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夜空を映したユメsteXllar -ステラ-  作者: 渚桜
ゲームスタート
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27話 ー 凪咲が目指す魔法使い ー

 




「私、奉仕活動を始めるっ!」


「やれば?」



 オレは購買部で買ったアンパンを齧りる。

 うん、うまい。


 星見祭が終わり、ダラダラ過ごした日曜日を経て月曜日。

 梅雨入りが近い今日この頃だが、島の天気は雨雲のことなんかすっかり忘れたような青空が広がっているお昼の空の下、オレ・凪咲・シャーロットは学園の屋上で優雅な昼休みを過ごしていた。




「違うわよ。今日から生徒会に寄せられてくる投書の処理を頑張るからアンタも手伝ってって言ってるのよ!」


「いや言ってねェだろ」




 そんな中、焼きそばパンを頬張っていた凪咲が突然の決意表明をしたのだ。

 あーあー、頬や唇に青のり付けちゃって。



「お前、青のり……ほれ、ここと、ここっと」


「………ぁぅっ!?!?!?」



 指摘すると話が長くなりそうだったので、オレが直接青のりでデコレーションされた凪咲の頬と唇を指で拭ってやる。

 普段しっかりしている反動からか、こうして外で身内しかいない時の凪咲はおっちょこちょいな部分を見せることがある。


 シャーロットがいるにもかかわらず醜態を晒すという事は、それ程までにシャーロットを信頼している証拠なのかも知れない。

 そう思うと、シャーロットを助けたのがオレ達で良かったと心底思う。



「…… で、奉仕と投書がなんだって? …… ペロッ」


「あ、あ、ん、ああああアンタ、あん…っ!!」


 あん?


「遥希さんっ、イエローカードですっ!!」



 と、パック牛乳をチューチューと吸っていたシャーロットは、胸のポケットからトレーディングカードサイズの黄色いカードをオレに突き付けてきた。

 彼女は普段声を荒げる事がないので、こんな怒りや羞恥を含んだ大きな声を聞くのは初めてだ。

 ってか、なんでそんなカードを持って…… あっ、魔法で出しやがったのかコイツっ!?


 注意してやろうと思ったが、オレ達以外に人はいない…… 恐らくシャーロットもそれを分かった上で魔法を使ったのだろう。

 加えて、注意したところで「元々持ってたんですぅ〜っ!」と言われれば証拠がないので追求する事ができない。

 小癪な小娘め……… お茶目なところも可愛いやんけ。



「そもそも、なんでオレは反則判定されたんだよ」


「おっ、女の子の頬に…… (あまつさ)え唇にいきなり触れるなんてっ、しかもそれを舐めっ…… はっ、はっ、ハレンチですっ!!」


「コクコクコクコクっ!!(何度も高速で頷いている)」



 シャーロットは見ちゃいけないものを見てしまったと羞恥に満ちた表情。

 そして顔を真っ赤にしてヘドバンをかましながら指が触れた部分を抑えている凪咲。

 ただなぁ…… 他のヤツならいざ知らず、凪咲に対しては今更な行為である。



「昔はよく口元拭いてやったりしてたろ? もっと言えば、風呂で身体を洗ったり拭いてやったりしャベルっ!?」


「何年前の話よっ! ……じゃなくてっ、ちょっと、有る事無い事言わないでくれる!? 違うのよシャル、コイツ今ちょっと頭が悪くって……」



 話の途中で死角から容赦のない右ストレートがオレの頬を抉った。

 その衝撃で、お昼のお供をしていたバナナミルク (パックジュース) と一緒に、5月の陽気な日差しが照らす屋上とキッスを交わす。

 オレが何をしたってんだ……… したか。



「ビックリしたっ……、今からマジメな話しようとしてんのになんてコトすんのよコノッ!」



 ゲシっと倒れたオレの尻を踏みつける。

 マジメな話を聞いてもらう人の態度とは思えない。



「真剣な話をする人間が青のり付けてたらシュールだと思っ」


「もう一発必要かしらぁ?」


「何でもないっス」


「…… はぁもぅ、まだ心臓がドキドキ言ってる…… はぅぅっ」



 ダメだ、打つ手は山程あるのに何故か体が動かない。

 これは恐怖の所為か、或いは殴られた箇所が悪かったか。

 恐らくはその両方だろう。



「あー痛っ、クソが…… で、奉仕活動が何だって?」



 取り敢えず床から立ち上がって、改めてベンチに座る。



「ゴホンっ…… じゃ、改めて。ハル、後夜祭の時に言ってたじゃない? 朱里亜さんのような魔法使いにはどうすれば良いかって」


「あぁ……。『魔法は使うものじゃなくて、何かをしてあげたい "想いの力" が自然と "魔法" になる』…… その為には人の役に立つことをしなさいって話か」



 あの日、凪咲が愚痴っていた時に思い出した婆さんの言葉。



「……ステキな教えですね。お話に聞くジュリアさんと直接会った事はありませんが、その教え一つ取ってもジュリアさんの魔法使いとしての在り方が伝わって来ますっ」



 手を胸に当ててうっとりするシャーロットの瞳は羨望の眼差しになっていた。

 彼女も人の為になれる魔法使いを目指している者として、感銘を受ける部分があったのだろう。



「生徒会に寄せられて来る投書は様々なんだけど、私達が対応出来るのって、生徒会に直接持って来られる案件だけなのよ」


「早々に処理しないと行けない用事ってことか」


「そう。で、私が今言っている投書ってのは、各校舎の一階に設置されている生徒用の目安箱の話ね」


「目安箱って、確か江戸幕府8代将軍の徳川吉宗が作った町の人々の要望や不満を書かせた紙を木箱に入れさせて、月3度回収し将軍自ら目を通したと言われているあの目安箱ですか?」


「えっそうなんだ、知らなかったわ…」


「コイツ、たまーにオレ達より日本人してるからなぁ」



 てかそんなに前からあったんだ目安箱。

 明日から使えるシャーロット先生の豆知識である。



「まぁそんな感じ。生徒が感じた要望や不満、或いは個人からの質問や相談と言った内容を書いて投書出来るボックスを設置してあってね、生徒ならば誰でも利用する事が出来るのよ」


「でも話を聞く限り、生徒会では対処してないんだろ?」


「もちろん目は通すわ。必要だと思ったことや、同じ意見が多い案件なんかは対処するんだけど」



 と、一旦話を区切ってコーラをグイッと飲む。

 その姿は妙にカッコよかった。



「……っハァっ!一方で、個人から寄せられるお悩み相談なんかには手をつけられていないの」


「そこで奉仕活動か……」


「ジュリアさんの教え、ですね!」


「そうよ。生徒会に入っただけじゃダメ!これも魔法使いとしての修行なのよ!」



 空になったコーラの空き缶をグシャリと握りつぶしながら気合いを入れる我が妹。

 その横で「素晴らしいですっ!」と拍手を送っている我が……我が……なんだ? 娘? 妹?

 我が家の天使だ。



「差し当たり、今日から早速行動に出ようかと思うんだけれど、どうかしら!?」


「おう、頑張れよ」


「だから、アンタも一緒にやるんだって」


「なんで?」


「アンタが言ったんじゃん。オレもサポートするからって」



 はぁ?

 オレがいつそんな事言ったよ?

 ページを振り返ってみる。

 …… あー言ってる、23話でしっかりと言ってるわ。

 考えなしに発言するんじゃなかった。



「あのあのっ、私もお手伝いしてもよろしいでしょうかっ? 少しでもナギさんのお役に立ちたいです!」



 胸の前で握り拳を作ったシャーロットがフンスと息巻いた。



「シャルぅ……あたなのそんな優しい気持ちが、誰かのためを思う心が、あなたの魔法使いとしての実力を物語っているのかもね?」


「… ?」


「可愛いってことよっ! あーもうっ、ありがとうねぇシャルーっ!!」


「あぷっ、な、ナギさん… 苦しいですぅ〜っ!?」



 換気余ったナギはシャーロットをギュッと抱きしめた。

 オレにはしてくれないのかしら?

 してくれないのかしらっ!?



「……アンタにはしないわよ?」



 シャーロットのマネをしてもダメだったか。



「ってことだから、今日の放課後に生徒会へ集合しましょう! よろしくねハル、シャル!」


「……言っちまったもんはしゃーねーか」


「はいっ! 頑張りますね!」




 今ここに、3人だけの奉仕活動団体が結束されたのだった。




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