ACT.4「新登場、キケンでキライなケンジャ?」
初クエストをグダグダに終えた勇者パーティー、勇者ショータはこの事実に打ち上げを始めようとするパーティーメンバー達を制して大反省会を始めるつもりでしたが、そこへ…?
ここは冒険者ギルドの酒場。
アタシ達勇者パーティーはここで勇者パーティーとしての初クエストの労を労う…という名目ではあるけど、実際はさっきのクエストでのヤラカシに対する大反省会!!…の、真っ最中だった。
事の発端はギルド酒場のテーブルについた途端に酒を注文しようとしたガルドをショータが力づくで制止した事から始まった。
「ねーちゃん、取り敢えずビー…」
と言いかけたガルドの口を手で押さえながらショータはこう言った。
「コーヒー七つお願いしまーす!」
全く有無を言わせなかった。
いつものショータらしくない険悪なムードを漂わせていた。
「どったのショータ?何か悪いモノでも食べた? 」
アタシが無邪気に聞くと一瞬怒ったような顔をしたショータだったけど、直ぐに下を向いて盛大に
「はあ〜っ…!」と溜め息を吐いた。
何か機嫌が悪そうだ、何かしたかなアタシ?
流石にショータの様子がおかしかったせいかルチアーナまでが心配してこう言った。
「ショータ様、どこか優れないところがおありでしょうか?よろしければ私の治癒魔法で…」
「あ、ありがとルチア、別に身体は何ともないから…」
と、ショータは更に疲れたように言った。
ん?さっきのルチアーナの言葉の何にひっかかったんだろう?
アタシには別に癪に触る言葉は無かったけどな。
「お待たせしましたー。」
給仕の衣装を着たお姉さんがコーヒー七人分を2回に分けてアタシ達のテーブルに置いていく。
それから数回深呼吸をすると顔を上げるショータ。
心配そうにショータの顔を覗き込むアタシ達パーティーメンバー全員の顔を一瞥してからショータはこう言った。
「ええと…みんな、昨日会ったばかりの勇者パーティーでの初クエストお疲れ様。」
コーヒーカップを乾杯みたいにショータが前に突き出すと、皆も無言で乾杯の真似事みたいにコーヒーカップを突き出した。
それからショータがコーヒーを一口啜ると、みんなも同じようにコーヒーカップを口に下からアタシもコーヒーを飲んだ…てかこれブラックのままだったじゃん?!チョー苦いんだけどっ!!
みんなは苦くないのかな?…あ、ルチアーナが角砂糖を独占してやがった…。
「甘〜い♡」
ルチアーナは幸せそうに目を細めて言った。
ああそうかい、それはよございました!
他の女性陣はというと、アローネさんとミカもいつの間にかミルクをコーヒーに投入してカフェオレにしていた。
くうっ!
これが世に言う女子力ってヤツなの?
え?女子力関係無い?
いいですよ〜、どうせアタシはロクな生活して来なかったからね!友達少ないし?
見てなさい、いつかアタシも砂糖ドバドバミルクドバドバなクリーミーで甘々なコーヒーに自然と整えてから飲めるようになってやるんだから!
…て、最初の注文の時点でカフェオレに変えて貰う方が早かったわね…。
いかんいかん、つい脱線してしまったわ。
本題に意識を戻そう!
「…で、なんでさっきはビールの注文させなかったんだショータ?」
ガルドが不満を露わにした、そりゃそうよね。
仕事の後の一杯の為だけに生きてるような男だから。
…ん?仕事の前にも迎え酒させようとして酒樽に頭からツッコまされたハズじゃあ………ま、まあいいわ、それは見なかった事にしとこう(汗)。
「さっきは悪かったなガルド、でも酔っぱらう前に今日の内容について反省と今後の対策について話し合っておきたいんだ。」
「…ああ、そりゃ確かにそうしないとな、出なきゃ次こそ死人が出てもおかしくなかったもんな。」
エボリューは茶化さず言ってからグビグビとコーヒーを煽った。
「姉ちゃん、俺コーヒーおかわり!」
給仕のお姉さんが直ぐにエボリューのコーヒーカップに新しいコーヒーを注いだ。
て、良く砂糖も入れずあんな苦いブラックコーヒー何杯もいけるわね、尊敬しちゃうわ。
「じゃあさ、逆にコッチから聞くけど…」
「アレってヤッパリ、私の提案した陣形の性、だよね…?」
アローネはバツが悪そうに言うと俯いた。
あ、ヤッパリ自覚あったのねアローネ?
「いやあの陣形そのものに問題があったわけじゃない、前衛中衛後衛を縦型に並べて回復役のルチアの両側にロングレンジ攻撃出来るルクスとアローネを配置するのは洞窟や通路を進むのに適してる。」
「ええ、私のいた冒険者パーティーではゴブリンの巣の掃討やダンジョンの浅い階層探索が主な活動だったのよ。」
「一応横の守りも考えて弓兵の私と魔法使いのルクスちゃんでルチアちゃんの横を固めたんだけど…やはり接近されたらダメだったわね。」
「だからアローネはあの陣形を提案したんだにゃ?」
「しかしあの陣形は側面や後方に回り込まれた時近接戦闘型の仲間がいない事で直ぐにパーティー全体がオークの群れに囲まれてしまい、明らかに状況と合わない陣形でしたね、他の陣形で行くべきでした。」
ルチアーナがクールにアローネの提案した陣形に起きた事を分析した。
ていうか、言い方!もう少し柔らかく言えよルチアーナ!?
「まあ待て、突進する時はアレでも良かったと思うんだ、そこから先をもっと臨機応変な陣形に指示出来なかった俺の責任だ、スマンみんな。」
ショータが頭を下げる。
行きがかり上アローネに責任を押し付ける格好になりそうだったからショータが自分のせいにしたんだ、不器用なショータ。
でもソコがほっとけないんだよね…。
アタシはショータに尋ねた。
「で、結局オークの群れと乱戦になる前にどんな陣形にすれば良かったの?」
「え?…言われて見れば、他にどんな陣形があるんだ?」
ズコッ!
アタシと勇者パーティーのみんなはテーブルにオデコをぶつけた。
「が、ガルド?アンタ傭兵だったんなら何かあの場に向いた陣形知ってない?」
オデコを手で押さえながらアタシは聞いた。
「…丸型、紡錘型、四角型とあったはずだが…」
「具体的にどの役目がどこに配置されたかまでは覚えない、なんせ指揮官の指示通り動くだけだったからな。」
使えねーなー。
「なあ、俺からの提案なんだが…」
「何だエボリュー?」
「軍師みたいな奴がウチに入ればそういった事の指揮を取れるんじゃないのか?」
「軍師…」
なるほど、確かに。
今のアタシ達は自分で言うのも何だけど個々人の実力だけならソコいらの冒険者パーティーに劣らない。
推定だけど、アタシはSランク相当は間違い無い。
ショータも星剣込みならSSランクも夢じゃないだろう。
ルチアーナは…まあ治癒魔法の実力から判断してBランクはあるだろう…オマケしてAランクにしてやらん事もないが、治癒魔法でアタシを痛苦しめたからやっぱりCランク!
痛苦しく無くなればBランクにしてやらん事も無い。
他のメンバーも昨日の活躍からしてBランクくらいの実力は有りそうな気がする。
て、Sランク以上はアタシとショータだけ?
いやあん、やっぱアタシとショータってばお似合い?
クフフフ…♡
「さっきから何ニヤケてんですか気味悪いですね」ふと気が付くとルチアーナがジト目でアタシを見ていた。
「今はこのパーティーに軍師が必要だと言う話しが出てるのに危機感がありませんね?」
「危機感?新メンバーに軍師迎えてメンバーが結果を出せるようにするんでしょ?何を警戒する必要が…」
「これだからカラス女は…良いですか?この勇者パーティーは男性三人に女性四人です!」
「ふんふん、それで?」
アタシはカップに残ったコーヒーをズズーッと飲み干した。
「アローネさんとミカさんはショータ様にベッタリじゃないから良いものの、新しく入るメンバーが女性だったら?」
「!」
そ、そうか、それを失念してたわ!
「新メンバーもショータを好きに…?」
ルチアーナがコクっと頷く。
「今でさえ私はアナタがショータ様にちょっかい出すたび落ち着きませんのに、これでもし新しい面倒が増えたりしたら…!」
「そ、そうだね、そこは激しく同意するわ…」
「アタシもアンタがショータにちょっかい出すたび落ち着かないから新しい厄介はゴメン被るわ!」
「少し食い違うとこもあるけど…意見が合いましたね珍しく。」
「ええ、ホント珍しく。」
アタシとルチアーナはこの時誓った。
「「ショータ(様)を新しい女郎から守る!」」
この時アタシとルチアーナは他のメンバー達から
呆れ顔で見られている事に全く気が付いていなかった。
「自分達の事を棚に上げてよく言うわ」と聞こえたのも気の所為。
そして。
「ウンウン、良くわからないけど二人の結束が強くなったみたいで良い傾向だね♪」
ショータは斜めな解釈をしていた。
いつもの事だった。
そこへ。
「ふ〜ん、勇者パーティーの皆さんは軍師をお探しですかあ?」
皆のカップにコーヒーを注いでいたお姉さんがショータに話しかけた。
「あ、ああ。俺達まだ結成したばかりで冒険者としては初心者なんだ…」
「ね、私を雇わない?」
「え?」
突拍子も無い事を給仕のお姉さんが言った。
「ねーちゃんはここアルバイトだろ?やめときな、アンタは化け物相手に戦闘なんざ似合わねえぜ。」
「そうそう、おねーちゃんみたいな美人さんは笑顔で料理を運んで来てくれれば充分さ。」
ガルドとエボリューの二人が給仕のお姉さんを軽くあしらった。
いいのかなあ、ザマァされる感するんだけど。
と、思ってたら。
「言ってくれるじゃないオニーサン達?」
給仕してたお姉さんが頭を覆ってたスカーフを外した。
すると見事な銀髪と長く尖った耳が出て来た。
「私は伊達に長生きしてないんだけどね?」
「え、エルフ?!」
アタシも久しぶりに見たよ、前世では良く見た記憶があったけど今世で身近に見たのは初めてだった。
するとルチアーナが感嘆するように言った。
「いえ、この清浄なオーラは…このお方は多分ハイエルフなのでは?」
確かに言われて見れば雰囲気が違う。
ショータがこのハイエルフに尋ねた。
「あの…アナタは一体?給仕さんじゃないんですか?」
「給仕はアナタ達勇者パーティーの噂を聞いてね、ちょっと興味が出たから酒場の主人に頼み込んでやらせてもらったんだよ。」
ハイエルフのお姉さんは近くの空いてる椅子にどっかと座った。
「因みに私はこうも呼ばれている。」
「大賢者、てね。」
ガルドとエボリューは驚いてからバツが悪そうに苦笑した。
「そ、その大賢者さんとやらは俺達がどんな陣形取るべきか分かってたのかよ?」
「まずは君達の勘違いを正そう。」
「其の一、受けるべきクエストを間違えてた。
陣形や連携確認するならもっと初心者向けで充分だった、何なら人間同士の模擬戦という手もあった。」
「うぐっ…そ、そう言われて見れば…」
「続いて其の二、縦型陣形のままオークの群れに突っ込んだのはそこまで問題じゃない、問題なのはただ突っ込んだだけだということだ。」
「どういう事なんだ?エルフさん。」
ショータは不服そうじゃなかった、寧ろ積極的に知識を得ようという顔だねアレは。
うんうん、流石は勇者だ。
それでいいんだよ、誰だって知らない事や初めてだらけなんだ。
足りてないところを吸収する事で成長するんだよ。
…て、偉そうに語ってしまったわ、失敬(汗)。
「あの陣形で群れを突くのならヒットアンドアウェイで上手く引くべきなのさ。」
「ヒットアンドアウェイ?」
「いっそ思い切り後退するのもいい、ただし後退先にコチラが有利になるような場所を用意しておく事が大事だ、若しくは罠を仕掛けておく。」
「な、なるほど…確かに俺は先制攻撃で浮き足立ってるところを突っ込んで一網打尽にする事しか考えてなかったけど予め仕掛けを用意しておけばあの陣形でも大丈夫だったのか…」
「大丈夫とは言っていないぞ、ただあの状況であっても縦型陣形なりに戦い方はある、という話しをしたのさ。」
「何それ?じゃあ結局どうやるのがベストだったのよ?」
多分回復役を真ん中にして円陣を組むのが広範囲の敵相手の戦い方なんだろうけどね。
「それを私の口から言わせる気なのかな?」
エルフが唇を吊り上げながら言った。
な、何だろ?何か知ってるような言い方だけど…
「ま、それはさておきだ。」
「支援魔法をかけたタイミングは何時だった?」
「はい、私が皆の突撃前に…」
ルチアーナが言い切る前にエルフが言った。
「アンタの支援魔法どのくらいの時間効き続ける?」
「え…?ええと、私含めて七人全員にかけましたから、一人辺り5分は持ちますけど。」
「ダメだね、かけるタイミングが違う。」
「え?しかしダメージ受けてからでは遅いですよ?」
「頃合いを見てからかけるんだ、最初から体力や魔力の消耗が激しくなりそうとわかればバフかけておく、急がなくても大丈夫なら後でかける、消耗戦になりそうなのに初っ端からバフかけたら悪いタイミングでバフが切れるかも知れないだろ?」
「そんなの運次第でしょ?!」
ルチアーナが興奮して言い返した。
アタシもそう思うが、まあでもエルフ姉さんの言う事も間違っちゃいないんだよねえ。
「で、最初のどう戦うべきだったかに戻るけど…」
「え?バフがけのタイミング掘り下げないんですか?!」
ルチアーナは放置された(笑)。
「結局は陣形云々じゃなかったってことさ。」
「ええっ?他の陣形なら大丈夫だったかと思ってたにゃ?!」
「先に違うと言っただろ?」
「陣形そのものじゃなく戦い方の問題だ。」
「平原のオークの群れ百体相手に組んだばかりのパーティー七人だったんだろ?勇者のチートがあるにしろそれに頼り切った戦いしてたらこの先ヤバい相手が出た時に手詰まりになるよ?」
「その通りです、だから俺とルクスはこうして仲間を集めて…」
「ルクス…て、コッチのお嬢ちゃん?」
「コホン、アタシがそのルクスよ。」
「ショータとは勇者パーティー以前からのパートナーなの、因みにアタシもチート級の天才魔法使いだからソコんとこヨロシク。」
少し挑発気味に言ってやった。
暫くエルフ賢者はジロジロとアタシを見てた。
「ふう…ん。少し禍々しい魔力の持ち主のようだけど、まあ実力は言うほどの事はありそうだね、身体から溢れ出てるよ魔力が。」
「オホホホ、ヤッパリアタシのレベルにもなれば才能が隠しきれなくて滲み出てしまうものなのね♪」
「才能とは言ってない、魔力だ。」
「似たようなもんじゃない?」
「…まあイイ…似たようなと言えばさっきの聖職者のコも身体から魔力が溢れ出てたな。」
「ルクスさんと似たようなもの扱いは不愉快です!けど私の身体から神のご加護が溢れ出してるのですね?やはり私程信心深ければ神から受ける御寵愛も桁が違うのですね…ウフフフ♪」
「というか魔力が黒いか白いかの違いくらいでそれ以外は同類に見えるがな。」
ガーン!!
な、何だろう?今激しくショックを受けたんだけど…?
アタシが精神的ダメージに狼狽えていると何故かルチアーナまでオロオロしていた。
こんなやり取りがあったせいだろうか、この日アタシとルチアーナはこのエルフ賢者とやらは共通の敵と認識した。
(ルクスさん私嫌な予感がするのです、ここは一時的に休戦と致しましょう)
(奇遇ねルチアーナ、アタシ的にもこのエルフ賢者こそが最大の脅威な気がするわ)
そしてこんな嫌な予感は得てして当たるものなのよ。
ていうか、いつの間にかルチアーナとテレパシーで会話してたー?!
何やらお節介な自称大賢者のエルフさんが現れて有難い講釈を垂れて下さいましたが…?
ルクスとルチアーナの二人は彼女を敵視したようです?
ショータを狙いそうな相手に対して結束する二人、ようやくタイトルにもある勇者同盟はここにしょーもない理由で成立?!




