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16.モブ令嬢は学園祭を満喫、できない

 普段は守衛が立ち、防犯上の理由から固く閉ざされている王立アマリリス学園の巨大な門は、学園祭当日は開け放たれていた。


 王国随一の学園で行われる学園祭は、主に在学生徒の家族が優先されるとはいえ、普段は入れない学園を見学する絶好の機会である。

 学園祭を楽しむ以外にも国内外の商家や研究所の職員が優秀な生徒の勧誘や、入学前の施設見学目的の親子連れ等、多くの貴族や市民が学園を訪れていた。


 特に今年度は、生徒会長となった第一王子を一目見ようと例年以上の来校者数で、開園して一時間で来園者多数のため学園への入場制限がかけられた。

 入場制限の間も、貴族の豪奢な馬車と、徒歩で学園を訪れる平民達は区別され、双方列をなして入場の順番待ちをしている。

 入場順を待っている人達のために警備兵も駆り出され、学園祭の日は王都中が活気づく。

 学園周辺には屋台も出て、学園内に入らなくても門までの並木道はちょっとしたお祭会場状態となっていた。


 校門から学園内へ入ると、飾り付けられた各教室と部室で飲食物の販売や上質な品を購入できるフリーマーケットや演劇や楽器演奏が行われ、来校者を楽しませていた。


 教室棟ニ階、2年C組のカフェには開始と同時に人が押し寄せ、教室だけでなくホールへ出した席も満員となる盛況ぶりだった。


「いらっしゃいませ」


 2年C組のカフェでは、お揃いのエプロンドレスを着た女子生徒が接客をし、コック姿の生徒が調理と裏方の仕事を担っていた。


「どうぞごゆっくりしてくださいね」


 顔面偏差値の高い女子達に艶やかな営業スマイルを向けられた男性客は、溜め息を漏らす者、顔を真っ赤に染めて鼻の下を伸ばし見惚れる者が続出する。

 料理も、飲食店を数店舗経営している生徒の実家で特訓した精鋭達のおかげで、評判は上々。


 裏方のリージアは制服の上からエプロンを着けて、皿洗いから材料の調達まで休む暇なく動き回っていた。


「リージアさん! 卵が足りなくなりそうだから取って来て!」

「はーい」


 慌ただしい調理スペースから聞こえてきた声に返事をして、保冷機能付きの食材保管用魔道具の置いてあるホールへ向かう。

 ホールへ出ると着飾った若い女性が多く、どうしたのかとホールの壁にかけられた時計を見て、納得した。

 視聴覚ホールで行っているA組の演劇開演時間がせまっていたのだ。

 高位貴族子息子女、平民でも将来有望な優秀な生徒が多く、さらに第一王子様が在籍しているクラスが整理券を配るくらい人気なのは仕方がない。


(見てみたいけど、もう整理券無いだろうし入れないよね)


 女性達の間をすり抜け、ホールの隅に置いてある魔道具へ手をかざし鍵を解除して卵を取り出した。



 ランチタイムの混雑も少し落ち着いた頃、ようやくリージアの休憩時間になった。


「着替えるから先に中庭へ行っててね」


 休憩時間を合わせて、エプロンドレスから制服に着替えるため更衣室へ向かったナンシーを見送り、制服の上から着けていたエプロンを脱いで棚へ入れ、教室の外へ出る。

 教室から一歩出たリージアは、喋りながらやって来た女性グループにぶつかりそうになり壁際に寄った。

 女性達は、リージアの存在に気付くことなく楽しそうにA組の方へ歩いて行った。

 あらためて周りを見れば、流行りの服で着飾った若い女性達が多い。

 もしかしたら、彼女達の中には王立アマリリス学園へ通える平民や貴族の優良株の生徒や、婚約者がいない王子様の目に自分がとまる可能性があるのでは、という淡い期待があるか。


(もう少し気を使った方が良かったかなぁ)


 裏方の仕事でも、せめて髪型だけでも変えてくればよかったかと、何時も通り三つ編みにした髪を弄る。

 着替えに行ったナンシーでさえ、この日のために雑貨屋で買ったリップを塗って、編み込みにした髪に婚約者から貰ったバレッタを付けていた。

 素っぴんで汗をかいていて、前髪はヘアピンでとめただけの自分が急に恥ずかしくなってしまい、俯きながら教室棟から中庭へ出る。


 邪魔にならないように中庭の隅へ移動して辺りを見渡せば、制服を着た女子生徒達も派手すぎない程度にうっすら化粧をして髪型も凝ったものにしていると気付き、溜め息を吐いた。

 去年は特に感じなかった寂しさを、今年は感じるのは何故か。


(げっ!)


 ぼんやり眺めていた行き交う人の間にピンク色が見えて、リージアは慌てて木の影に隠れる。

 毛先をゆるく巻いた髪を耳の下でツインテールにして深紅のリボンで結んだメリルは、性格はどうであれ外見は正統派美少女そのもの。

 彼女の隣にマルセルがぴったりと寄り添う。腰に手を当ててエスコートするマルセルは、屋台で買った食べ物を持ったりメリルが人にぶつからないように気を配ってあげたりと、メリルへの好感度はマックスだと推測出来た。


(かなりユーリウス様に執着していたけど、エスコートの申し込みをされず諦めたのかな? マルセルルートでいくことにしたのか。あれ、マルセルルートって確か、ちょっとマズイんじゃないっけ)


 腕組みをして、靄がかった前世の記憶を思い起こす。


(学園祭では手繋ぎデート、後夜祭でラブラブな二人のダンスを見せつけられたマルセルの婚約者が、嫉妬のあまりヒロインを誘拐し危害を加えようとして、ヒロインを傷付けられたマルセルは、怒りのあまり魔力を暴走させちゃうってストーリーじゃないっけ? 暴走した魔力で学園は半壊、何て迷惑なルートなんだ)


 ゲームの通りに展開すると、学園生活はマルセルの魔力が暴走して強制終了する。

 何てはた迷惑なルートなんだと、遠い目でイチャつくメリルとマルセルを眺めた。



「お待たせ~」


 制服に着替えたナンシーと合流したリージアは、中庭に並ぶ出店のホットサンドと香ばしく焼いた野菜と鶏肉を買いベンチへ座った。

 お喋りしながら食べていると、中庭に設置されたステージ周辺に人が集まってくる。

 一気に集まった人の壁でステージが見えなくなった。


「何かあるの?」

「さっき放送が流れたの聞いてなかった? 今から生徒会長の話があるんだって。ユーリウス殿下を間近で見たい人達が集まってきているんでしょうね」

「殿下が?」


 クラスの準備で忙しくて一昨日からユーリウスの姿は見ていない。

 今朝、教室へ顔を出したロベルトも忙しく動き回っているようだから、生徒会長はもっと忙しいのだろう。


(大変だなぁ。お昼ごはん食べたのかな?)


 差し入れを持っていこうかと考え、直ぐに首を振って打ち消した。

 王都の有名菓子店の人気菓子を手配出来る王子様に、庶民的な屋台の食べ物を差し入れに持っていっても困らせるだけ。


 ホットサンドを口に押し込んだ時、ステージへ詰め掛けた人達から黄色い歓声が上がり、ステージへユーリウスが上がったのが分かった。

 一段高くなっているステージに上がったユーリウスは、集まった生徒達への学園祭準備と協力を感謝し、来校者に向けて日頃の感謝と楽しんでいって欲しいという話をし、中庭は歓声と熱気に包まれた。


 たった5分程度ステージに立ち挨拶をしただけなのに、リージアの座るベンチからそれほど離れていないステージがひどく遠い場所に、其処に立つユーリウスは遠い存在だと実感した。


「眩しいなぁ」


 王子様を直視出来なくて、思わず目を細めてしまう。

 今までは、雑用係、協力者としてユーリウスに巻き込まれただけで、本来なら彼の視界に入ることも話すことも無かったのだ。

 王子様とは、今後ヒロインがマルセルルートへ入り落ち着けば疎遠になっていくだろう、弱い縁しかない。


「どうかした?」

「反射が眩しいって言っただけだよ」


 ステージの方は逆光だもんね、とリージアは曖昧に笑った。


ファンタジーな学園祭描写がよくわからない。

急いで更新したため手直しはする、かも。

いつも誤字脱字報告ありがとうございます。深夜の勢いで打っているため間違いが多いです。

次話は、別視点になります。


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― 新着の感想 ―
[一言] マルセルルートの危険性をどう周り(殿下)に伝えるかそこが肝心ですが殿下が何を話すのかも気になりますね。
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