16ー4 未来を奪いし者
39章 敵は、わたし
「…強いのね、アイリスは」
「いいえ、強くありません
そう、あらねばならないだけ…」
アイリスはふるふると首を振る。
「お母様とお父様にも、きちんとお話します」
「えぇ、そうね」
ひゅん…とアイリスはソレイユと自分に転移魔法をかける。
これほどまでに魔法に愛された王女は、何人いたのだろうか。ソレイユやエステレアですら、ここまでの魔力は持たないというのに。
ソレイユは感嘆しながら、されるがままに二人の元へ赴いた。
♢♢♢
「お母様、お父様」
「アイリス?」
「全て、お話しします
………私の、未来のこと」
ルナは目を見開いた。
アリアはゆっくりと頷く。
「……」
そして、アイリスが全て話し終えた時、はらりとルナの瞳から、涙が零れた。
「あ……泣いてばかりの母親で、ごめんなさいアイリス」
「いえ……」
アイリスは静かに、受け入れるようにアリアに抱きしめられる。
「…だから最初、オレたちを拒んだのか」
「……はい、きっと信じてもらえないから…」
「…そんなわけないだろう」
俯いたアイリスに、アリアが一喝する。
父親の顔をしていた。
「オレたちの大事な娘を、そんな目には遭わせられない」
「アリア様…」
「お父……様」
ルナも、ぎゅっと涙を拭って、まっすぐアイリスを見つめる。
母親の慈愛が伝わってきた。
「また、未来を変えればいいんです」
「未来を…」
「お姉様を変えたように」
アイリスは、優しく二人に諭される。
幼い子供のように、泣きじゃくる訳にはもういかない。
ソレイユは、静かに、彼女を見守る。
「僥倖、ですね」
「え?」
「アイリスがこうして話してくれて、わかだまりが無くなった…でしょう?」
アイリスが、自分の胸に、手を当てる。
ルナも、自分の胸に手を当てて、ふっと微笑んだ。
「変えましょう、未来を」
「……!はい!」
きっと、過去にきてから一番の笑顔で、アイリスは笑った。
♢♢♢
「ここまできたら、私はもう一人、きちんとさせないといけない人がいます」
泣いた後で、アイリスは言った。
「だからその人と会って、ちゃんと私の覚悟を伝えます」
「うん、行ってらっしゃい」
頭を撫でて、ルナは送り出す。
アイリスはもう一度、ひらひらとオッドアイを揺らせて、闇にかき消えていった。
「………何をしに来た?」
「…お話しを、しに来ました」




