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光と闇のシンフォニア  作者: 花宮 あいら
終わらない四重奏─カルテット
101/135

19ー4 奏でる戦いの音

4章 ばらばらな記憶



「…っ……」



銀色の髪に、美しい紫紺と、蒼瞳。そして、空を示すであろう紋章。


それは間違いなく、クラリス(ルナの娘)であることを示していた。



「お母様は…殺すべき、人…姉様にも、邪魔はさせたくない」


「…クラリス、そうだとしたら、あなたは大馬鹿者よ」



殺意に満ちた瞳でルナを見るクラリスに、アイリスは普段見せないような「怒り」を込めて身体をふるわせる。


アイリスの勢いに気圧されるクラリスは、尚も殺意を緩めない。ナイフは握りしめたまま。

その双眸は細く、けれど今にも涙を落っことしてしまいそう。



「未来は、変えられない……って、見てしまったから、私を、時空を歪めて誕生させる禁忌を、本当に、そうだったから」


「……で、も!でも!私は見た、見えた!未来が変わった瞬間を見たわ。お母様と一緒に、時空のかなたで変えられたのよ!」



二人の未来と今、そして過去までも巻き込んだ怒りと、苦しみと、悲しみは自身を責める。ルナはあわあわとしながらも、邂逅したもう一人の娘、クラリスを見つめる。



「───ぁ」



ふと、小さくクラリスが喚いた。それは、アイリスにもルナにも、届いたかは分からないけれど。それくらい、小さな声で。



「母様…なん、て……」



涙と鼻水でぐしゃぐしゃに濡れた顔を、袖に押し付ける。ぐす、ぐすと聞こえる嗚咽を聞いて、ルナは泣き崩れたクラリスをそっと撫でる。


───大嫌い。その一言も言えないまま、クラリスはルナの胸の中で泣き疲れ、眠りについた。




♢♢♢




「───ぅ…ん」


「クラリス、おはよう」



朝。アイリスは、クラリスのためにしつらえた寝室で、優しく彼女を起こした。

あれほどぼろぼろに泣いて、なおも瞳は赤く腫れ、鼻はぐすぐすとまだ音をたてて啜る。



「姉様、母様は…?」



はっとした瞳で姉を見るクラリスに、アイリスはむぅっと膨れた顔を見せる。

それは、他でもないアイリスの、姉としての立派で気丈なもので。



「もう、すぐにお母様お母様って。お姉ちゃん、やきもち妬いちゃうわよ」


「違っ…そ、そんなつもりじゃ…」



わたわたと、年相応に可愛らしい反応を見せるクラリスに、アイリスもよしよしと、雑な笑いをする。



「……クラリス」



真面目な顔に戻るアイリスに、クラリスもつられて口を閉じる。アイリスのほんのちょっと年下で、でもアイリスを姉と敬愛する彼女は、今や一人で運命に立ち向かい、抗っている。



「────偉かったね」



そう、瞳を皮膚で覆い隠して、アイリスは言った。寝間着で、ベッドの上で、クラリスを抱きしめる。


未来には無かった、暖かい「命」があった。

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