第21話 黒翼城、開戦告知
通達が来たのは、夜だった。
鉄血旅団からの攻城戦申し入れ。
グラディオは、BEW幹部チャンネルに全員を呼んだ。
グラディオ:鉄血旅団から通達が来た。読め。
文面が貼られた。
古戦場協定に基づく攻城戦の申し入れ。
開戦名分は、BEW一強状態への牽制。
先鋒は鉄血旅団。
一戦限り。
ミスティア:古戦場協定か
ルシエル:受けますか。
グラディオ:受ける。
ひまり:断れないんですか?
ミスティア:断れなくはないけど、断ったらBEWが協定を軽んじたって形になる
スカーレット:筋が悪い
ルシエル:古参ギルドほど、そういうことにうるさいですから
グラディオ:日時と条件の確認をする。
開戦日時。
場所はBEW城外郭。
制限時間二時間。
勝利条件は、BEW城中枢クリスタルの破壊。
ミスティア:鉄血が先鋒なら、月下繚乱と山賊団は様子見か
グラディオ:今のところはな。
スカーレット:山賊団が来たら面倒
ミスティア:山賊団は来たら来たで楽しいけどね
スカーレット:楽しくない
ルシエル:鉄血旅団が一戦で降りれば、そこで終わる可能性もあります
グラディオ:ある。
ひまり:あの、私はどうすれば
グラディオ:配信はいつも通りやれ。
ひまり:戦争中もですか?
グラディオ:Twitchの遅延は三十秒以上ある。三十秒前の戦況に価値はない。
それだけだった。
ミスティア:ひまちゃんが普通に配信してる方が強いんだよね
ひまり:普通に配信するのが、強い……?
ルシエル:BEWが慌てていないように見えます。
スカーレット:実際、慌ててない
グラディオ:戦争を外から見たいプレイヤーはいる。
グラディオが、短く続ける。
グラディオ:見て、面白そうだと思う奴が増えるなら、それでいい。MMOに人が来ることは悪くない。
ひまり:……はい。
ひまりは頷いた。
戦争を配信する。
そう聞くと大きなことのように思えるが、グラディオの言い方は淡々としていた。
隠す必要はない。
見せる意味がある。
三十秒前の戦況に、作戦情報としての価値はない。
それだけの話だった。
グラディオ:次に、相手の確認だ。鉄血旅団。月下繚乱。山塞の山賊団。
ミスティア:鉄血は正面から来る。山賊団は攪乱。月下繚乱は嫌なところを突く。
スカーレット:帰蝶が嫌い。
ミスティア:スカの嫌いリスト今日も更新。
スカーレット:帰蝶は特に嫌い。
ひまり:帰蝶さんという方がいるんですか。
空気が少し変わった。
グラディオ:ルシエル。
ルシエル:はい。
グラディオ:帰蝶が出てきたとき、お前の手が止まるか。
少し間があった。
ルシエル:止まりません。
グラディオ:ならいい。
ひまりには、その短いやり取りの意味がわからなかった。
けれど、聞いていい話ではない気がした。
グラディオ:ミスティアは後衛制圧。スカーレットは山賊団の奇襲潰し。俺はヴォルフラムを見る。
ミスティア:了解。
スカーレット:わかった。
グラディオ:ひまり。
ひまり:はい。
グラディオ:お前はBEW所属だ。戦えない。だから戦場で不用意に動くな。
ひまり:はい。
グラディオ:ただ、配信はする。お前の画面で戦争が見える。
ひまり:……はい。
グラディオ:見ている奴らは、お前も含めてBEWを見る。そこだけわかっていればいい。
ひまりは、少しだけ考えてから頷いた。
ひまり:わかりました。
ミスティア:まあ、変なこと言われても気にしなくていいよ。どうせコメント欄は好き勝手言うし
スカーレット:変なのは拾うな
ひまり:拾いません
スカーレット:ほんとに?
ひまり:ほんとです
ルシエル:戦況でわからないことがあれば、無理に解説しなくて大丈夫です。見えたものを、そのまま伝えればいいと思います。
ひまり:はい。
グラディオ:ならいい。
BEWの幹部チャンネルに、戦争準備の文字が流れ始めた。
鉄血旅団が来る。
古戦場協定に従った、一戦。
黒翼城の攻城戦は、ひまりの配信にも乗ることになった。




