間章─Marin
「助けて」
マリンが助けを求めた時。
ルナやアリアは、優しく頷いてくれた。
でも、マリンは前にも一度救われていた。
♢♢♢
あれは、8年前。
湖のほとりである歌に聞きほれていたころ。
「きれい…」
マリンは、その歌が大好きだった。
綺麗で、澄み渡り、でもどこか暗く、哀しみのある歌声。
月日を重ねるごとに、だんだん声は低くなっていったけれど、彼はずっとその歌を歌っていた。
時折、女の子のとびきり美しい歌声も聞こえたけれど。
「闇へと………」
マリンはその歌を、口ずさむようになっていった。
そしてその歌と出会ってから、6年が経った。
「~♪」
ある時ぱったり、彼は来なくなった。
でも、マリンは歌を思い出しては歌っていた。
幸せだった。
けれどそれから少し経った後、彼はまた湖のほとりに来ていた。
一人じゃなく、女の子と一緒に。
「え………」
彼の聡明で美しい横顔が、桜色に染まる。
笑ったりして、女の子と見つめ合う。
そして彼は、女の子を優しく抱きしめた。
「絵本みたい…」
それを見ていたマリンの鼓動は、どくどく高鳴っていく。
彼が好きな子と結ばれたことが嬉しいはずなのに、今まで感じたことのない痛みと苦しみが、彼女を襲う。
─────恋?
「うぅ…………」
嗚咽が漏れる。
二人に聞こえることも、届くこともない。
マリンは、泣いていた。
それから、彼女は知った。
あの二人は、王女と王子であったと。
ルナ・ブルームーン・S王女
アリア・レイ・フィンスターニス王子
誰がどこからどうみてもお似合いな夫婦だった。
マリンは、即座に後悔した。
────恋をしてはいけない人を、好きになってしまったのね…
また、涙がこぼれた。
♢♢♢
それからすぐに、戦争が始まった。
マリンはそれを残念に思ったけれど、始まったものは止められない。
蒼を守ろうと、必死に足掻いた。
「だめよ、マリン、諦めちゃだめ」
自分を鼓舞して、叱咤激励しながら、マリンは蒼を守り抜いていた。
それから、ある夜のこと。
マリンは、うとうとと眠っていた。
「ん…………」
きらりとマリンの胸元で、何かが煌めいた。
ふっと目が覚めた彼女がいたのはベッドではなく、もやもやした霞みの中だった。
どこまで足掻いても白い霞みが続くばかり。
諦めようとしたとき、どこからか蒼く光が差し込んだ。
マリンが手を伸ばした先には、蒼く美しく光るペンダントがあった。
「え………これって」
少女は、蒼の守護者になった。




