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光と闇のシンフォニア  作者: 花宮 あいら
深淵の王子
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17ー3 神話の世界

3章 一振りの剣



なにも持たざるを得なかった少年は、すべてを持って生まれた少女と結婚した。



「愛してる」



少年は不器用に、けれど懸命に彼女に愛を伝えた。少女はそれを拒むことなく受け取り、彼を愛した。



「私も、愛しています」



少年は、やがて二人の娘をもうけた。

威厳に溢れた美しい娘と、慈愛と優しさに満ちた可憐な娘。


少女が歪んだ愛で二人を育てたけれど、少年はまた不器用ながら二人を誰よりも慈しんだ。



「大丈夫だ」



不安げな顔をする戦乱の中で生まれた二人は、いずれ彼がどこかへ行ってしまうことを感じ取っていたのだろうか。

彼は少女になにもいわず、黙って光から去っていった。


深くどこまでも広がる漆黒の闇。彼は閉じこもり、戦から遠のいた。



「………」



彼は、一振りの剣に自らの魔力を込めた。

優しく、時に残酷に牙をむく闇の魔力を。

剣は黒く鈍く輝くようになり、美しく通された魔力の筋は真紅に染まった。


彼は自分の鞘にその剣をしまい込んだ。

一回だけしか、彼は剣を鞘から抜くことはしなかった。


キィィイイン………そう金属の音が、鳴り響く。



「っ………」



循環する魔力の度重なる共鳴が剣と少年をくるしめながら、剣は更に磨かれ、彼の努力の賜物になっていった。


剣は大切に仕舞われ、彼以外の人物は引き抜くことすらままならなかった。


剣は一度、大きく魔力と共鳴反応を示したことがあった。



「な………!?」



少年が、少女を斬るために剣を引き抜こうとしたとき。彼はもう、こんな戦争に終止符を打ちたかった。だからこそ、女神と呼ばれし少女を殺せばいいと思った。



「う……!」



でも、それは彼の心と反してしまう。

剣はそれを感じ取ったように、大きく魔力と共鳴する。

割れそうなほどの頭の痛みを覚えながらも、彼は剣を引き抜こうと試みる。

けれど剣は、いくら力をこめようとも抜けなかった。



「やっぱ…だめだ…よな……」



乾いた笑いを浮かべて彼が寝転がる。

共鳴は鳴り止むことなく続く。けれどそれは徐々に彼を蝕むものではなく、包むものになっていく。


それを感じ取って、少年はすっと立ち上がった。


力を振り絞って引き抜く剣が軽い。全身に力が入ってくる、そんな感覚に身を任せて、彼は闇からなる剣の赤い魔力の筋を更にきらめかせる。


最大まで光り輝いたその時、剣はぱりんと音を立てて真っ二つ割れた。


本当の奇跡は、ここから。

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