13ー3 黒いナイフと道化師と
23章 昔の話
花が咲く離宮の庭、ルナは紅茶を淹れながら、アリアとのんびりしていた。
「アリア様」
「ルナ、どうした?」
ルナは、アリアの隣に座った。
「…もし、わたしとの結婚が無ければ、アリア様はどうしていましたか…?」
彼の目を、まっすぐ見つめる。
少し考えて、アリアは語った。
「…そうだな…」
その声は、まるで……
「君を、ナイフで刺し殺していたかも…ね」
「…あっ……!!」
ばさ…と音を立てて起きた。
夢──とばかりに冷や汗が伝っていく。おぞましかった。
「ルナ……」
隣で眠っていたアリアが無意識に彼女を抱き寄せる。
怖くなって、ルナは足早に着替え、カーテンを開けて彼を起こした。
「ルナ、おはよう」
「アリア…様」
「…どうしたんだ?」
心配そうに身体を起こしたアリアが、ルナのおでこに唇を落とす。顔を赤らめるルナを、アリアは優しく抱き締めた。
「さっき…夢を見ました」
「夢?」
「二人で、お茶をしている夢─…」
そのことを話すと、アリアはルナをお姫様抱っこして、外に連れ出した。
「アリア様?」
早朝の肌寒くて、濃霧の広がる古城の辺りを歩く。ルナは腕の中で、すぅ…と深呼吸をして心を休める。
「アイリスが…闇の城に行ったまま…帰りません…」
「闇の城は結界があるから、大丈夫だ。今は…お前の方がよっぽど心配する顔してる」
「もう…娘の心配もしてください…」
分かってるよ…とアリアは呟いた。
「アリア様…覚えていますか?」
「…ん?」
「三年前、ここで歌ったこと。」
「ああ」
「逃げるな、戦え。いずれ分かるだろう──なんて言われる夢を見て、戦争が始まって。無事に和解できて、死人も少なくて済んだ。…少なからず、なくなった方はいっぱいいたけれど。
それから、アイリスが生まれて、蒼で焔の渦によって未来から来たアイリスとも出会えて。
もしも、あれが協奏曲だとするならば、あれはただの序章で、今はきっと…四重奏だったりして」
「なぁ…四重奏なら、オレと、ルナと、アイリスと…あと一人は?」
え?ときょとんとするルナにも、後一人が、分からなかった。
「はあ…はあ…」
書庫の中、一人、じっとりと汗をかいているアイリスは…闇にむしばまれるようにその場に立ち尽くしていた。
呪いのことがかかれた神聖文字の書物を開きながら。
「ここで、止まるわけにはいかない
あいつを倒すまで、わたしは……!」
また、オッドアイがひらひら揺れて、数冊の本を持って、また焔を纏ってどこかへ転移していった。
一冊──「焔のエレメントは、その力により永久無限に力を扱える」ことが書かれている、もう幾度も未来で読んだ本を置いて。
伏線を回収しなければ、と思い続け回収しないということになってます




