03.5 初対面の案内人と初めてのクエスト【後編】
ゴブリンを探し、私はレオのあとを追って森の奥へ進んでいた。
進むにつれて木々の間隔が狭くなり、周囲の光も少しずつ弱くなっていく。
明るかった森の景色は、いつの間にか薄暗い緑色へ変わっていた。
鳥の声に混じって、遠くから何かが木を叩くような音が聞こえてくる。
レオが片手を上げた。
その合図を見て、私はすぐに足を止める。
「います」
声を落としたレオが、木々の向こうを示した。
私は音を立てないように近づき、太い木の陰からそっと様子をうかがう。
少し開けた場所に、人間の子どもほどの背丈をした緑色のモンスターが2体いた。
1体は短い剣を持ち、もう1体は粗末な木の棍棒を手にしている。
頭上に表示された名前は、どちらもゴブリン。
レベルは5。
スライムとは違い、2体は互いに声を交わしながら周囲を警戒していた。
1体ずつなら、先ほどまでのモンスターと同じように、動きを見ながら戦えるかもしれない。
けれど、同時に2体を相手にするとなれば話は別だ。
片方の攻撃を避けたところへ、もう片方から攻撃される可能性がある。
どうすればいいのか分からず、私は思わずレオを見上げた。
「……2匹いるんですけど」
「いますね」
「これ、同時に戦うんですか?」
レオはすぐには答えず、ゴブリンたちの位置と周囲の地形を確認した。
助けを求めれば、きっと簡単に倒してくれる。
けれど、レオは武器に手をかけようとはしなかった。
「ラムさんは、どうしたいですか?」
まさか、逆に聞かれるとは思っていなかった。
あれ?
私、今日このゲームを始めたばかりの初心者だったはずなのだが。
さっきまでは、SPの管理から戦い方まで、ひとつずつ丁寧に教えてくれていた。それなのに、どうして急に自分で考えろという流れになっているのだろう。
もしかしてこの人、王子様みたいな見た目に反して、意外とスパルタなのでは?
「わ、私が決めるんですか?」
「はい」
レオは迷うことなく答えた。
「私、初心者なんですけど……」
「知っています」
落ち着いた声で言い切られてしまった。
いや、知っているなら、もう少し優しく答えを教えてくれてもいいのでは?
そんな私の心を見透かしたように、レオが言葉を続ける。
「ここまでの戦いを見て、ラムさんなら自分で考えて動けると思ったので」
「私が……?」
「もちろん、危なくなればすぐにサポートします」
コバルトブルーの瞳が、まっすぐに私を見ていた。
試すために突き放しているわけではない。
本当に私ならできると思って、答えを待ってくれている。
そう気づいた瞬間、緊張とは少し違う何かに胸が跳ねた。
出会ったばかりの人から向けられた期待が、嬉しい。けれど、同じくらい落ち着かない。
「……わかりました。少し考えてみます」
私はもう一度、2体のゴブリンへ目を向けた。
正面から近づけば、間違いなく両方に気づかれる。
なら、1体だけをこちらへ誘い出す方法を考えたほうがいい。
周囲には太い木が並び、地面には石や折れた枝が落ちている。身を隠せる場所も多い。
誰かから正解を教えてもらうのではなく、自分で戦い方を選ぶ初めての戦闘。
速くなる鼓動を感じながら、私は使えそうなものがないか、慎重に周囲を見回した。
1体ずつ戦うには、どうすればいいのだろう。
背後から近づく?
いや、それではただの奇襲になるだけで、2体を引き離すことはできない。
それに、気づかれる前に1体を倒しきれるほど、私の攻撃力は高くない。さっきのスライムにさえ、あれだけ時間がかかったのだ。
なら、何かを使って片方だけの注意を引く?
そう考えながら足元を見ると、地面にいくつもの小石が転がっていた。
これを投げて、どちらか1体だけがこちらへ来てくれれば、そのまま少し離れた場所まで誘導して戦えるかもしれない。
問題は、そんなに都合よく片方だけが反応してくれるのか、ということだけれど。
私はしゃがんで小石を1つ拾うと、レオに見せた。
「あの、この小石を片方に当ててみるのはどうでしょう?」
「小石を?」
「はい。それで当てられた方だけがこっちに来てくれたら、少し離れたところまで誘導して、1体ずつ戦えるかなって……」
口に出してみたものの、本当にそんな簡単にいくのだろうか。
初心者の思いつきにしては、あまりにも安直な気がしてきた。
けれど、レオはすぐに否定せず、ゴブリンたちとの距離を確かめていた。
「いいと思います。試してみましょう」
「ほ、本当ですか?」
「はい。ただ、音や動きに反応して、2体とも向かってくる可能性はあります」
やっぱり、そう都合よくはいかないらしい。
「そのときは……どうすれば?」
「1体は俺が止めます。ラムさんは、自分が狙った方に集中してください」
まるで、何が起きても問題ないと言うような声だった。
その落ち着きに、強張っていた肩から少しだけ力が抜ける。
本当に私だけを戦わせて、放っておくつもりではなかったらしい。
初心者相手に急にスパルタになったのかと思ったけれど、失敗したときのことまで考えたうえで、私に任せてくれているのだ。
「……わかりました。やってみます」
私は拾った小石を握り、2体のゴブリンへ目を向けた。
狙うのは、こちらに少しだけ近い位置にいる、棍棒を持った方。
外せば2体とも気づくかもしれない。
そう思うと急に手のひらが冷たくなったけれど、すぐそばにレオがいる。
私は小さく息を吸い、狙いを定めた。
私は拾った小石を棍棒を持ったゴブリンの近くを狙った。
直接ぶつける必要はない。
片方だけが気づくように、できるだけ近くへ落とす。
力を入れすぎないように気をつけながら、慎重に小石を投げた。
小石は地面を跳ね、狙っていたゴブリンの少し後ろに落ちる。
カツン、と硬い音が森の中に響いた。
2体のゴブリンが同時に動きを止める。
しまった。
もしかして、両方に気づかれた?
思わず息を止めて見守っていると、棍棒を持ったゴブリンだけが音のした方向へ顔を向けた。
隣にいた剣持ちのゴブリンは周囲を少し見回したものの、すぐに興味を失ったように元の場所へ戻っていく。
一方、棍棒を持った方は警戒しながら、ゆっくりとこちらへ近づき始めた。
き、来た……!
本当に1体だけ、こちらへ向かってきている。
作戦成功だ。
嬉しさのあまり声を出しそうになった私へ、レオが小さな声で告げる。
「まだです。もう少し引きつけましょう」
「は、はい……」
慌てて口を閉じ、片手剣の柄を握る。
ゴブリンは首を左右に動かしながら、少しずつ仲間との距離を広げていった。
もう少し。
あと少しだけ。
十分に離れたところで、レオが短く告げる。
「今です」
私は木の陰から飛び出し、片手剣を構えた。
その動きに気づいたゴブリンが、甲高い声を上げる。棍棒を振りかぶると、地面を蹴って一気にこちらへ駆けてきた。
――待って。
思っていたより、かなり速い!
作戦が上手くいったことを喜ぶ暇もなく、初めてのゴブリン戦が始まった。
思っていたよりも素早い動きと、迷いのない棍棒の振り。
けれど、私がやることは変わらない。
相手の動きをよく見て、攻撃を避ける。そして、できた隙にこちらの攻撃を当てる。
時間がかかっても構わない。
絶対に諦めない。
このゴブリンは、自分の力で倒したい。
振り下ろされた棍棒を、横へ飛んで避ける。
直後にSPが少し減ったけれど、今は気にしている余裕がない。
ゴブリンの脇をすり抜けながら、片手剣を振るう。刃はその横腹を捉え、頭上に表示されたHPをわずかに減らした。
当たった。
でも、まだほんの少ししか減っていない。
ゴブリンはこちらを振り返ると、今度は棍棒を横薙ぎに振るってきた。
「わっ……!」
慌てて後ろへ下がったものの、避けきれなかった棍棒が肩をかすめる。
鈍い衝撃とともに、私のHPが減った。
痛みは現実よりも弱く調整されているはずなのに、攻撃を受けた恐怖までは消してくれない。
やっぱり、スライムとは全然違う。
動きも速いし、こちらの動きに合わせて攻撃を変えてくる。
避けているつもりでも、何度か棍棒が腕や身体をかすめ、そのたびにHPが少しずつ削られていった。
それでも、こちらの攻撃も当たっている。
避けて、斬る。
距離を取り、また動きを見る。
棍棒が振られた瞬間に横へ回り込み、空いた背中へ剣を当てる。
少しずつではあるけれど、ゴブリンのHPは確実に減っていた。
「まだ続けられますか?」
少し離れた場所から、レオの声が届く。
その手はいつでも武器を抜ける位置にある。
私が危なくなれば、本当にすぐ助けてくれるつもりなのだろう。
それでも、今はまだ頼りたくなかった。
「だ、大丈夫です! まだいけます!」
答えた直後、ゴブリンが棍棒を振り上げる。
私は反射的に回避しようとして、寸前で踏みとどまった。
同じように避け続けていたせいで、SPが半分近くまで減っている。
それに、この動きは何度か見た。
棍棒を大きく振り上げたあとは、必ず正面へ振り下ろしてくる。
なら、攻撃の届く場所から少しずれるだけでいい。
大きく飛ばなくても、避けられる。
棍棒が迫る直前、私は身体を横へずらした。
激しい音を立てて、棍棒が地面を叩く。
避けられた。
しかも、SPはほとんど減っていない。
ゴブリンは棍棒を地面へ叩きつけた姿勢のまま、すぐには動けずにいる。
今しかない。
私は残っている力を込めて地面を蹴った。
SPを消費して一気に踏み込み、片手剣をゴブリンへ強く振り下ろす。
刃が身体を捉えた瞬間、ゴブリンのHPが一気に消えた。
ゴブリンは短い声を上げ、その身体を光の粒へと変えていく。
目の前に、討伐を知らせる表示が現れた。
『ゴブリンを1体討伐しました』
「や……」
その文字を見た途端、張り詰めていた力が抜けていく。
「やった……! 倒せた!」
時間はかかった。
攻撃も何度か受けてしまった。
それでも、レオに助けてもらわず、自分の力で倒すことができた。
嬉しくなって振り返ると、レオはいつもの落ち着いた表情のまま、こちらを見ていた。
「お見事です」
たった一言だった。
それなのに、なぜか胸の奥がくすぐったくなった。
1匹目を倒したあと、私はレオから受け取っていた回復薬を使った。
減っていたHPが戻っていくのを確認してから、残っていたゴブリンのもとへ向かう。
2匹目は、先ほどと同じように小石を使って仲間から引き離した。
最初の戦いで動きを見ていたおかげか、今度は棍棒が振り下ろされる直前に身体をずらし、無駄にSPを使わず回避することができた。
攻撃を受けた回数も、1匹目より少ない。
3匹目は短い剣を持っていた。
棍棒よりも攻撃の間隔が短く、何度か剣を盾で受けることになったけれど、慌てて回避を繰り返すことはなかった。
4匹目になる頃には、少しずつ戦い方が分かってきた。
相手の動きを見て、避ける。
隙ができたら攻撃する。
危なくなったら無理に追わず、距離を取ってSPの回復を待つ。
決して派手な戦い方ではない。
倒すまでに時間もかかっている。
それでも、確実にゴブリンのHPを削り、1匹ずつ倒すことができていた。
そして、残るは最後の1匹。
『ゴブリン討伐 4/5』
表示された進行状況を見て、私は片手剣を握り直した。
「あと1匹……」
初めてゴブリンを見たときは、2匹いるだけでどう戦えばいいのか分からなかった。
それなのに、今は早く最後の1匹と戦ってみたいと思っている。
自分でも驚くほど、緊張より楽しさの方が大きくなっていた。
「少し休みますか?」
レオに尋ねられ、自分のHPとSPを確認する。
HPは少し減っているけれど、まだ余裕がある。SPもすでに半分以上まで回復していた。
「いえ、このまま行きたいです」
「分かりました」
レオはそれ以上何も言わず、静かに一歩後ろへ下がった。
最後も私に任せてくれるらしい。
残っていたゴブリンは、短い剣と小さな盾を持っていた。
これまでの相手とは違い、こちらの攻撃を防ぐことができるようだ。
私は小石を投げて注意を引き、仲間のいない場所まで誘い出す。
近づいてきたゴブリンが短い剣を振るう。
私はその攻撃を横へ避け、すぐに片手剣で反撃した。
しかし、刃は小さな盾に防がれてしまう。
硬い音が響き、剣を持つ手に衝撃が伝わった。
「やっぱり、防ぐよね……!」
ゴブリンは盾を前に出したまま、再び剣を振ってくる。
回避して攻撃しても、盾に防がれる。
正面から何度斬りかかっても、これではSPと体力を消耗するだけだ。
なら、盾を構えていられない瞬間を狙うしかない。
私はすぐに攻撃するのをやめ、ゴブリンの動きを見ることにした。
短い剣を振るうとき、盾がわずかに外側へ動く。
その瞬間だけ、身体の正面が空いていた。
狙うなら、そこだ。
ゴブリンが地面を蹴り、こちらへ踏み込んでくる。
振り下ろされる剣をギリギリまで引きつけ、私は横へ回避した。
SPが減る。
けれど、まだ強攻撃を出せるだけの余裕は残っている。
ゴブリンが私を追って向きを変えた。
同時に、盾が身体の正面へ戻っていく。
間に合わない。
そう思った瞬間、私は考えるより先に左手を動かしていた。
持っていた盾を、ゴブリンの盾へ思い切りぶつける。
「えいっ!」
予想していなかった反撃だったのか、ゴブリンの身体が大きくよろめいた。
その手から盾がずれ、正面が完全に空く。
今だ。
残っているSPを使い、私は一気に踏み込んだ。
力を込めた片手剣を、ゴブリンへ振り下ろす。
攻撃が身体を捉え、残っていたHPをすべて削りきった。
ゴブリンの姿が光の粒となり、森の中へ消えていく。
直後、目の前に大きな表示が現れた。
『ゴブリン討伐 5/5』
『チュートリアルクエストを達成しました』
「お、終わった……?」
表示を何度も確かめる。
間違いなく5匹になっている。
最後まで、全部自分で倒せた。
実感した途端、嬉しさが一気に込み上げてきた。
「終わった! できました! レオさん、私、全部倒せました!」
興奮したまま振り返ると、レオはいつもと変わらない落ち着いた様子で立っていた。
けれど、その表情はほんの少しだけ柔らかく見えた。
「おめでとうございます」
「ありがとうございます!」
「最後は、盾も使えていましたね」
「あれは、その……無我夢中で」
自分でも、盾をぶつけるとは思っていなかった。
あれが正しい使い方だったのかも分からない。
「でも、上手くいったので問題ありません」
「そ、そういうものなんですか?」
「勝てたなら、今はそれで十分です」
簡単に言ってくれるけれど、ここまで来るのは大変だった。
私は息を整えながら、少しだけレオを睨む。
「初心者に自分で作戦を考えさせるなんて、結構スパルタですよね」
「すみません」
素直に謝られてしまい、逆に困ってしまう。
「い、いえ。怒っているわけではないんですけど……」
「ラムさんが楽しそうだったので、自分で考えた方がいいと思いました」
「私、そんなに楽しそうでした?」
「はい。最初のモンスターを倒したときから」
どうやら、思っていた以上に顔へ出ていたらしい。
恥ずかしくなって視線を逸らした、そのときだった。
『レオからフレンド申請が届きました』
目の前に突然現れた表示に、私は瞬きを繰り返した。
「え?」
案内を頼まれたから、今日だけ一緒にいてくれたのだと思っていた。
それなのに、どうしてフレンド申請が?
「今日の案内は、これで終わりですよね?」
「そうですね」
「じゃあ、これは……?」
表示とレオを交互に見る私へ、彼は変わらない口調で答えた。
「また一緒に遊びたいと思ったので」
「私と、ですか?」
「はい。迷惑でしたか?」
「い、いえ! そんなことないです!」
慌てて『承認』を押す。
すぐにフレンド一覧へ『レオ』の名前が追加された。
今日始めたばかりのゲームで、もう新しいフレンドができてしまった。
しかも、初対面の私に最後まで付き合ってくれた、少し不思議だけれど優しい人。
「これからも、よろしくお願いします」
レオがそう言って、私をまっすぐに見つめる。
そのコバルトブルーの瞳から目を逸らしながら、私は小さくうなずいた。
「……こちらこそ、よろしくお願いします」
フレンド登録を終えた私たちは、クエストを終えて始まりの街へ戻ってきた。
街の門を抜けると、森の中とは違う賑やかな声が聞こえてくる。
初めてのクエストも無事に終わった。
ゴブリンも、自分の力で5匹倒せた。
それどころか、新しいフレンドまでできた。
友人に頼まれて渋々始めたオンラインRPGだったけれど、思っていたよりもずっと楽しいかもしれない。
そんなことを考えながらレオと並んで歩いていると、前方から聞き慣れた声がした。
「ラムー!」
前方から聞き慣れた声がした。
現実とほとんど変わらない姿にしていたから、ユキもすぐに私を見つけられたのだろう。
声のした方へ振り向くと、事前に送ってもらったアバター画像と同じ白金色の髪を揺らしながら、1人の女性がこちらへ駆けてきていた。
VRの中で直接会うのは初めてだけれど、聞き慣れた声とその姿を間違えるはずがない。
ユキだ。
「ユキ!」
「ごめん! 急な用事がやっと終わって……!」
私の前まで来たユキは、言葉の途中で急に動きを止めた。
その視線が、私の隣にいるレオへ向けられる。
「どうしたの?」
ユキは答えない。
目を大きく見開いたまま、レオの顔をじっと見つめている。
それから何度か私とレオを見比べたあと、震える指で彼を示した。
「レ、レオ!?」
突然大きな声を出され、周囲のプレイヤーたちまでこちらを振り返った。
「え? ユキ、レオさんのこと知ってるの?」
「知ってるっていうか、なんでレオさんがラムと一緒にいるの!?」
「なんでって、ユキが出してくれた募集を見て、案内に来てくれたんだよ」
「私の募集を、レオさんが引き受けたの!?」
「うん。街のお店を案内してもらって、チュートリアルクエストにも付き合ってもらったの」
「最後まで?」
「最後まで」
ユキの顔から、みるみるうちに血の気が引いていく。
募集した本人なのに、どうしてそこまで驚いているのだろう。
「それで、さっきフレンドにもなってもらった」
「フレンド!?」
ユキの声が、さらに大きくなった。
「えっ、なに? そんなに驚くこと?」
「驚くに決まってるでしょ! 募集が受理された通知だけは見たけど、急いでたから、誰が引き受けてくれたのかまでは確認できてなかったの!」
「そうだったの?」
「誰か親切な人が来てくれたんだとは思ってたけど、それがまさか、レオさんだなんて思うわけないじゃん!」
話がまったく見えない。
レオという名前が、それほど珍しいのだろうか。
助けを求めるように隣を見ると、レオはユキの反応を気にした様子もなく、いつもと変わらない表情で立っていた。
「ユキさんで合っていますか?」
「は、はい! 初めまして! 募集を出したユキです!」
さっきまでの勢いはどこへ行ったのか。
ユキは急に姿勢を正し、緊張した様子で頭を下げた。
「ラムさんの案内は終わりました。チュートリアルクエストも無事に達成しています」
「あ、ありがとうございます! まさかレオさんが引き受けてくださるなんて……」
「あの、ちょっと待って」
2人の会話についていけず、私は間に入った。
「ユキは、レオさんと知り合いなの?」
「知り合いなわけないでしょ!」
ユキは即座に否定した。
「じゃあ、どうして知ってるの?」
私が尋ねると、ユキは信じられないものを見るような目をこちらへ向けた。
「知らないの?」
「今日初めて会ったんだから、知ってるわけないでしょ」
「そうじゃなくて!」
ユキが私の両肩をつかむ。
「レオさんは、Vividの個人ランキング1位だよ!」
「……え?」
「大会にも出てる有名なプロゲーマー! Vividをやっていて、レオさんを知らないプレイヤーなんてほとんどいないから!」
個人ランキング1位。
有名なプロゲーマー。
聞き慣れない言葉を頭の中で繰り返しながら、私はゆっくりとレオを見上げた。
「レオさん……プロゲーマーなんですか?」
「はい」
あまりにもあっさりと認められ、数秒遅れてその意味を理解する。
「聞いてないんですけど!?」
「聞かれなかったので」
確かに聞いてはいない。
聞いてはいないけれど、普通は最初に教えてくれてもいいのではないだろうか。
「プロゲーマー!? 個人ランキング1位!?」
私の声が、初心者広場に大きく響き渡った。
試行錯誤の日々です。紅桜歌です。
なんとか、クエスト達成から友人の登場までこれました。
そして、少しずつ文が長めになっているような。
読みにくかったらすみません。
そして、最後までお付き合いありがとうございました。
次はどこまで突き進めるのか、そして、このままラムはどんなプレイヤーになっていくのか。
書き続けたいと思います。




