2ー3 光と闇が混じり合う刻
8章 闇の囁きに沈みゆく
闇の王
──それは古代より伝承せし魔の力
光を打ち消す虚無を作りしその力は
力を持つ主を破滅へと導く
『ねえ、あなた…』
『アリアは、決して闇の王にしないで…』
『私…あの子の苦しむ顔を見たくないの…』
泣きながら、病床に伏せる彼女は
闇の王の力を知っていた。強大すぎるその力を。力を受け入れられなければ、待っているのは死だということも。
光の国の石碑に刻まれたもう一つの話。
光がはじまりだとしたら、闇は終焉を表す。
「すまぬな…許せ」
闇の王はそう言って、光の国の石碑に花を添えた。
闇でしか咲かないという月光花。
月のように白く、儚く美しい見た目からそう名付けられた。夜だけ咲き誇り一夜で枯れる。
「エアリアルは、闇が無ければ虚無へと誘われる
そして光がなければ破滅へ導かれる。
お前が、どんなに願ってもこの願いは…
叶えてやれん…たとえ闇の王の命でもな…」
この世界エアリアルは、魔力で満ちている。
その魔力によって、光の国は天上、空の上に存在する。
そして地には対になる闇の国、その狭間には蒼穹が有る。
光の国は、その中に城があった。
星々にかしずかれて、神殿のような白い城があった。
『お姉様!石碑に行かない?』
『虹の降る丘に行くの?いいわよ!
どちらが先につくか競争ね!』
闇の王は、幼い王女二人を思い出した。
なんの力も持たず、ただ女王と呪いの印だけを持った二人。
あの頃、ずっと二人は一緒にいた。
未来を前向きに捉え、かけがえのない愛情を注がれ、絆があった。今でも、そう。
神話は、今も刻まれ続ける。
そして石碑は、光の国の「虹の降る丘」に静かに眠る。
その行く末を見守るように。
♢♢♢
ルナたちが住み始めた離宮は、蒼穹の近く、二人が出会った湖のほとりの近くにあった。
白いバルコニーに宮殿の造りをした室内。
ルナの部屋は光の王国を、アリアの部屋闇の王国模したような部屋になっている。
隣同士で、室内のドアからお互いの部屋にも出入りできる。
その離宮があるのは、闇でも光でもない狭間。
『光を、届けたいのです』
『弔うためだ』
二人は、また湖のほとりで歌を奏でていた。
理由は違えど、気持ちは同じ。
セレナーデと鎮魂歌。
愛奏でる二つの歌が交じり合う時は来るのだろうか。
二人はきっといつか、世界を知る。
この世界の真実を、そして破滅と虚無を
───知ることになるのだろう
そして彼らが行き着く先は一体?
ただこういう小説が書きたくて
書き始めたものの、ついつい一日に10話ほど
作ってしまうことがありまして。
ストックが溜まってます(・・;)