28話 ー 1st Mission ー
「…… はいっ、て事でまずは高等部の投書を持ってきてみました!」
時は変わって放課後の生徒会室。
正確には、生徒会室内にあるもう一つの部屋にオレ達魔法使い3人は集合していた。
「生徒会室……私、ここで始めて制服に着替えたんですよ、遥希さんっ!」
自慢する様にクイクイッとオレの制服を引っ張りながら誇らしく伝えてくるシャーロット。
約一ヶ月間彼女と過ごしてわかったのだが、シャーロットは嬉しくなったり楽しくなると、周囲にいる家族や友達の袖や裾を引っ張る癖があるらしい。
「あぁ、可愛すぎる」
ついうっかり着替えているシーンを想像してしまった。
うんしょ、うんしょ、と慣れない制服に悪戦苦闘する金髪幼女の姿と言うのは結構来るモノがある。
心にも、下半身にも。
「その前に…… この場に一人、物理的なカウンセリングを受けないといけない生徒がいるようねぇ?」
「なんだ、お前にはオレ達には見えない四人目でも見えてるのか?」
般若の形相でこちらを睨みつけてくる視線をいつもの如くスルー。
「今更だけど、役員でもないオレ達が投書の内容を見てもいいのか?」
「基本的にダメよ。ただ、生徒会長の承認があれば可能なの」
「その生徒会長様はなんと?」
「アイツらなら別にいーんじゃね? って」
「明らかな身内贔屓じゃねェか」
ソシャゲの片手間に軽く返事をしている姿が容易に浮かんだ。
大丈夫かよこの学園。
個人情報とか色々。
「目安箱の中、投書がいっぱいですね。一つ一つの要望に答えるとすれば、かなりの時間がかかってしまいそうです……」
自分が思っていたよりも多くの投書が寄せられていたのか、シャーロットはその数に圧倒されている。
オレもパッと見たところ、2桁では収まりきれないほどのギッチギチ感だ。
「…… そんなことないわ。そうね、例えば……っ、これ見て頂戴」
オレ達の心情を察したのか、凪咲は数ある投書の中から無造作に一枚取り出して見せてきた。
『生徒会長って彼氏とかいないんですか!? by高:3-B name:K.M』
めっちゃ下世話な質問だった。
「あわっ、あわわわっ!? ラブの相談でしょうかっ!? ささ、早速メグさんにお話を伺わないとっ……」
予想外の質問に顔を真っ赤にしながら慌てているシャーロットたん。
ウブですねぇ…。
「この場合、生徒会としての返答はどうするんだ?」
「もちろん却下。返事をするに値しないわ。ただ、『〇〇さんが悩んでいて』とか、個人に関わるようなことは善意からの相談事であれば、今回は受けて行きたいわね」
なるほど、生徒会役員だけでは対処できない理由が分かった気がする。
こりゃ確かに手間暇かかるわな。
「えっと、一先ずメグ先輩に意中の方がいらっしゃらないかを調査しなくちゃ…っ!」
「いやもうその案件はいいから」
まだ間に受けていたのか。
「それじゃ作業を始めるわよ。投書が多いから、まずは投書を大まかに分けていきましょう」
オレ達は投書をざっと見て分類分けしていく。
学園行事に関する投書。
生徒会に関する投書。
部活動に関する投書。
個人的、及び個人に関する投書。
その他の投書。
どーせ、また後で見る羽目になるのでテキトーに振り分けていく。
しかし幾らテキトーとは言え、一瞬は内容を確認しているワケで……
その時点で答える必要ないんじゃね? って言う投書がまぁ出てくるわ出てくるわ……
ホント大丈夫かよ水無星学園。
無言での作業もつまらないので、そんな返答できない投書を偶に読み上げて遊んだ。
「会長のスリーサイズを教えてください」
「却下よそんなの! ってゆうか知らないし」
「あぁ、確か……B:90 W:58 H:88 だ」
「なんで知ってんのよ!?」
「なんで知ってるんですかっ!?」
「なんか話の流れで……スリーサイズいくつって聞いたらあっさり教えてくれたぞ? たかが数字って言ってな」
「くっ、誇れる数字を持つ者は余裕があるわねちくしょう…」
「……わ、私はこれからですしっ」
結構なダメージを受けていた!
ってかシャーロットでも気にするんだな、そういうの。
「会長の好きな下着の色は何色ですか?」
「だから知らないってば!!」
「大人っぽいイメージあるけど、薄桃色系が多いよな」
「いやだからなんで知ってるのよ!?」
「そそそそこまでご存知なのですかっ!?」
「アイツ、見たけりゃ見れば? って言う精神だから、見る機会は結構あるぞ。高いとことか頻繁に登るし、スカート捲れてもあまり気にしないし」
廻流のパンチラを逐一覚えているオレもオレだが。
「生徒会役員の東雲さんに……」
「えっ、私!?」
「……………」
「な、何か言いなさいよ……」
「いや、これは必要ないわ」
破った上にグシャリと投書を丸めてゴミ箱へ捨てた。
「何が書いてあったの?」
「ポニーテール以外の髪型も見てみたいってさ」
冷たくそう返すと、凪咲も「あっそ」と言って作業に戻った。
そこからはオレも余計なことは言わずに黙って作業に没頭した。
しかし、先程破り捨てた投書が頭の中でこびり付いたように離れない。
『東雲さんに伝えたいことがあります。ずっと前から好きでした。勇気を出せず、この目安箱へと入れてしまいましたが、いずれ、必ず貴女に思いを打ち明けます。 高:2-D name:N.Y』
何が他の髪型が見てみたいだ。
よく咄嗟にもそんな嘘を付けたわオレ。
さっきの投書に書いてあった本当の内容は、凪咲に対するラブレターだった。
イライラする。
投書したN.Y氏にでも凪咲本人にでもない。
こんな事でモヤモヤしている自分に腹が立ってしかたがなかった。
こんなのオレのキャラじゃないだろ。
飄々と「モテ子さんは生徒会以外でもお忙しいですね」と皮肉の一つでも言う人間なのに。
「……ちょっ! ハル、雑になり過ぎよ? 投書をあちこちに投げないでよ」
「おっと……すまん」
凪咲の一声のおかげで、夢の中から引き上げられたような気分。
二人にバレない様に深呼吸をした。
冷静になってみればなんてことは無い。
コイツが誰と付き合おうが、誰を好きだろうが関係ない。
結局は凪咲自身で決めることなのだから、オレがどう考えたところで何もならないのだから。
……しかし、この不安にも似た気持ちは何なのだろうか。
「あのさ、ナ……」
「いよしっ! 取り敢えず仕分けは終わったわね!」
オレの言葉を遮る様に凪咲がウーンと伸びをしながら言った。
手元を見てみると、いつのまにかそれぞれが持っていた投書の束は、見事に机の中心に分けられている。
どうやら存外集中出来ていたみたいだ。
一体、オレは何を言おうとしていたのだろう?
自分でもよくわからないので、取り敢えず切り替えることにしよう。
「で、分けたのはいいが、どれから手をつけていく? やっぱ学園関係のものか?」
「学園行事と生徒会に関するものは、きちんと生徒会で対処するから……まずは部活動関連ね。最近は部活動の視察ができてなかったから丁度いいかも」
凪咲は部活動に関する投書をペラペラと見る。
「……うん、やっぱりこれから運動部は大会が多く開催されるだろうし、文化部の方もコンクールとか発表会が控えているみたいね」
「どの様な内容が多いんでしょうか?」
「当たり前と言えば当たり前だけど、部費を増やしてって話が多いわね」
だた……と、凪咲が難しい顔をする。
「これはあくまでも噂に過ぎないのだけれど、学園側は部活動それぞれの部費を増やす代わりに、成績を残せていない、実績を上げていない部活動を同好会に格下げして部費の調整を行うって聞いたことがあるわ」
「ふーん、因みに同好会に格下げになったらどうなるんだ?」
「部費は降りなくなるし、運動部の場合は公式な大会に出場出来なくなるわ。一応活動自体はできると思うけれど、今まで出来ていたことが制限されてしまうことは確かよ」
学園側も色々大変なんだな。
紙芝居部は別に同好会になってもあまり変わらんし、今のオレには関係のない話だろう。
「それでは…… 結局私たちは何から始めれば良いのでしょうか」
イマイチ理解できていないシャーロットは首をかしげるばかりだ。
「そうね。まずは、分かりやすいとこから行きましょう!」
そう言って、凪咲は部活動関連の投書から一枚選んで机に置いた。
最初のミッションは……… バレー部からの依頼だった。




