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ACT.5「その名はミネルヴァ」

大賢者ハイエルフの名前がついに判明。

彼女はルクスとルチアーナをからかうようですが…?


…結局お試し加入、という感じで大賢者を名乗るハイエルフにパーティー加入を押し切られてしまった。


宿に戻ったアタシは女子の雑魚寝部屋に戻るとマントの上から備え付けの毛布を被ってそのまま横になった。

風呂は清浄化(クリーン)魔法で代用したから汗臭さは無いけど備え付け毛布が少しカビ臭するかな。

安部屋だから仕方が無い。


勇者パーティーは結成当初アタシ、ショータ、ガルド、エボリュー、アローネ、ミカ、そしてルチアーナの計七人。

それが今回自称大賢者のハイエルフが加われば計八人になる。

この先女五人で安宿雑魚寝部屋に泊まるとなるとかなり手狭で大変だな、なんて呑気な事考えながらその日は眠った。

隣のルチアーナもアタシに悪態を突く事もなく眠った。

前日はまだ勇者パーティーは結成したばかりだからそれぞれ個人で部屋を取っていたけど勇者パーティーに入った途端雑魚寝になるなんて考えもしなかっただろうな。

なんせ安いクエストの報酬は更にメンバーに均等分けされるから、そりゃ安宿くらいしか泊まれなくなるよね。

ショータが王様から戴いたお金もとうの昔に無くなった。

ショータってば弱ってる人達に気前良すぎるからね。

誰か付いてて注意しないと生活費すら残せないよアイツ。


アタシはショータの悪口を思いながら何時の間にか眠りについた。


………。


赤い。


燃えてる、炎が。

 

燃えてる…アタシの、家…?


燃えてる、燃えてるよ!行かなきゃ、行かなきゃー!


(…)


(…ルクス、ルクス!)


(…お父さん?)

(大丈夫、アタシ強くなったよ、前世ほどじゃ無いけど魔法使えるようになったよ、だから…)


「ルクス!」


誰かがアタシを呼ぶ声がした。 


違う。

コレはお父さんの声じゃない、

女の子の、声…?


「ルクス!しっかりしなさい!」


ふえ?


「ルクス!………ああ良かった、目が覚めたのですね?」

怖い顔してルチアーナがアタシの顔を覗き込んでいた。

へ?どういう状況コレ?


「何?アタシが美人だから見とれてた?」


「んなわけないでしょ!」

ボスン!とルチアーナはアタシの顔に枕を叩きつけた。


「うなされてたみたいだけど変な夢でも見てたの?」


「変なはないけど…まあ、昔の夢よ…」


「お気楽そうなアナタにもヘビーな過去があった、とかはやめてくださいよね想像もつかない。」


「何よ、アタシにヘビーな過去が一つくらいあっても別に良いじゃない。」

それよりお気楽の方がひっかかった。

そりゃアンタの方だろう?とアタシは心の中で毒づいた。

ルチアーナがソコからアタシの見てた夢の先について深くは聞いて来なかったのは正直助かった。

あのメス猫が深入りしなかったのは別にアタシを気遣ってじゃない事はアタシが一番良く知ってるから別に感謝する義理は無いけどね。


アタシを少しだけ怪訝そうに見てたルチアーナだけど窓の方を見てからまた寝直した。

窓のカーテンからはまだ外の光が漏れて来ない。

今度は良い夢を見よう、そう思い直してアタシも寝直す事にした。

ショータとイチャ突く夢でも見たいな……、あ、ルチアーナとあの大賢者ハイエルフは出て来ないでね?頼むから!


…………。


そして朝。

宿から出てアタシ達は街の公園に集まった。


「おあよー…みんな寝れた?」


「オマエは寝れなかったようだなルクス?」


「うん、何か変な夢見ちゃってね、ガルド。」


「隣に寝てたルチアーナはお肌ツヤツヤだね、良く寝れたんだろう?」


「はい、途中そこのカラス女が寝言言って起こされたけどその後はグッスリ寝れました♯」


「アハハ、ルクスの事だからルチアや大賢者にショータ取られる夢でも見てたのかにゃ?」


「な、何故わかったのミカさん?!」

これは本当だ。

あのヘビーな過去の夢見た後で今度はルチアーナと大賢者にショータ取られる夢にうなされたアタシは顔にルチアーナの裏拳が「うるはい…!」とばかりにヒットして起こされてしまった。


「そういやルクスの顔、赤くなってないか?どうしたんだそれ?」


「いや…隣で寝てた聖職者のヤツの寝相が結構凶暴でね…」


「要らぬ誤解招く発言やめていただけないかしら、カラス女さん?」

誤解じゃなくて事実なんだけど…。


などと和やか?な会話をアタシ達がしてると…。


「…つまりさ、不利な状況に誘い込んだ、そう相手に思わせておいて自分達の方が逆に相手をこちらにとって有利な状況に引き込むんだ。」


「そうか!それなら危機を乗り越えて相手の軍勢を一網打尽に出来るね!流石は大賢者だ!」


「ハハハ、まあ今のは戦略に関する初歩的な知識なんだけどね。」


なんだか朝から仲良さそうに歩いて来るショータと大賢者ハイエルフ。


…待てよ。

大賢者もハイエルフも良く考えたら名前じゃないな。

あの人の名前何だろ、これから一緒にやってくとすれば個人の名前がわかんないとやりにくいよね?


「おはよショータ、あのねそのハイエルフさんの…」


「ああおはよルクス、ハイエルフ?ああ…」

「このミネルヴァがどうかしたのかい?」


ブッ?!

知恵と戦いの女神じゃないかその名前!

今世では味方側だから心強いだろうけど、前世の記憶ではコテンパンにされたイメージが…


いやしかし相手はアタシより長生きしてるはずの長命なハイエルフだぞ?

流石に女神の生まれ変わりなんかあり得ない、考え過ぎだ!

アタシがあーだこーだとミネルヴァという名前について考えていたら、何とルチアーナは目を輝やかせて大賢者ミネルヴァを見つめていた。

「何と…あの女神様のお名前を戴いたと言う事はさぞかし高貴な血統のお生まれなのですね?」


あ、コイツまさか権威とやらに弱いのか?

それともミーハー?


「ああおはようルチアーナ、私の血統?」


「はい、素晴らしいチートや秘術とか授けられてるんですね?」


「いやあ…期待させて申し訳ないが…」


「至って普通の引きこもりエルフ一族の生まれだが?先祖を辿っても特に女神の系譜など見当たらないぞ。」


「は…?」

ルチアーナがポカンとしてる。

いい間抜け面だ、笑いそうになる(笑)。


「それに、なんだ…いわゆる神からのチートとやらは知らん、私の知識や力は純粋に私が求め学び身に付けたものだ、独学もあるし人から教えて貰った事もある…」


「し、しかしそれだけ弛まぬ研鑽を積まれた努力の末高度な知識や魔法を得られたのは尊敬に値します!」


「私の知識ちょっとしか出して無いだろ?それに魔法はまだみんなには見せてもいないんだが。」


「しかしあなたは自ら大賢者と名乗られたのだから大賢者となれるのは努力の天才だからでは?」


ボリボリ…と大賢者ミネルヴァは頭をかきながらまだ興奮状態のルチアーナにこう言った。

「まあ何百年も長生きしてればそれなりに知識は貯まるし…」

「それにエルフの里で長生きするのも結構退屈でさ?退屈しのぎに人間の街に出て冒険者やったり大学院に顔出したり色々やってるうちに無駄に知識や魔法、戦い方なんかが身に付いてしまったのさ?」

「そんで最近覚える事も無くて刺激に飢えててね、そしたら勇者が現れて勇者パーティーを結成したと聞いたんだ、これは参加するしかない!と思って来てみたら…いやあ大当たりだったね!」


「大当たり…て、何が大当たりだったのよ?」

少し馬鹿にされてるような気がしてアタシは大賢者のハイエルフ、ミネルヴァとやらに聞いてみた。


「フフン♪そ・れ・は…ねえ〜?」

ミネルヴァは勿体ぶった。


そしてショータとアタシ、ついでにルチアーナをジロジロ眺めた。


「な、なによう」


「な、なんですかジロジロと…?」


アタシとルチアーナは大賢者ミネルヴァに意味深そうに見られて落ち着かない。


ショータも見られてたけど、ショータのヤツはと言うと………


「…ポッ」


するとミネルヴァも

「…ポッ」


な、なんじゃそりゃ?!

何でポッ、なのよポッ?ポッポッポッ、てアンタらは鳩か?!


「て、照れるよミネルヴァそんなに見られたら」


「そ、そんな風に照れられたら逆にコッチだって照れ臭くちゃうんだけど(汗)?」


な〜に良い雰囲気になってやがんだよアンタらはあ〜〜〜っ???


「しょ、ショータ様っ?少しミネルヴァ様にくっつきゃございませんこと?!」


「いや、普通に1メートルくらいは離れてるけど…」


「アハハ、ルチアーナって期待通りの反応見せてくれるねえ?」


「アンタ、ルチアーナで遊んでんの?」


「おやおやルクスちゃんだっけ、ルチアーナがからかわれてご立腹かなぁ?」    


「別に?単純なルチアーナからかって面白がるなんて随分程度が低い大賢者さんだね!」


程度が低い。

この言葉に少しミネルヴァの雰囲気が変わった。


「ふ〜ん、じゃあルクスちゃんは程度が高いとでも?」 


「アタシは何を隠そう天才魔法使いだ!そんじょそこらの魔法使いとは程度からして違うんだよ!」


「クスッ…じゃあルクスちゃんの程度がどれ程互高いのか、ちょっとゲームでもしてみない?」


「ゲーム?」


「そうだね…ルクスちゃんが気になるルチアーナちゃん、アンタも参加しなさい。」


「何故私も?」


「二人とも私の事が酷くお気に召さなかったみたいだからねえ、まあ私の名前聞いた途端ルチアーナちゃんの態度が変わった事は置いとくとして…」


(ちょっとルチアーナ、結局アンタあのミネルヴァって女を敵と見るのか味方に見るのか決めなさいよ!)


(う、う〜んとお…)

(…女神様のお名前だったからときめいたけど、良く考えたら中身は女神様と名前が同じだけの俗物のようですし…)

「決めました!大賢者を名乗りこともあろうか女神様の名前を名乗る不届きなハイエルフに少しお灸をすえないといけませんからね!」


「じゃあ決まりだね!ゲームの内容を説明するよ。」


「まずはルクスちゃんルチアーナちゃんの二人はタッグを組みな!」


「そんで私はショータとタッグを組んで二人と戦う、いいね?」


「「はあ〜っ?!」」

この組み分けに思わずアタシとルチアーナは叫んだ。


やはりルクスとルチアーナはショータを巡って大賢者ハイエルフのミネルヴァと対立する事になりました、というよりミネルヴァの方が面白がってゲームをふっかけてましたが、ミネルヴァがまさかのショータを自軍に引き入れてのゲームにルクスとルチアーナは納得するのか?

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