幸せかも……」

「そしたらあっちでめそめそするだけでしょ」

「うっ……、私も吹っ切るときがないとだめっちゃだめか。まあ、帰るまで残り二年になってこなかったら探しに行こうかな。景初は街にいるってのは分かってるから、聞きに行けばいいし」

「そうしなさい、それに十二年待たなくてもいいでしょ?」

「……そうだね。もうちょっと経ったら探してみようかな」

「その前に春蕾が来るかもしれないでしょ?」

「だといいね」


 そのあとは泰然とはどうなのかなど話をして、夕方ごろ玉風は帰っていった。


「ご飯までちょっと寝るから、出来たら起こして」


使用人に声をかけて、部屋でひと眠りすることにした。久しぶりに人と長い時間話して疲れたことと、この夕方の時間寝るのが好きだからよく寝てる。お昼寝よりこの時間寝るほうが好きなのはなんでだろう。あっちではやったことないから、こっちに来てからの習慣だけど。何か気持ちいいんだよな。と不思議に思いながら、ベットに横になって寝た。


「――様、――か様、――遥様」

「うーん……ご飯出来たの……?」


目を開くと窓から橙色の光が入ってくるのが見える。いつものご飯の時間にしては早いなと思って声をしたほうに目線を向ければ。


「えっ、あれ?」

「お久しぶりです、遥様」


二年前より精悍な顔立ちをした春蕾が部屋の中にいた。


「ん? 夢?」


ちょうど今日、玉風と話したばかりだったから夢でも見てるんじゃないかと頬をつねったが痛かった。


「玉風様に入れていただきました」

「え? なんで玉風?」


ここ私が主人だよね?


「少し前に帰ってきていたのですが、玉風様が来まして玉風様が遥様に会うまでは待つよう言われて。今日会われた後、行ってもいいといわれ遥様の代理で承認いただいた形で入ってきました。使用人の方たちに遥様の部屋は変わってないと教えていただきまして、部屋までお邪魔しました」

「ああ……なるほどね」


契約の代理は与えられる側もできるけど、与える側もできるからそれを使ったのか。うちの使用人は春蕾のとりこだから、久しぶりに会ったら私に言わずに通すか。


「久しぶりだね、元気だった?」

「はい、遥様の隣に立てる男になったと思ったので帰ってきました」

「そうなの? なんかちょっと雰囲気変わったよね?」

「わかりますか?」


キラキラ下目で訪ねてくるから、まあそりゃと照れ臭くなった。なんか人間っぽくないというか。身なりはきれいなんだけど。なんだろう?


「遥様の隣に立つためには、天に一緒に行く資格が必要かと思いまして、仙人になりました」

「え! そんな簡単になれるものなの? それに二年しか経ってないよ?」

「青龍宮にいたころに修行はやっていたので。仙人になる修業とは知らなかったんですけど」

「ああ……」


琳娜、連れ帰ろうとしてたんだ。


「そのおかげでほとんどの修業は終わっており、卒業試験のみ受ければよかったため早く帰ってくることができました」

「どんな卒業試験だったの?」

「山の上にある街を移動させることです。住人たちと山の主に交渉をして、二年で住人達には新しい住居に移ってもらうことができました」

「山の主っていうのは?」

「龍でした。寝てたら背中に街ができちゃったと言ってまして、もう少し寝てもらっている間に住人達には移動してもらうと交渉しまして」

「へえ……」


なんだかすごいことしてるし、仙人になる卒業試験ってそういうのなんだ。


「その龍っていうのが、遥様のおじいさまでした」

「え! あ……、え?」


おじいちゃんどこかに行って帰ってこないなって話してたけど、こっちで寝てたの? ふらっと行って、ひと眠りしてから帰ろうと思ったらその間に街できちゃったんだ。おじいちゃん寝ると長いから、あってもおかしくないな。


「……ってことは、私が何かわかっちゃったんだ?」

「はい。龍、ですよね? 指輪に紫色の宝玉がつけられているのがわかっていたので、おじいさまを見たときに、やっぱりそうだって確信しました」

「おー……カンがいいね」


バレたのなら仕方ない。そう、私のもとの姿は龍。今回の代は、龍がリーダー役をやるって決まってたから私が四神長をやっている。仙台は玄武がリーダーだった。交代交代で回しているだけだから、特に理由はない。


「遥様と一緒にいるために仙人になったので一緒に天に行けます、そしておじいさまにも「うちの孫をよろしく、いつでも歓迎するよ」と言っていただけました」

「あー……そうなんだ」


ちょっと恥ずかしいな、それは。


「なので、これから好きになってもらうよう努力しますのでお側においていただけませんか?」

「私が春蕾のこと好きにならなかったらどうするの?」

「そうですね……、その時は山にでもこもって弟子でも育てます」

「私不死じゃないよ?」

「僕の不死の定義と遙様の寿命はほぼ似てますから大丈夫です」

「景初はいいの?」

「二年前に景初には仙人になって遥様と一緒にいたいと思うと話してまして、寂しくなるけど頑張ってと応援してもらっています」

「……ふーん?」


なら、まあ。


「じゃあ、ちょっとこっち来て?」

「はい」


手招きをして近くに寄ってもらう。そして、ぎゅっと抱きしめた。


「は、遥様?」

「この二年、春蕾が来てくれるの待ってたよ。好きになってもらうよう頑張るっていうけど、私は二年前から好きだよ」

「え? あ、え?」

「二年前にいた時間は少なかったし、明確な理由は言えないけど、春蕾と一緒にいたら私幸せだったし今も幸せだよ」


最初は慌てふためいていたけれど、最後は抱きしめ返してくれた。それがたまらなくうれしい。


「これからもっともっと遥様のこと、知りたいです」

「……うん、私も。あ、一個お願い良い?」

「はい」

「同じ立場になったんだから、もう様づけなしで呼んで。そして敬語もなし。ね?」

「……うん、わかった」


少し気まずそうに、でも受け入れてくれた春蕾が嬉しい。きっと私たちはこれからお互いのことを知って、喧嘩をするかもしれないけれど、そのたびに仲直りして、暮らしていくんだと思う。どっちかがどっちかを従わせるんじゃなくて。対等でい続けよう。天に帰ったら、お父さんお母さん驚くだろうな、天で春蕾がやっていけるかも心配だけどその覚悟を持って仙人になってくれた春蕾を尊重したいし、支え合って行きたいって思えるから、私は幸せ者だ。


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