表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/11

第2話 配信者ひまり

「やっほー! 今日も、まったり生産配信はじめるよー!」


 明るい声と一緒に、配信画面が切り替わった。


 ゲーム画面の片隅には、小さなカメラ枠。

 そこに映るひまりが、ふわりと笑う。


《コメント》


:こんばんはー!

:待機してた!

:きたあああ

:今日も癒やし


 配信開始前から待っていた視聴者たちのコメントが、一気に流れた。


 同時接続は、すでに八十人を超えている。


 このゲーム――《Blood Ring Online》で、戦闘もない、生産と雑談だけの配信でこの数字は、かなり多い。


 ひまりは、この界隈では明らかに人気配信者だった。


「毎日寒いよねー」


 ひまりは、手をこすりながら笑った。


「みんな、風邪とかひいてない? 私はね、夕飯に鍋焼きうどん食べて、ほかほかだよ」


《コメント》


:鍋焼きいいな

:飯テロ

:腹減った


「でしょー?」


 くすくす笑う。


「みんなも、あったかくして見てね」


 いつもの柔らかい空気。


 いつもの、平和な配信。


 そのはずだった。


《コメント》


:……ひまちゃん、ギルドタグ変わってね?


 ひとつのコメントで、空気が変わる。


《コメント》


:あ

:ほんとだ

:え?

:BEWって書いてない?


 ざわ、とコメント欄が揺れた。


《コメント》


:それ、BEWって……あのPKギルド?

:ひまちゃんPKになったの!?

:えっ!?


「あ」


 ひまりは画面の端に視線をやって、小さく声を上げた。


「あー……バレた?」


 コメント欄が一気に加速する。


《コメント》


:バレたじゃないw

:いやいやいやw

:なんで!?


 ひまりは困ったように笑った。


「うん、そうだよ」


 あっさり認める。


「この間の配信終わってから、ゲームでDM来てね」


《コメント》


:DM!?

:誰から!?

:まさか団長!?


「えっと……生産援護で入団してほしいって」


 コメント欄が爆発した。


《コメント》


:はあ!?

:スカウト!?

:なんで!?

:ひまちゃん強くないじゃんw


「そうなの!」


 ひまりも大きく頷く。


「私のスキルくらいじゃ、とてもお手伝いにはなりませんって言ったんだけど……」


《コメント》


:うんうん


「それでも、って言うから」


 そこで少し、目が輝く。


「PKギルドの生産設備って、すごいって言うでしょ?」


《コメント》


:あー……

:なるほど

:それは気になる


「見物したくて、お邪魔しちゃった!」


 コメント欄が流れる。


《コメント》


:ひまちゃんw

:好奇心w

:かわいいから許す

:いやでもBEWだぞ……


 ひまりが眉を下げる。


「えー? だめだった?」


《コメント》


:いや……

:いやあ……

:うーん


 流れが止まりかけたところで、別のコメントが流れた。


《コメント》


:でも、生産スキルの最終ってPKフィールドのレアドロ加工しないと上がらないんだよね


 それで空気が変わった。


《コメント》


:あー……

:まあな

:しゃあないか

:最後そこ詰まるんだよな


 ひまりが、ぱっと顔を上げる。


「そこ、わかってくれて嬉しい!」


 笑顔になる。


「レア素材の加工に誘惑されたって言っても過言じゃないよ」


《コメント》


:正直でよろしい

:それはそう


「やっぱり最後までスキル上げたいじゃん?」


《コメント》


:上げたい

:上げたい

:職人の夢だもんな


「ね!」


 ひまりは嬉しそうに何度も頷く。


「だから、いままで通り、時間があるときは辻生産依頼も受けるから……許して?」


《コメント》


:許す

:しゃーない

:ひまちゃんがんばれ

:BEWに食われるなよ


「食べられないよ!?」


 慌てるひまりに、コメント欄が笑いで埋まった。


 画面の隅で、同時接続の数字が静かに増えていく。


 九十。


 百。


 百十。


 今夜の配信は、いつもより少し騒がしくなりそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ