17ー2 神話の世界
2章 女神誕生
「慈愛と、平和を願って」
少女は、毎日それだけを神殿で祈り続けた。
いつしか、少女は女神と呼ばれるようになり、それでもなお、戦争は終わりを迎えなかった。
「美しき光と、哀しき闇を」
少女は、自分の力をかたどった石を作り上げた。指輪として自分の指にはめこみ、それは時として少女の命をも救った。
聖月石と呼ばれるその指輪は、今も光の王族が受け継いでいるという。
♢♢♢
「女神と呼ばれし少女は、やがて戦乙女として人々を導く指標となった」
彼は、少女を想うようにふっと笑う。
………寂しげに
「けれど彼女には、今ではもう語られていない悲劇がある」
そうしてまた、語り出した。
♢♢♢
聖なる槍、クレ・リュミエール
聖月石をはめ込んだ指輪
今に伝わる秘宝と神殿を作り出した少女は、なお変わらず平和を願い、戦っていた。
少女が女神と呼ばれるようになってから、その重責や困難に苛まれた。
「どうして、私は………」
朗らかに笑っていた少女の姿はもう、どこにもなかった。
「生まれ変わっても、愛してくれますか?」
少女はある日、もたれかかって少年に聞いた。
なにも持たない少年と、全てを持つ少女。
神話で幾つも紡がれたお話。
なにも持たない少年はゆっくり彼女の手を握り、そして深く頷いた。
少女はまた、花の咲いたような綺麗な笑みを浮かべて喜びを彼と共有した。
けれど突如として、
少年は少女の前から
姿を消した──────。
♢♢♢
「少女は深く嘆き悲しんだ」
彼は深く嘆息を吐く。
涙は浮かべず、事実をただたんたんと話すだけ。
「けれど、少年は少女を捨てた訳ではなかった」
一呼吸おいてから、また彼は語り出す。
♢♢♢
捨てられたと落ち込む少女の髪色は、だんだんと白銀に染まっていった。
彼女の哀しみを表すように。
そして二人の子供は、彼女の魂が割れたような両極端な性格に育っていった。
ひとりは、強く、女王に相応しい気質を宿し、少女の持っていた美しい金糸の髪を受け継いだ娘。
ひとりは、優しく、底知れない魔力の才を秘め、少女が手に入れた白銀の髪を持って生まれた娘。
二人はとても仲のよい姉妹だった。
少女はそれを喜んだが、愛する少年に見せてあげたいと切に願った。
「戻ってきてください………」
少女は毎日願った。
その願いは、思いがけない形で出会うことになるのを、少女はまだ知らない。
そして、少年が消えて数年が経ったとき、物語はまた唐突に動き出す。
一振りの黒い剣と、一粒の黒い宝石がはめこまれた指輪を携えて、少年は少女と再会する。




