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朱雀宮の主人  作者: 祥雨
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1 救済と契約

四神が二十八年の周期でこの世に人の姿で降臨する。二十八年俗世で過ごし、二十八年後に新たな四神が降臨する。誰がどの四神かは明かされないまま、四神の名を冠する宮に滞在し、民衆へ四神それぞれの力を分け与える。四神その者に会うことができるのは、四神が自分の宮へ招き入れた者だけ。門を毎日開く神あれば、気まぐれにしか門を開かない神もある。


(ハルカ)様、本日は貴重な機会をいただきありがとうございます」


目の前で深々と頭を下げる男性が一人。ボロボロの身なりだが、栄養は足りてる体をしている。チグハグに違和感を覚えたけど、そこは一旦忘れる事にした。


お互い椅子に座り、テーブルを挟んで対面している。部屋には二人。目の前の男性私の二人。普段だったら側仕えも何人か一緒に同席してるけど、今日は部屋の外にいるよう伝えた。


「顔をあげてください。早速本題に入りましょう。貴方が送ってきたこの手紙の意味を教えてください」


封筒をテーブルの上に置く。普段だったら開けない門を開けたのは、この封筒の中に入っていた手紙の内容が気になったから。


顔をあげた男性は何か決意した目をしている。この目をしている人はどっちか。風玉曰くもう一方の方だったらすぐに追い返すことって言われてる。最近門を開けずに同じ人としか話してなかったから、人との話し方も忘れちゃってる。こう言う話し方で良かったよね? 威厳がないとかナヨナヨしてるからと話し方を指導されてこの話し方してるけど、いいんだよね?


緊張している間に、相手が口を開いた。


「弟を助けて欲しいんです」


それは手紙に書かれていた。


「それなら青龍宮に行くべきでは?」


治療を求めるなら青龍宮に行くのが民衆の中の常識。でもここは朱雀宮。手紙に書かれていた時から不思議に思っていた。送る相手を間違えているんじゃないかと。そのことは一旦置いて最後まで読み進めると気になることが書かれていたから門を開いた。


「青龍宮には行きました。……行きましたが、……弟は治らなかった」

「そうですか……。貴方が私に求めるのは弟さんを治すことで、私への対価が――パートナーになると言うことはどう言うことですか?」


これが気になっていた。これは対価か? 私が提供しているのにその見返りとして私がまた提供していないか? どういうことなのか手紙を読んでも分からないから読んで話をすることにした。


「……もうすぐ麒麟宮で、四神の集いがあるんですよね?」


おぉ、よく知ってる。四年に一回誰も住んでいない麒麟宮に四神宮の主人が集まる。四年前に集まった時、次に集まった時に話をしたけどそのことについて知っているってことか。誰か言ったとは思えないから、どこかから聞いたのか。


「そこでパートナーを連れてくる約束をしたと。恐れながら遙様はまだパートナーを見つけていないと存じます」


うーん、痛いところを突いてくる。そうなんだよね、もう時間もないのにまだ相手を見つけられてない。どうしようか、いっそ欠席しちゃおうかと思っていた。そもそもなんでパートナーがいないことを知っているんだ。


「遙様が主人の朱雀宮の門は数ヶ月に一度開かれるのみで、門が開かれたとて通るのは商人たちのみです。そこから推測しました」


うっ、心に刺さる。


他の四神宮の門は毎日開いたり一ヶ月に一回開かれたりなど、目の前の男性のようにそれぞれの宮に主人に用があり会いにくる。私のところだけ全然門を開かないから側仕えには門を開くと伝えれば感動されるし、目の前の男性には言葉で刺されるし。良いことないな。


「弟に遙様の力を使用していただけるなら、遙様が困っている四神の集いにパートナーとして参加いたします」


うーん。そっか、見返りにはなってるか。手紙読んだ時は四神の集いのこと忘れていたから意味がよくわからなかったけど、思い出したらいい条件かと気づかされた。ただ、問題はもう一つある。


「対価については理解しました。でも、私が貴方の弟さんを助けられる保障はありませんよ?」


四神宮に住んでいる主人たちは、何かしらの力を司っている。人間の形をしているだけで人間ではないから。ちなみに四神宮に住んでいるからと言ってその名を冠する神獣ではない。人間には分からないように抽選で決めた四神宮に住んでいる。先代たちが何の神獣か人間にバレて面倒なことに巻き込まれたらしい。


私の力は治癒じゃない。それは青龍宮の主人――琳娜(リンナ)が医療の知識と技術を司っている。あそこに行けば大体の病は治る。そこに行ってもダメだったんなら諦めるしかない。他の四神宮の主人で、弟さんをもしかして治せることが出来るのは……まあ私か。他二人は政と天候の力だから。


「それでも、お願いしたいんです」

「……分かりました。弟さんはどこに?」


椅子から立ち上がり、応接間から出る。側仕えに場所を聞き向かう。こういう時は大体連れてきている。連れてきてなかったからこの立ち上がって歩いた足を止める術がない方宮をでて行っていたと思う。それにしてもなんでこの宮はこんなに広いのか。一人で住むには広すぎる。側仕えなど使用人は何十人かいるけれどそれでも部屋余ってるから意味あるんだろうか。もう五回りぐらい狭い住居の方が住みやすくないか。


と考えているうちに着いた。どうやら休憩室にいるらしく、中に入るとベットですやすやと寝ている。男性より一回りほどの歳の差だろうか。親がいたら一緒に来ているだろうから、二人暮らしってところか。


「治らなかったら対価は必要ありませんから」

「えっ?」

「治ったら対価はもらいますが、治らなかったら必要ないので気にせずお過ごしください」


弟さんの隣に立ち、手をかざす。何の病気だとか聞かなかった理由は聞いたって仕方ないから。琳娜が完治できなかったってことは、大方あとは弟さんの回復力を信じるのみまでは治療したに違いない。寿命だったら治せないけど、寿命がきているようにも見えないし、悪いところは取り除いてあとは寝て治るのを待つのみ。と言うところまできたんだろう。それが数年と長すぎたから私のところに来たってところだろうし。治らなかったのにパートナーになってもらうのは忍びない、金銭だったら半額ぐらいはもらってたけど。


あー、うまく行きますように。私の力は私がどうこうできるものじゃなくて、与えられるけどそれがいいか悪いかは正直人次第だからなぁ。


短い詠唱をすると、かざした手から光が溢れる。弟さんの体を光は包み込み、体に吸収されていくように消えた。


「終わりました。うまく行ったかどうかは今判断できるものではないため、うまく行ったら……そう、二週間以内に手紙をください」


では。と言って部屋から出ようとすると腕を掴まれる。動きを止め目を丸めれば、相手も目を丸めていた。なぜ引き留めた方が驚いているのかと不思議に思っている間に手は離されていた。


「ここに、置いてくれませんか」

「え?」

「弟が治らなかったら出て行きます、でも、弟が治るか治らないか分からない間は置いていただけないでしょうか……!」


深々と頭を下げられる。うーん、どうしようか。なんかこの兄弟、というか兄の方は訳ありな感じがする。厄介ごとに巻き込まれそうな、そうでもないような。まあでも、治らなかったら出て行くって言うし、別に二人増えたところで困りはしないだろうし。


(シン)、二部屋用意して。あと使用人もそれぞれ付けて」

「畏まりました」


側仕えの杏に支持すると、男性は涙を堪える目でこちらを見てくる。うーん、そんなに嬉しいんだろうか。別に家あると思うんだけどなぁ……、でもここ一人で住むには広いし同居人増えた方が楽しそうだし、いいよね。


今度こそ「では」と告げれば、「ありがとうございました!」と後ろから大きな声が聞こえる。手をかざしたことに対するお礼ならそんなに大きな声出さなくても大丈夫だし、部屋を割り当てたことに関することならこれもまた部屋余ってるからそこまで大きな感謝はいらない。


さてさて、どうなるかな。

 

――


「この前はありがとうございました!」

「ありがとうございました!」


大小揃って同じ頭の形がお礼を言う。兄弟って頭の形似るんだとどうでもいいことを思いながら「いえいえ」と返事をする。あの後、弟さんは回復していったことが使用人伝えにも聞いたし、目の前の男性からも聞かされていた。余談だが、この兄弟をここに住まわせたことは街では噂になっているらしく、新聞にも載っているようでちょっと恥ずかしい。今まで使用人以外住んだことがないから、そんなことで新聞に載る。他の四神宮は門下生とかが住んでいたりするから、こんなことで新聞には載らない。


「一昨日から歩けるようになりまして、是非一目見てもらいたいと思い今日は弟も連れてきました」

「元気になってよかったです。お菓子美味しい?」

「はい!」

「気に入ったのあったら包むから、色んなの食べて考えてみて」

「ありがとうございます!」


うん、子供はやっぱり笑顔の方がいい。初めて見たは青白い顔をしていて呼吸もか細かったけど、今じゃどれ食べようか悩みながらお菓子を眺めている。いつもは男性が報告のような形で部屋を訪れるが今日は弟さんもさったのでお菓子を多めに用意してもらった。どれも美味しそうに食べてるし全部包んであげようかな、いっぱいあっても私一人じゃ食べきれないし。


景初(ジンチュー)、兄さん遙様と少し話があるからあっちの部屋でお菓子食べて待てるか?」

「うん!」


使用人に連れられて弟さんは出て行った。その間もお菓子から目を離さなかったから、やっぱり全部あげよう。


「今日は対価のお話をしにきました」

「別に嘘ついてもバレないから、しに来なくてもよかったんですよ?」


正直、私は何かをする時に絶対に対価を必要とするタイプじゃない。風玉にそれがバレた時は烈火の如く叱られて、次からもらうようにしようと心に決めた。


「でもその場合、天罰が下りますよね?」

「……ああ、そう言えばそうでした」


だから風玉にバレたんだった。天罰は後払いにした時に、支払いに来なかったら下る。私が下しているわけではなく、言葉を交わしたときにはもう紙と同じような契約を交わしている扱いになっているから、期限が過ぎても支払いに来なかったら契約が作用して天罰が下る。場合によるけど、前に天罰が下った人は全財産をなくしたんだったっけ。


「遙様の天罰は、与えた幸運を逆転させる。そう記憶しております」


ふむ、そんなんだった気が。正直覚えてない。天罰が下ったところで特に気にしてないし、下ったと聞かされてもあらあらぐらいにしか思っていないから。


「そう言えば私が司る力が幸運だってよく知ってましたね」


他の四神とは違って門を開かないから、そもそも朱雀宮の主人は何の力を司っているのか知らない人が多い。知らない中で興味本位で手紙を送ってくる人が大半の中、目の前の男性は私の力を明記した上で助けを求めてきた。だからあの時、私がお弟さんにしたのは幸運を授けた。それにより詳しいことはは分からないが、幸運にも弟さんは元気になり動けるようになったんだろう。幸運というのは、自己免疫の活発化を促進させると言ったこともある。それが今回はうまく作用したらしい。医療のことは詳しくないからよくわからないけど。


「耳に挟んだことがありまして」

「そう」


嘘はつかないけど、必要以上に話すわけでもないタイプ。何か隠していると言うか聞かれないから言わないだけと言うか。何か少し後ろめたいような顔をしているから、優しさで気づいていないふりでもしておこう。


「四神の集い、その場にパートナーとして同行させていただきます」

「ええ、よろしく。ちょうどパートナーいなくて困ってたんです」

「パートナーとして同行する約束の日までまだ時間はありますよね?」

「そうですね」

「その間、引き続きこの朱雀宮に置いていただけないでしょうか」


ふむ、一週間ここに滞在してるから別に引き続いてもらっても構わない。


「パートナーとして同行するにはそれなりの慣れが必要かと思います」


そうかな? 隣歩いてもらえればそれでいいかと思ってたけど違うのかな。


「……失礼ながら、パートナーの意味を理解されていますか?」

「え? 同行してくれる相手、でしょ?」


私が呆けた顔をしていたのを見て、コイツもしかして分かってないんじゃないかと言う目を向けてくる。え? そんな何? そう言う意味じゃないの?


「パートナーとは、一般的に……恋人、婚約者もしくは結婚相手のことを指します」


な、なんだって――!?


頭に雷は落ちたような衝撃。私は呑気なことを考えていたけど、そう言う意味だったの!? え、そんなこと言ってたっけ? 四年前の話だから全然覚えてない。私は覚えてないのに他の三人はちゃんと覚えてるから毎回そうだっけとえへへと誤魔化してきたけど今回ばかりはさすがにそうもいかない内容だ。


至急確認するために、手の中から小鳥を一匹生み出し言葉を吹き込む。そして窓の外へと羽ばたかせた。


「今のは?」

「ああ、自分の力を使って伝書鳩ならぬ伝書鳥を生み出すことができるんです」

「どこに行ったんですか?」

「白虎宮の風玉(ユーフォン)のところに。用事で席を外してなかったら返事早いからすぐ帰ってくると思いますよ」

「他の四神宮の伝書鳥が来たら遙様も分かるんですか?」

「そうですね。自分の宮は皆結界を張っているので中に入ったら分かります」

「入れないことも可能なんですか?」

「出入りを不可にするのも可能ですよ、特定の誰かをとかそう言った条件付きも」

「されたら他の四神様は入れないんですか?」

「そう言った条件にされたらまあ」


話しているうちに小鳥が帰ってきて、返事の言葉を紡ぐ。私が吹き込んだのは「次の麒麟会て恋人同行だっけ?」。帰ってきたら返事は「そうよ、あなたよく覚えてるじゃない。成長したのね」。小鳥は役目を終えて、手の中に帰って行った。


……ああ、だからあんな覚悟した目をしていたのか。弟を助けて欲しいと言いながら、その対価は恋人にしてほしいって言ってきてるんだから私の怒りを買うんじゃないかって。うわ、気付いてなかった。一緒に行きたいんだぐらいにしか思ってなかった。


「……麒麟会は再来月開催予定です。それまでに、恋人として頑張りましょう!」


もうやるしかない! 恋人とかいたことないし、どんなものなのかも分からないけど時間はあるんだから調べたりすればどう言うものか分かるはず!


「はい」


飛んで火に入る爽やかな夏の虫、とはこのこと。対価としてわざわざ自分から面倒なことに来てくれたんだから逃すわけない。今から相手を探すのも正直無理。見つかるわけない。


「恋人として遙様に好きになってもらえるよう頑張ります。……あの、お聞きしたいのですが」

「はい」

「……僕の名前、何かわかりますか?」

春蕾(チュンレイ)さん……ですよね?」


深刻そうな顔で聞いてくるから何事かと思えば、そんなことか。自信満々に名前を答えたけど、言い終わった後に自信が急速に無くなり聞き返せば嬉しそうにしている。よかった、合ってた。そう言えばここにいる間、一回も呼んだことなかったか。だから不安そうだったんだ。


「どうぞ呼び捨てでお呼びください。敬語も必要ありません」

「じゃあ私も」

「それはいけません」


なんで?


「僕は好きな人のことは大事に呼びたいんです」


敬語は関係ないんじゃと思ったが、爽やかな笑顔でのらりくらりと交わされ折れる気がないと感じそのままでどうぞと諦めた。


「あ、私も春蕾が私のこと好きになってくれるよう頑張るからね」


感情よりも先に関係が来たけど、恋人になったんだったらやっぱりそこは楽しくいられるんならいたい。今の所嫌悪感などはないし、むしろワクワクしてる。今まで人を入れてこなかったから新しいことが訪れたことによる高揚感が胸の中で踊っている。それと同じ気持ちに相手もなってほしい。


春蕾は複雑そうな顔をして笑っていた。

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