17ー4 神話の世界
4章 その剣は、輝く
ぱりん……小さく、けれど響く音をたててその剣は割れた。
「剣が……」
きらりと赤く光る筋は破片になってなおも煌々と輝いている。
「……そ…んな……」
少年は唖然として力無く座り込む。
がくりと肩を落とし震わせた。
───その瞳から、一粒の大きな雫が滴り落ちるまでは。
「う………」
少年は涙声のような声で、小さく喚く。
その瞳から、頬は伝わずにそのまま雫は落下した。
無意識に力が込められた涙の欠片が、剣の筋に落ちて、赤くぎらぎらと少年を照りつける。
───と、闇には眩く見えないほどの光が彼を包み込んだ。
闇と光が融合したようなその輝きの中で、少年はふわふわと浮いている感覚になる。
その中で、確かに何かを掴んで、少年は目を閉じた。
♢♢♢
「う……何…して…」
少年が次に目をさますと、右手には黒く細く伸びた剣が、左手には、漆黒の闇を閉じ込めたようなほど不気味に美しく輝く石が。
少年は死んだのではないかと疑い、その闇を抜けて外へ出る。
───紛れもない、現実だった。
戦場が広がり、鳥は囀り馬は嘶く。
広がる緑の草原もそのままに、現実だ。
「神が、授けて…?」
少年がそう思ったことを口に出す。
その瞬間、急に少年は頭を抑える。急に何かが自分に流れ込む。
あのうつつの中で起きたことが鮮明に蘇るような。
自分はあの時、微睡みながらも愛する少女の手を握りしめた。闇と光が混じり合った中で、一つの道が見えた。その道を真っ直ぐに行ったとき少女はいた。
少年は涙を伝わせながら彼女を抱きしめた。
少女もそれに応じた。
そして、少女の手を取ってもう一度、その道を光の方へと歩いていった。
その感触がまるでこの漆黒の石に閉じこめられたような感覚。
「神闇石……」
唐突に少年はその石をそう呼んだ。
応えるようにきらきらと黒く輝いて、石はぱっと指輪の形を作る。
「…会いに行こう」
少年はそう言って、草原の中をゆっくりと歩き出した。
♢♢♢
「え………」
少年が神殿についたのは、それから幾日たった日だろうか。
服はぼろぼろになり、身体中が泥だらけ。
けれど、その黒い剣と指輪を確かに携えて、少年は少女の居る神殿に着いた。
それは、少年が姿を消して2年後の話。
「───ただいま」
女神───少女は、少年との再会を心から喜んだ。




