夢の行方[21]
ホテルにチェックインした2人。
またまた刺激的なシーンですよ。
今時のタクシー運転手は、乗客との会話を敢えて避けることがあるらしい。
後席に座った私達は、運転手さんに迷惑にならないように声をひそめて話す。それでもやっぱり、歩果の笑い声が時折豪快に車内の空気を支配する。
どんな笑だ!?
でも、大袈裟じゃなくて。
ミラーに映る運転手さんの目が、とても優しく笑っている。声を発する訳じゃないけど、完全に歩果の笑い声に支配されているのだ。
タクシーは観光客の車で混雑する町を抜けて、程なく旅館の前に着いた。
楽しかったとでも言いたげな笑みで「ありがとうございました」と、お決まりの言葉。その優しさを含んだ声は、まるで自分の娘達を送って来たかのように。
木々に囲まれた、自然豊かなロケーション。庭園の中を通り、本館へ。
木製の自動ドアが、静かに開いた。
一泊1人あたり2万円超え。軽井沢としてはまだリーズナブルなのかもしれないけど、私達にとって言えば、大奮発。こんな時だから、ケチケチせずに思い切りよく贅沢したいものね。
注意事項と案内を聞き、部屋の鍵を受け取った。
お風呂は大浴場で、今現在と21時以降は比較的空いているとの事。
入るなら…?
「荷物置いたら、すぐお風呂に入ろっ!」
「りょ!」
歩果の後に付いて、廊下を歩いて行く。他の宿泊客がまだチェックインしていない時間帯なので、館内も静かだ。
なおさら胸が高鳴る。実は私、このひと時を一番楽しみにしていたのかもしれない。
昨日の旅館と同様に、歩果はまず浴室のドアを開けて中を覗き込んだ。
「麻衣ちゃん、凄いよ。昨日のも良かったけど、さすがに2万円超えの旅館だわ」
満面の笑みを浮かべ、歩果はスルスルと衣服を脱ぎ始めた。
今度はちゃんと…しっかり見たい。好きな人の体を。
私もはにかみながら、思い切って衣服を脱いだ。
歩果が私を見ていた。恥ずかしさと解放感が同時に私の脳裏を支配して、全身を朱く染めてしまう。
そんな、きっと初めてだろう思いに震えそうになりながら、私は目線を上げた。
そこには、全身肌を露わにして微笑む歩果の姿があった。
「麻衣ちゃん、行こっ!」
振り返って背中を向ける。
小柄で華奢な、愛らしい体形。
白く透き通るような肌。
今見た歩果のそんな全てが、瞼の裏側に張り付いて離れない。
「炭酸水素塩泉だって。今日疲れたから、疲労回復バッチリかも」
「そ、そ、そうね」
言葉が途切れ途切れになってしまう程に緊張している。だけど…。
高揚を隠しつつ、私は歩果に近付いた。
温かいお湯で頬が赤らむ。そんな歩果に、色気さえも感じた。
お湯を肩にかける仕草で、アクシデントを装って腕を歩果の胸に軽く当てた。
柔らかい感触が、強い電気信号となって脳に飛び込んで来た。
―駄目。こんな事しちゃ。
「シャンプーして来るね」
このままでは、我を見失ってしまう。そう思った私は、唐突だけど立ち上がり、アライバへ行こうとした。
刹那…。
「麻衣ちゃんのお尻い」
「ああっ! また触ったなぁ!!」
「だって麻衣ちゃん、あたしのオッパイ触ったじゃん。仕返し〜」
―きゃっははははは!
救われた? 歩果のお茶目な行為に、私も我を取り戻せた。
だけど…、このままお風呂にいると、きっとまた昂ってしまう瞬間が訪れるはず。
―もっと、ずっと、裸で戯れ合っていたい。
こんな不思議な気持ちになるのが怖くて、私は浴室を出た。
もうドキドキだわ。
麻衣、どうするの!?
アクセスありがとうございます。
次回「夢の行方[22]」
更新は、X または Instagram にて告知致します。




