16ー5 未来を奪いし者
40章 道化師との再来
「話?」
「はい」
くつくつと、歪んだ笑みを見せるのは、あのときの道化師。
暗闇に包まれた冷たい空間で、彼はずっとたった一人。
ひとりぼっち。
アイリスをたびたびひやりとさせ、黒いナイフを身体に突き刺した彼ならば、きっと受け入れてくれる、そう思った。
未来で起きたこと。
ルナやアリアのこと、ソレイユのこと、国のこと………
包み隠さず、道化師には話しておかないといけない気がした。
「……あなたが、ここで道化師として過ごしているのも、きっと何かあるんですよね?」
「やっぱり、君は鋭いんだね」
彼はやっぱりくつくつと笑う。
ひとしきりけらけら笑った後で、彼はふうっと吐息をかける。
魔力が込められた優しげでどこか影を含めたその吐息は、ふわりと少しの灯りを灯す。
彼の壮麗な横顔を照らす。
それにアイリスは息をのむ。
───なんて、哀しげな瞳
その同情と、畏怖の念に襲われながらも見入ってしまう。
「分かっただろう」
「……いいえ」
「強情な子供だね」
道化師はもう一段階灯りを灯す。
明るく、だんだん彼が浮かび上がるような怖さが滲む。
逃げるわけにはいかない。逃げられない。
その恐ろしさを目の当たりにしたとしても。
それを見抜いた態度を見せる道化師は、観念したかのように語り始めた。
真っ暗だったその空間に、ひとつひとつ明かりを灯すように。
ぽつ、ぽつと、ゆっくり。
「ははっ」
乾いたくつくつという笑いを見せる彼を、アイリスは母がしてくれたような慈愛で包む目で見る。
それに気付いた道化師は首を振る。
───要らないよ
そう言うように。
「どうしたのかしら」
高慢でプライド高くそう言う彼女に、道化師はもう一度語り出す。
あの笑いを見せて。
「君に、過去の話をしようか」
それは、誰も知り得なかった。
神話のなかで眠り続ける、女神と王のお話。
さて、次回からは「深淵の王子」編をお送りします
「光焔の王女」が終わったわけではなく、寄り道のような感覚で。
どうぞお楽しみに!




