14ー5 過去の力
30章 わたしは、戦う
「違うんです……」
首をすくめるルナに、アイリスはすぅと息を吸って話す。
「…あの日に戻るということは、今が変わると言うこと。つまり、この場所に戻ってこられるかは、分かりません。」
「…あ……」
理解したように、ルナはまた押し黙る。
沈黙を破り、アイリスはだから…と続ける。
「ソレイユおば様は、助けられない……っ!!」
一言、たった一言絶望を口にするアイリスの右目から涙が零れる。
幾度となく絶望も、最悪の状況も打破できるように全力でがんばってきたアイリスが、初めて諦めた瞬間だった。
「…それでも、行きます」
「…え……」
「だって、お姉様への怪我を出来るだけ軽くすれば良いのでしょう?」
「それは……」
口ごもるアイリスを、ルナが優しく抱きしめる。ルナの、王族を表す白い布地に金色の刺繍で出来たローブが涙で濡れる。
大丈夫、大丈夫よとアイリスを慰め、労るルナにアイリスは安心した。
「行ってくるわね、アイリス」
「行か…な…で………」
「駄目。それは……出来ない」
ルナは聖月石のはめ込まれた美しい指輪に魔力を込める。時の守護者の元へ行くためには、時空の扉を潜らなくては行けないと、幼いころに読んだ文献にあった。
古城の別室の窓際に腰掛けるアリアにもそれが伝わった。彼の指輪の神闇石も、それに呼応しているのだ。
「ルナ……?」
瞬間、ルナの周りを光の美しい魔力が覆い被さる。ふわりとルナの銀髪が揺れて、紫の瞳が一瞬アイリスの瞳と合った。
「お母様は、止められないんですから……」
半分呆れた顔で、アイリスもその中に入っていく。
───さあ、時空の扉を開けましょう
ギィイ……と重たい音をたてて時空の重厚な扉が開いていく。
時空の狭間は、アイリスの転移も受け付けない。あの道化師よりも強い力を秘めていることを、彼女は知っていた。
「…アイリス・レイ・ブルームーン…」
ぼそりと呟く時の守護者の深い緑の髪色が目に入る。
ルナがあの時出会った狂った守護者とは違う、穏やかで、落ち着いた人。けれど、その中には強さがある人だと、感じていた。
じゃら…と腰元につけた幾つもの鍵に、手には魔法で作られたであろう槍。
空間は時空が入り混じり、扉という扉がいくつもあった。
「何の用でしょうか、光の王族」
二人の前に跪き、交戦の意志は無い、とお互いに武器をしまう。
顔を上げた守護者の顔は、アイリスにとって慈愛に満ちた優しい顔だった。
───幾どとなく私を救ってくれた、守護者…
そんなアイリスの思いをよそに、ルナは早速本題を切り出す。
「救いたい人がいます」
さて、時の守護者再登場です。
前とは違う別人ですが、彼女がこの後大きく関わってくる予定です(*´∀`)




