16ー2 未来を奪いし者
37章 聖界での時間
あの頃は、幸せだったと、アイリスはしみじみ思う。
「聖界…」
もちろん、自分の居ない間に変わってしまっただろうけれど。
♢♢♢
「アイリス、お母様がいらっしゃってますよ」
「お母様!」
聖界は、エアリアルと平行する異界。
時間の流れは同じであるものの、それ以外は全く違う。
ここでは魔力の量が桁違いに多く、魔法によって空間はほぼ無限といっていいほど広がり続ける。
なのになぜだか、空気が魔力で淀んだり、穢れることは一切ない。
そして、一番エアリアルと違うところは「禁忌」が定められている目録があり、戦争や殺し合いは禁止されているところだろう。
またエアリアルとの交流は盛んで、お互いの文化も似ているところがある。留学なども許可されており、王族が留学にくることもしばしば。
エアリアルが戦争になれば、その世界にいる子供も疎開してくることだってあったそう。
エアリアルからすれば聖界は、時の守護者に干渉されることのない唯一の異なる世界であり、物置のようでもあった。
「アイリス、お勉強のお時間ですよ」
「はぁい」
「アイリス、愛しているわ」
「…ふふ」
綺麗で澄んだ魔力の中で育ったアイリスは、エアリアルの淀み始めた魔力を知らず、剣や槍を振り回すことも、一切無かった。
それは、アイリスが8になった晩のこと。
「アイリス、おいでなさい」
「はい」
その日、養母はいつもと様子が違った。
「エアリアルで、戦争が始まったの」
「え………」
「この意味が、分かるわね?」
───私も、行かなければならない
……………………王族として
「…はい」
アイリスはそれから剣や槍を振るい始めた。めきめき上達する彼女をみて、養母は胸が痛む思いだった。
そして、二年後。
「いって参ります」
「生きて、また会いに来てね」
「はい」
アイリスは、エアリアルへ戻った。
そして、現実を知る。
「お母様!!」
「大…丈夫よ、アイリス………」
「お母様あぁぁぁっ!!」
母も、父も死んだ。
死んだ、のにルナは呪いに更に蝕まれていった。
「う……ぐっ…は…」
「お母様!」
「うふふ…ふふ………」
ルナとアイリスは、親子じゃなくなった。
その瞬間に。
────お母様を、私は殺さなければならない
♢♢♢
「どうして、こんなことになったのでしょう」




