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(4) 俺、訓練します。

 エフにニマニマとされた後、ステータスの載った金属板を持って騎士団の会議室に行く。

 会議室には騎士団長がいるとエフから聞かされている。

「着きましたよ~」

 エフに連れられて来た会議室は割と狭かった。騎士団中枢のみの会議室なのだろうか。

「お、件の勇者サマがきたようだな。俺はヴェルズ、よろしくな!」

 ガタイの良い青年が歩み寄ってくる。少し気圧されながらも最低限の応答はした。

「ど、どうも……」

「そうカタくなるなって!」

 気を抜けばすぐに相手のペースに持っていかれそうだ。

 金属板を受け取ったヴェルズはそれを眺め、唸る。誰が見ても低いステータスだから唸るのも仕方ない。

「先ずは魔力増強だな。筋力と体力は最悪魔力で補える。賢明がここまであるから魔法を生かした方が良さそうだ」

 騎士団長は言った。大まかな方針が決まったので次は詳細なメニュー決めだ。最初に元々決まっていた魔力を錬成し、使用する訓練、魔力の上限を増やす訓練、どちらもをクリア出来れば物理の強化だそうだ。エフもヴェルズも生き生きと目を輝かせながらメニューの提案をする。すっかり蚊帳の外に出された俺は静かに気配を消す事しか出来なかった。

「ご主人様~、終わりましたよ~」

 エフがようやくこちらに話しかけてきた頃には太陽は最も高く昇っていた。何故かエフのテンションも上がっている。

「ご主人様~? 元気無いようですがとりあえずお昼食べましょ~!」

 ダメだこのメイド、生粋のドSだ……。


 ◆


 昼を食べ終え、ここからは鍛錬に入る。ヴェルズとともに魔力を使う練習からだ。魔法を使えなければ異世界に来た意味もないというもの。言われた通りにやるしかない。

「精神を集中しろ……。体の中にある温もりを感じるんだ……。体温では無い、別の温もりを……」

 だが、さっきからこんな感じでぼんやりとした言葉ばかりで出来そうもない。エフは近くで三角座りをしてこちらを見ている。

 なかなか手こずっている様子に呆れたのか、エフが徐に立ち上がりこちらに寄ってくる。

「ご主人様~。体の真ん中にあるぽかぽかとしたエネルギーを持っていそうな何かの気配~感じませんか~?」

「!」

 エフに言われると確かに何かを感じた。エフも「お~気付いたみたいですね~」と言っている。

「それを~、指先に持ってくるんです~」

 あくまでも感覚論であるので具体的な説明は難しい。だが、エフが言うと何故か出来る。右の手の平に「温もり」がやってくる。

「その調子その調子~。最後はその温もりが炎になるイメージをして~、実際に出しちゃいましょ~」

 炎……炎……。

──ボッ

「出来た……」

「流石ですね~ご主人様~」

 いきなり会話に入ってきて見せ場を奪われたためか、近くで見ていた騎士団長が呆然としているが、とりあえずこれで魔力を使う第一歩を踏み出せた。

 しかし、魔力の絶対量が少ないのでラノベや漫画に出てくるような大魔法は夢のまた夢である。

「じゃあある程度魔力増強だけして今日はお開きといこうか」

 騎士団長の言葉に頷き、また二人に言われた通りにメニューをこなす。本当にこれで魔力が増えるのかは知らないが、やる以外の道はない。

「魔力を手に集めて~祈って魔力を回復して~手に集めた魔力を元の位置に戻して~」

 エフ曰く、容量を増やすにはこの方法が最も確実だそうだ。入らなければ広げちゃえ理論なので、日本で生きてきた俺は割と理解に苦しんだ。

 俺は西日が眩しくなり、目に障るくらいになるまで淡々とよく分からない鍛錬を続けた。


 ◆


「よし、今日はこれくらいでいいだろう! 俺の感覚だがお前の魔力は確実に増えてるぞ」

 こう言われるとやった甲斐があったというもの。しかし、あまりに単調過ぎてどっと疲れが襲ってきた。

「じゃあ~晩御飯に致しましょ~」


 エフに連れられ食堂で夕飯を済ます。ここからは自由と聞いていたのでとりあえず風呂にこ入るとにした。確か自室にあったはずだ。


 自室に戻って初めてクローゼットを開けた。そこには俺のサイズに合わせた服が何着もある。下着はもちろん、練習用、外向き用、リラックス用と目的に合わせた服が丁寧に収納されていた。下着とリラックス用の服を持ち、風呂場に向かった。バスタブもあるので日本に近い形での入浴が出来そうだ。

 体を流し、石鹸を泡立てる。頭に乗せて、頭皮の汚れをゆっくりと掻き取る。シャワーで泡を流せばOKだ。次は体……と別の石鹸に手を伸ばした時、風呂場の戸が音を立てて開いた。開けた主は言わずもがな、

「ご主人様~! 本日はお疲れ様でした~! このエフトゥール、お風呂もお供致します~!」

「ギャーーーーーッ!!」

 逃げたり追い出したりするより早く、エフが抱きついてきた。タオルで隠しているとはいえ状況はマズい。とりあえず自分に引っ付いているメイドを俺から引き離すことが先決だ。

 引き離そうとすれば

「こんな美少女メイドが抱きついていると言うのに嬉しく無いんですか~?」

 とか言ってくる。結局、引き離すことに失敗し、同じ風呂を頂かれることになってしまった。

「まだ体洗ってないでしょ~? お流しします~」

 もうなるようになれ……と声なき声で諦めた。しっかりと体を洗われたあと、エフはさらに誘惑してくる。

「この耳~、このしっぽ~、モフりたくないですか~?」

 結論から言うと、俺は誘惑に負けた。元々猫好きなのだ、負けない方がおかしい。

 バスタブで耳をたくさんモフったあと、俺たちは風呂から上がった。そこでも誘惑され、エフの頭もしっぽも乾かしながらモフった。しっかり堪能した後、それぞれ並んだベッドに入り、俺は意識を手放した。

 なし崩し的に明日からも一緒に入浴することが決まったのは言うまでもない。

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