表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第9章 アルカナートの追憶
205/251

cys:203 貫く意志

「バ、バカなっ! アルカナート、貴様の魔力クリスタルは、至高の白輝(びゃっき)のクリスタルのハズ!」


 驚愕し思わず身を乗り出したシルフィード。

 あまりの事に額からツーっと汗を流し、固まってしまっている。


「ううっ……ありえぬ……」


 だが、シルフィードには分かっていた。

 アルカナートがこういう事について、決して嘘や誇張を言わない事を。


「だから言ってんだろ。痛いほど分かるってよ」

「……バカな。一体どうやって……」

「フンッ、別に大した事はやってねぇ」

「なんだと……」


 苛立ち顔をしかめるシルフィードを、アルカナートは真っ直ぐ見据えている。


「捨てなかっただけだ。俺自身の希望と、可能性をよ」

「捨てなかっただと……」

「あぁ、そうだ。考えてもみろ、シルフィード。テメェは国を捨てたんじゃねぇ。捨てさせられたんだよ」

「な、なにを……」


 ギリッと歯を食いしばるシルフィード。

 アルカナートが何を言わんとしているかを、直感的に分かってしまったから。


「シルフィード、俺だって嫌だったさ。無色の魔力クリスタルとして、皆から蔑まれるのはな。だが、それ以上に嫌だったんだよ」

「まさか……」


 悔しそうに睨むシルフィードに、アルカナートは言い放つ。


「穢される訳にはいかねぇのさ。周りが憎しみに染めようとしてきても、そんな事は認めねぇ。俺を動かせるのは俺だけ。それが……俺のプライドだ!」


 その言葉がシルフィードの心へ、矢のようにグサッと刺さった。

 認めるしかないからだ。

 同じ無色の魔力クリスタルを授かってしまったにも関わらず、闇に堕ちた自分と勇者になったアルカナートとの違いを。


───くっ……! 俺は、国を捨てたのではなく、捨てさせられたのか……


 その想いが、これまで自分の意思で生きてきたという自負を打ち砕く。

 ただそうなると、シルフィードは気にせずにはいられなかった。


「だがアルカナート、無色の魔力クリスタルから、どうやってそこまでの力を得たのだ」


 そこが分からないシルフィードに、アルカナートは哀しく告げる。


「心の力、それが全てだ」

「心の力だと?」

「そうだ。無色の魔力クリスタルは、他の魔力クリスタルよりも覚醒させる為のエネルギーが必要になる。しかもそれは、闇じゃなく光の心がな」

「光りの心だと……ならばもし……」


 シルフィードは、そこまで言って言葉を詰まらせた。

 それを言ってしまえば、今までの自分を自ら否定してしまう事になるからだ。

 無論、アルカナートもそれを分かっている。

 またそれが、どれだけ辛い事かを。


───そうさシルフィード、もしお前が闇に堕ちる事を選ばなければ……


 だが、この戦いに決着をつける為に敢えて言う。

 トドメになる一言を。


「お前も成れていたハズだ。白輝の輝きを宿す勇者に……!」


 その言葉と同時に、静寂がその場を支配した。

 アルカナートもシルフィードも黙ったままだ。

 また、ナターシャはそんな二人を哀しく見つめている。


───もしシルフィードが違う選択をしていれば、きっとアルカナートと一緒に肩を並べて……


 ナターシャがそんな事を思う中、シルフィードは固まったままだ。

 瞳を伏せた状態で、アルカナートを見ようともしていない。

 そんなシルフィードを、アルカナートは哀しく見つめている。


「シルフィード、もう終わりにしようぜ」


 だがその時、シルフィードはクククッ……と、嗤うとスッと顔を上げた。

 その瞳はまだ闇に染まったままだ。


「だからどうだと言うのだ」

「なんだと」

「お前の言う通り国を捨てさせられたのだとしても、この俺自身が歩んできた道は紛れもない事実だ」

「フンッ……それは否定してねぇよ」

「なによりも……」


 シルフィードはそこまで告げると、アルカナートに向かい片手で剣を突きつけた。


「我が師の命と引き換えに得たこの滅輝乃魔眼の力は、貴様の白輝の魔力クリスタルを凌駕する物!」

「そいつはどうかな……」

「クククッ……負け惜しみを。アルカナートよ、貴様が自分の意思で何者にも穢されなかったように、俺もお前には穢されん! 貴様の命を絶つ! それは間違いなくこの俺自身の意思だ!!」


 そう言い放ったシルフィードの瞳は闇に染まっている。

 けれど、そこには確かな光も同時に宿っていた。

 それを受け、剣を構えたアルカナート。


「シルフィード、それがテメェの答えか」


 魔力クリスタルから溢れる白輝の輝きが、アルカナートの身体を包み込んでゆく。


「そうだ! 俺は、お前の存在そのものを消してやる! オォォォォォッ……!」


 滅輝乃魔眼から再び紫白(しはく)の悍ましいオーラが立ち昇った。

 そして、シルフィードの体を凄まじい魔闘気で覆ってゆく。


「いくぞアルカナート! 己の弱さに後悔しながら死ぬがいいっ!!」


 その咆哮と共にアルカナートにバッと跳び向かうと、凄まじい速さで剣を振り下ろした。


 ガキインッ!


「くっ! シルフィード……!」


 それを防いだアルカナートに、シルフィードは更に打ち込んでゆく。

 間断なくアルカナートを襲う剣の乱打は、一撃一撃が必殺の威力を持っている。 


「オォォォォォッ!」

 

 シルフィードが振り下ろしてゆく剣を、連続で受けて止めてゆくアルカナート。

 二人の剣が、ガキインッ! ガキインッ! ガキインッ! と、激しく剣がぶつかり合い火花を散らす中、シルフィードは言い放つ。

 

「アルカナートよ、これが俺の力だ! 俺は……お前など認めぬ!」

「そうかよ、勝手にしやがれ。俺は、俺の意志でテメェを止める」

「ハッ! 止める? 止めるだと? それをすべきはお前自身だろう、アルカナートよ」


 鍔迫り合いをしながら、アルカナートは想いを巡らせた。


「フンッ……ナターシャの事か」

「そうだ。先に言った通り、仮にこの場を切り抜けられたとしても、ナターシャを庇えばお前が勇者でいられなくなる可能性は非常に高い。下手をしたら、国家反逆者として処分されるだろう」


 シルフィードが告げてきた事は正しいが、アルカナートの意志は揺るがない。


「それがどうした。それこそさっき言った通りだぜ。俺は俺の意志でお前を止めて、ナターシャを守る。俺が処分されるかなんて、どうでもいいんだよっ!」


 そう言い放つと同時にバチンッ! と、剣を弾かせシルフィードを退かせたアルカナート。

 その表情には一分の迷いも無い。

 アルカナートにとって処分される事など、本当にどうでもいいのだ。

 それよりも遥かに大切なのは、己の意志を貫く事に他ならない。


「愚かな……そこまでして己の意思を貫いて何になる? 待ち受けているのは破滅しかないのだぞ!」

「分かってねぇな、シルフィード……それが生きるって事だろ」


 アルカナートの体は傷だらけでボロボロだが、不敵な笑みと共に光る眼光には微塵の曇もない。

 だが、それがシルフィードを苛立たせる。 


「……ならば、その意志ごと消滅させてくれるわ! この滅輝乃魔眼最大の力をもってな!」


 シルフィードが咆哮を上げた時だった。


「アルカナート!」


 その声に、ハッと後ろを振り向いたシルフィード。

 その瞳に映ったのは、カミラ達を背に引き連れアルカナートを見つめている、セイラの切ない姿だった。

この場に到着してしまったセイラは、何を思うのか……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ