閑話.男子達も学園祭を満喫出来ない?!
短いです。
学園祭開始直前の話になります。
学園祭開始時刻一時間前。
生徒会室では運営の最終確認が行われていた。
生徒主体で開催される王立アマリリス学園学園祭では、生徒会三役に自由な時間はほぼ無い。
そのことを直前まで知らされずにいたロベルトは、婚約者であるマーガレットに学園祭は一緒に回れないと平謝りで伝えたところ大泣きされてしまい、必死で謝る羽目になった。
直前まで知らせなかったユーリウスへ恨み言のひとつも言ってやりたいところだが、補佐役として期待されていたルーファウスが離脱した分の事務仕事はロベルトの処理能力ではカバー出来ない。
結果、増えたユーリウスの仕事量を考えると何も言えなかった。
学園長との話を終えたユーリウスが生徒会室へ戻り、役員達へ細かな指示を出す。
役員達が退室すると、ユーリウスはロベルトへ声をかけた。
「昨日は大変だったな。マーガレット嬢に許してもらえたのか?」
昨日、マーガレットと話をしたのは高位貴族専用寮の玄関ホール。
泣かれた場面をユーリウスに見られていたロベルトは苦笑いする。
「学園祭を一緒に楽しみたかったと今朝も泣かれた。後夜祭でちゃんとエスコートをすることと、今度の休日に街へ出掛ける約束をして許してもらったよ」
「そうか。俺からもマーガレット嬢へは詫び状を送っておく」
ユーリウスの視線がロベルトが大事そうに手に持っている紙袋へ移る。
「さっきクラスへ顔を出してきて、差し入れを貰ったんだ」
喜びを隠しきれない、ニヤケ顔のロベルトが差し入れを誰から貰ったのかなど、聞かずとも分かってしまいユーリウスの胸にモヤモヤしたものが広がる。
「女子のウエイトレス係の衣装はエプロンドレスなんだ。リージアは裏方だから違うけど、制服の上からのエプロン姿が似合っててさ「生徒会のお仕事頑張って」って貰ったんだー」
「そうか、それは良かったな」
浮かれて話すロベルトは、ユーリウスの声が低くなったのには気付かない。
なおも話し続けようとするロベルトを遮るように、ユーリウスはテーブルへ手をついた。
「ロベルト、俺もクラスへ顔を出してくるよ」
「えっ? 今からか?」
開場時間まであと五十分。
開場五分前には、校内一斉に学園祭開始を告げる放送するというのに、どうしたのかと驚くロベルトへ「直ぐに戻る」と言い、返事を聞かずに生徒会室を出た。
防音仕様の生徒会室から廊下へ出れば、教室棟からは生徒達の声や優雅な合奏曲が聞こえてくる。
「まぁ、殿下!」
教室棟へ向かう渡り廊下へ差し掛かった時、前方から甲高い声を上げて女子生徒が小走りでやって来た。
見事な縦ロールを揺らして来たのは、幼い頃から苦手としている相手、3年A組在籍の公爵令嬢。
寄ってしまった眉間の皺を瞬時に消し、ユーリウスは王子の微笑みを貼り付けた。
「エスメラード嬢、準備は終わったのですか?」
ニコリと微笑めば、エスメラード公爵令嬢は頬を赤く染めて胸元へ手を当てる。
「わたくしのクラスは、全て終わっておりますわ。お気遣いありがとうございます」
「それは良かったですね」
「ユーリウス殿下」
下らない会話をしている時間は無いのに、会話を続けようとするエスメラード公爵令嬢に舌打ちをしたくなるが、息を吸って堪えた。
「殿下は後夜祭もお忙しいのですか? その、エスコートされる方はいらっしゃるのかしら?」
上目遣いで見詰めてくる意味が分かってしまい、ユーリウスの笑みは嘲るものへと変わった。
「いいえ。エスコートをする時間は無いので今回もいません。エスメラード嬢は婚約者殿と参加されるのでしょう」
時間があったとしても、婚約者がいるのに王子に色目を使おうとする女のエスコートなど御免だ。
強制的に会話を終わらせて、教室棟へ行こうとしたユーリウスの視界にアプリコット色のお下げ髪が見え、苛立った気持ちが一気に凪いでいく。
「エスコートする相手はいませんが、誘ってみたい相手、私が誘った場合どんな反応をするのか見てみたい相手はいます」
「まぁ」
目を細めたユーリウスの視線は、エスメラード公爵令嬢を通り抜けた先のホールへと向けられていた。
ホールには、フリルのついたエプロンを着けて両手いっぱいに荷物を持ち忙し無く動き回るリージアの姿。
小動物のように動くリージアが微笑ましく見えて、やわらかい笑みを浮かべたユーリウスに、エスメラード公爵令嬢は赤く染まる頬へ手を添えてうっとりと見とれてしまった。
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