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光と闇のシンフォニア  作者: 花宮 あいら
光焔の王女
71/135

14―2 過去の力

27章 闇のエレメント



「───兄さん」



男は、虚空に手を伸ばして言った。

どこまでも広がる闇が、彼を蝕む。

全てを拒絶し、跳ね返す闇。男は、その中で感情を歪めていった。



「兄さん?」


「────!」



男は振り向きざま、その声の主を理解した。


忌まわしき呪いと、闇の王子の混血───焔の力を纏いし姫、アイリスであると。

彼はにやりと歪んだ笑みを見せて、腕に付けられた枷をかしゃん…と鳴らした。



「道化師に、兄なんているのね」



皮肉混じりに言うセリフに、男──道化師はのらりくらりと反応する。



「ははっ、驚いたよ

 焔の王女が何をしに来た?」


「闇のエレメント──って言ったら、どうするかしら?」


「そうだね───君ごと、抹消しちゃおうかなぁ……くくく……」



否定も肯定もせず、ただくつくつと笑う道化師に、アイリスは自らに紅き焔を纏わせる。

まるで殺気立ったかのような恐ろしさが彼の兄への心を増大させた。



「……灼き殺されたいのかしら?」


「君も死にたいのかな?」


「……」



それを聞いて、黙ってアイリスは焔をふわりと消す。

すると、道化師は話し出した。



「……そうだよ、僕は闇のエレメントを持つ、最初で最後の王子。いや、今は道化師だが。」



急に衝撃の事実をさらりと言う彼に、アイリスは動揺した。だが、「最初で最後」の発言は妙に引っかかった。



「さぁね?言葉なんてそんなもの。幾らだって嘘はでっち上げることができる。君だって、そうやって生きてきたんじゃないのかな?」


「……!!」



図星をつかれたようにアイリスは押し黙った。

また、くつくつ嘲るように道化師は笑う。


──あの時代の皇帝…になりそこねた者。


その言葉が、瞬間アイリスの中でぐるぐる巡った。もしも、もしこの道化師があの時代に生きた王子ならば、闇のエレメントを持つ者はその人しかいないはず。

でも、そんな前の人なんて生きている訳も無ければ、文献にも死去した日にちから時間まで詳細にかかれたものがあったはず。


──まさか、この人は……



「君の考えは少し間違っているね。……いずれ、分かるよ、王女様」



考えを理解したように道化師はまた笑う。

不気味に、でも前の微笑みとは違う、懐かしさと儚さを含めた風に。



「皇帝になり損ねたのに皇帝魔術を軽々と扱い、道化師として何千年もの刻を過ごしてきたなんて、そりゃ馬鹿げているわね」


「くくく……ご名答だよ、王女様」



次の瞬間、弾かれたようにアイリスは転移していた。アイリスの部屋である、小城の小部屋。わけの分からないほどに一気に何かが解けた気がした。

あれだけの膨大な闇の流れには、焔も無意味。アイリスはただぼう然と、その場に立ち尽くしていた。



「…………また…」



彼女はまた、道化師との勝負に負けた気になった。


そしてまた彼女は、エレメントを探し…さ迷う。

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