17ー1 神話の世界
1章 寄り道をしようか
「これは、今からずっと昔のこと」
語り出す道化師はいつになく優しげな笑みを浮かべた。
♢♢♢
「お父様、わたくしは闇へ嫁ぎます」
「良いのか、それで」
「はい」
一人の少女は笑った。
まわりに可憐で麗しい花が咲いたような、そんな綺麗な笑みだった。
「愛を、誓います」
ほどなくして、少女は婚約を結んだ。
少女は愛を誓い、一人の少年に恋をした。
幸せな日々を過ごしていた少女は、不意に戦争に巻き込まれることになってしまった。
「神よ…………!!」
その少女の平和を願う心が、一つの秘宝を生み出した。
それが、聖槍、クレ・リュミエール。
少女の作った聖なる槍は、平和を願う王女の象徴となった。
「────!」
少女は、その槍を振るい戦った。
戦乙女となった少女はいつしか、笑わなくなった。
毎日人を殺し、英雄と言われ、少女はそんな毎日に嫌気が差していた。
少女は、哀しみに染まった手で槍を握る。
そして、少女は自分の心が二つに割れたような感覚に陥った。
「ははは………」
魔王のような笑みを浮かべ、殺戮を好み、優越感に入り浸る人格。
慈愛で包み込み、愛を愛し、平和を願う人格。
少女はそれを悩み続けながら、戦争の最中、子供を産み落とす。
「愛しているわ」
少女は、赤子のおでこにそっとキスを落とし、溢れんばかりの愛を注いだ。
でも、少女はまた戦争に赴いた。
殺戮を幾度となく繰り返し、何度も勝っては負け、少女の心は歪んでいった。
そして少女は、もう一人の赤子を産み落とす。
「死んでもいいのよ」
少女は、幾度となく赤子を叩きつけ、溢れんばかりの憎悪を注いだ。
でも、少女は戦争に赴かなかった。
愛を取り戻し、平和を叶えんとする信念がそうさせ、少女の心はまた愛に溢れていった。
戦争は終わることなく、5年の月日が流れた。
愛した少年は、少女とずっと寄り添っていた。
「大好きよ…」
キスを交わす度に、少女は少年をまた好きになる。何度も、何度も唇を重ねた。
「愛しているわ」
少女は終わらない戦争の中で女神と言われ、平和と慈愛の象徴になった。
そして少女は、一つの神殿を作り上げた。
結界に守られ、白く美しい神殿を。それは輝くばかりに綺麗で、誰もが見惚れるものだった。
少女は子供を慈しみ、少年を愛した。




