表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
20/38

第20話 誰の戦争か

 権蔵が帰蝶の古傷を刺してから、チャンネルはしばらく止まっていた。


 誰も打たなかった。


 帰蝶も、紫苑も、ヴォルフラムも。


 文字だけの場所なのに、間があった。


 最初に動いたのは紫苑だった。


――Discord:古戦場協定・臨時チャンネル――


紫苑:話を戻します。


 その一文で、先ほどの沈黙はいったん脇へ置かれた。


紫苑:BEWは強い。装備、指揮、人脈、戦場経験。現環境では突出しています。

紫苑:このままBEW一強が固定されれば、古参PKギルド側の戦争文化は先細る。

紫苑:古戦場協定として、一度正面から楔を打つべきだと考えています。


 整った文章だった。


 整いすぎていて、少し冷たい。


権蔵:で

権蔵:発端はシルヴィスの泣き言だろ


 帰蝶の名前の横に、入力中の表示が出た。


 すぐに消えた。


紫苑:発端の一つであることは否定しません。


権蔵:一つ、ね


紫苑:開戦名分としてはBEW一強への牽制で十分です。


権蔵:綺麗な言い方だな


紫苑:必要な言い方です。


 権蔵は少し間を置いた。


権蔵:つまり、シルヴィスの私怨を、古戦場協定の戦争に変えるわけだ


帰蝶:権蔵さん。


権蔵:違うなら違うって言えばいい


 帰蝶は返さなかった。


 紫苑も黙った。


 そこで、ヴォルフラムが打った。


ヴォルフラム:BEWが現環境で突出していることは事実です。古戦場協定として、一度正面から当たる筋は立つ。


 淡々とした文章だった。


 怒りも、熱も、同情もない。


ヴォルフラム:ただし。

ヴォルフラム:シルヴィスの嫉妬には興味ありません。


 チャンネルが止まった。


 短かった。


 だが、その一文で、場の湿った空気が切れた。


ヴォルフラム:約定に従って、BEWと戦争します。


 それだけだった。


 鉄血旅団は、シルヴィスのために動くのではない。


 帰蝶に頼まれたわけでも、紫苑の言葉に乗せられたわけでもない。


 約定に従う。


 筋が立つなら、戦場へ出る。


権蔵:いいじゃねえか

権蔵:泣き言より、よほど戦争らしい


 帰蝶は何も返さなかった。


紫苑:鉄血旅団としては、どのような形で。


ヴォルフラム:鉄血旅団が先鋒として、BEW城へ攻城戦を申し入れます。一戦だけです。勝てば続ける。負ければ降ります。


 三ギルドが一斉にBEWへ襲いかかる話ではなかった。


 まず、鉄血が出る。


 勝てばそこから先を考える。


 負ければ鉄血は降りる。


 それだけだった。


紫苑:承知しました。


権蔵:山賊団は様子見だ。鉄血が勝つなら、山も動くかもしれねえ


紫苑:月下繚乱は。


 帰蝶の返事は少し遅れた。


帰蝶:鉄血の一戦を見ます。必要なら、その後に動きます。


 紫苑が条件をまとめた。


紫苑:一、古戦場協定としてBEW一強状態への牽制を開戦名分とする。

紫苑:二、まず鉄血旅団が先鋒としてBEW城へ攻城戦を申し入れる。

紫苑:三、鉄血旅団は一戦のみ。勝てば継続を検討し、負ければ降りる。

紫苑:四、月下繚乱と山塞の山賊団は、結果を見て以後を判断する。


権蔵:わかりやすい


ヴォルフラム:異論ありません。


帰蝶:異論ありません。


 決まった。


 ヴォルフラムが最後に短く打った。


ヴォルフラム:では、グラディオに通達します。


 臨時チャンネルは、そのまま静かになった。


 次に動くのは、鉄血旅団。


 標的は、Black End Wingの城だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ