19―2 奏でる戦いの音
2章 妹
「探す………?」
「はい」
「でも、このまま時が過ぎれば、クラリスの存在は無くなります!それだけは嫌!」
声を荒げて立ち上がったアイリスを、アリアがそっと肩に手をかけて落ち着かせる。
───と、アリアが魔法の詠唱をする。
「…禁忌というかなんというか、これはやってはいけないこと。失敗すれば、命は無いかも分からないけれど、オレの刻のエレメントを使おうか」
アイリスが二人を、人気の無い所に転移させる。アリアはルナの手を取り、すぅ…と息を吸う。伏せる目、長いまつげ。綺麗な、顔……。
───時よ、回れ。時空を掻き回せ。
ルナが最後に魔法を上書きする。
───|美しき人よ《ビューティフル》、新たな人智を愛する人へ
美しい漆黒と、煌めく白銀の光が交差する。
繋いだ手の中で、新たな暖かさが生まれるのが分かる。それはどんどん大きく、柔らかく、暖かい。
───禁忌によって生まれた命は、美しい銀色の髪と、オッドアイを持つ娘。
「あ、りあ様……」
びくびくと、怯えた顔でルナが膝をつく。
こんなこと、あってはならないと、魔法で…エレメントを使って人を生むなんてことは、あってはばらないと。そう、告げるように。
「……ごめんな」
小さな掌がルナの顔に伸びる。銀色のふわふわとした髪が、瞳が、愛らしく存在を示している。
柔らかな絹に包まれて、小さな赤子は「クラリス」と名付けられた。
「アリア様は、なにか、おかしい……」
その勘は、どの方向へと向かうのだろう。
♢♢♢
「お母様、ごめ、なさ……!」
アイリスが駆け寄る。泣きながら、幼い子供のように。
「もう、聖界に預けました。……あそこなら、安全ですから…」
ぐったりと疲れた様子のルナを、従者のリンが介抱する。
「ルナ様…!」
気を強く、とリンが部屋まで連れて行く。着替えて、ルナは静かに深い眠りについた。
「…お母様は?」
「眠っておられます」
「そう……」
アリアは、数日間姿を見せなかった。
聖界でクラリスにつきっきりということもあるが、同時に罪悪感にも苛まれていた。
「オレは、どうしてあんなこと……」
頭を抱えてしゃがみこむ。と、小さなアイリスが、父によたよたと駆け寄る。
「…大きく、なったなアイリス…」
わしゃわしゃと撫でられることをくすぐったがりながら、小さなアイリスはにっこり笑って、アリアの背中を押した。




