15ー5 救うために
35章 そう、救った
「お母様…良かった…!」
アイリスがにこりと笑った。彼女の肩を抱き、そうね、と頷く。
でも、未来が変わるということは、ルナが光の王国の女王じゃなくなると言うこと。
ほんの少し、複雑な気持ちだった。
けれど───
「ルナ、お帰り」
「アリア様、ただいま帰りました」
「ルナ!どこに行っていたの?次期女王が失踪したなんてことになったら話にならないのよ!」
「ま、マリン…?」
古城に戻ってから、ソレイユはぴんぴんしたいたものの、ルナが次期女王であるという事実は一切変わらなかった。
それに、ソレイユが大怪我をしていたという事実も何一つ変わらなかった。
命に別状は無かったから良かったものの。
この発端は、ルナとアイリスが今に戻る時に時の守護者から言われたことに遡る。
♢♢♢
「二人とも、宜しいでしょうか?」
いつの間にか時空の扉に引き戻された二人は、時の守護者の御前にいた。
礼を言ってから、話を聞く。
「過去は変わりました。でも、今のあなたたちが変わった訳ではありません」
どういうことかと訪ねると、彼女は、それはですね…と説明をしてくれる。
「あの出来事を間近で見ていた人、つまりあなたたち二人と、ソレイユ王女などの記憶は一切変わりません。
何故だかは分かりませんが、未来を変えたことも記憶に残るのです」
時の守護者でも分からないことがあるのか、と驚いた。何千年、何億年もの時空を超えて見ることも出来るような彼女でさえ。
「ですが、ソレイユ王女が怪我をした、命の危機が無くなったことは事実です。
でも、それ以外のことや状況は、前と一切変わりません」
「分かりました。ありがとうございます、時の守護者」
ルナとアイリスはもう一度丁重にお礼を伝える。時の守護者は、また会いましょうと静かに微笑み、詠唱をして二人を古城へと戻した。
♢♢♢
「ルナ?」
「あ…い、いえ、なんでもありません」
「ルナ、ありがとう」
ソレイユは、温かいその手でルナの髪を撫でる。獅子王のような威厳も、頼りがいのある姉の姿も、元通りになっているように見えた。
───心の傷までは消えていないけれど
「アイリス」
「はい」
「ありがとう」
綺麗な眼差しで見つめられて、アイリスの宝石のようなオッドアイに涙がたまっていく。
ぎゅっと抱きしめ、ソレイユは笑った。
「ソレイユ、ごめんね……」
彼女のいた未来を知るかのように。
いや、あの夢、自分の夢の中での焼けるような痛みは、忘れられるものではなかった。
あの無残な赤黒い血の色も、哀しさを湛えた焔の匂いも、全て。
けれど運命は静かに、嬲るように、アイリスを嘲笑う。
その嘲笑は、残酷で。
明けましておめでとうございます
今年もどうぞ宜しくお願いします♪




