02 王子様と初めてのパーティー!?
「ユキさんが出していた初心者案内の募集を見て来たんだけど、友達のラムさん?」
見た目から想像していたよりも低い声だった。
落ち着いていて、耳にすっと入ってくる。聞いているだけで、不思議と心地よく感じる声だ。
――では、なくて。
突然、知らない男の人から声をかけられたことに戸惑っている場合ではない。
友人であるユキの名前だけでなく、私の名前まで出てきた。ということは、この人がユキの言っていた案内役なのだろう。
声が出てこないまま、私はコクコクとうなずいた。
私の反応を確認すると、男はわずかに表情を和らげた。
「よろしく。俺の名前はレオ。ラム、、さんは初心者って言ってたけど、ゲーム自体も?」
途中で妙な間が空いた。
呼び捨てにするべきか迷って、慌てて“さん”を付け足したように聞こえる。
―
王子様のように整った見た目のせいで、もっと人慣れしているのかと思っていた。けれど、もしかすると、この人も初対面の相手と話すのが得意ではないのかもしれない。
そう考えると、ほんの少しだけ緊張が和らいだ。
「あ、、それは、こういうオンライン系はしたことなくて。それに、このワールドはいろんなこと出来るんですよね?」
「そうだね。まずはラムさんがやりたいことするのがいいと思うけど。」
やりたいこと。
そう言われても、すぐには思い浮かばない。
そもそも私は、ユキにどうしても一緒に遊びたいとお願いされて始めただけだ。
自分から興味を持って選んだわけではない。
だからといって、それを正直に言ってしまえば、わざわざ案内を引き受けてくれたレオにまで迷惑をかけてしまう気がした。
せめて基本くらいは覚えたほうがいいだろう。
「そうですね。初心者がやるチュートリアルとかお店とか見たいかもです。」
「わかった。なら、パーティーを一時的に組もう。その方が効率があがるし。」
一時的に。
その言葉に、少しだけ安心する。
今日の案内が終わるまでの付き合いだと思えば、知らない人と行動する緊張にも耐えられそうだった。
レオが何もない空間へ手を伸ばす。
本人にしか見えないメニュー画面を操作しているらしく、その指先が慣れた様子で宙を滑っていく。
「チュートリアルやってからじゃないんですね。」
普通なら、基本操作をすべて覚えてから、ほかのプレイヤーと行動するものだと思っていた。
「そう。このゲームは人気が上がってから始める人が爆増してそこから初心者に優しいシステムが追加されたみたいだね。」
レオは目の前の何かを確認しながら、小さくつぶやいた。
「ソロが多いから俺も今確認した」
聞き返そうとしたとき、軽やかな通知音が鳴った。
半透明のウインドウが、私の目の前に浮かび上がる。
『レオからパーティー申請が届きました』
その下に、承認と拒否、二つの選択肢が並んでいる。
パーティーへ入れば、メンバー同士で位置や体力を確認できるらしい。説明を一通り読んでから、私は恐る恐る指を伸ばした。
『承認』
触れた瞬間、視界の端に新しい表示が追加された。
自分の名前と体力。その下には、レオの名前と体力が並んでいる。
彼の名前の隣には、見慣れない金色の紋章が浮かんでいた。
何を意味するものなのかは分からない。
装備か、称号のようなものだろうか。
「あ、ありがとうございます。よろしくお願いします!」
少し遅れて頭を下げると、レオは短く答えた。
「よろしく」
こうして私は、初めてのオンラインRPGで、名前以外は何も知らない男とパーティーを組むことに「ユキさんから連絡がきて、案内してくれって来たんだけど、ユキさんの友達のラムさん?」
見た目から想像していたよりも低い声だった。
落ち着いていて、耳にすっと入ってくる。聞いているだけで、不思議と心地よく感じる声だ。
――では、なくて。
突然、知らない男の人から声をかけられたことに戸惑っている場合ではない。
友人であるユキの名前だけでなく、私の名前まで出てきた。ということは、この人がユキの言っていた案内役なのだろう。
声が出てこないまま、私はコクコクとうなずいた。
私の反応を確認すると、男はわずかに表情を和らげた。
「よろしく。俺の名前はレオ。ラム、、さんは初心者って言ってたけど、ゲーム自体も?」
途中で妙な間が空いた。
呼び捨てにするべきか迷って、慌てて“さん”を付け足したように聞こえる。
王子様のように整った見た目のせいで、もっと人慣れしているのかと思っていた。けれど、もしかすると、この人も初対面の相手と話すのが得意ではないのかもしれない。
そう考えると、ほんの少しだけ緊張が和らいだ。
「あ、、それは、こういうオンライン系はしたことなくて。それに、このワールドはいろんなこと出来るんですよね?」
「そうだね。まずはラムさんがやりたいことするのがいいと思うけど。」
やりたいこと。
そう言われても、すぐには思い浮かばない。
そもそも私は、ユキにどうしても一緒に遊びたいと頼まれて、このゲームを始めただけだ。
自分から興味を持って選んだわけではない。
だからといって、それを正直に言ってしまえば、わざわざ案内を引き受けてくれたレオにまで迷惑をかけてしまう気がした。
せめて、ゲームの基本くらいは覚えたほうがいいだろう。
「そうですね。ゲームのことよくわからないのですが、初心者がやるチュートリアルとかお店とか見たいかもです。」
「わかった。なら、パーティーを一時的に組もう。その方が効率があがるし。」
一時的に。
その言葉に、少しだけ安心する。
今日の案内が終わるまでの付き合いだと思えば、知らない人と行動する緊張にも耐えられそうだった。
レオが何もない空間へ手を伸ばす。
本人にしか見えないメニュー画面を操作しているらしく、その指先が慣れた様子で宙を滑っていく。
「チュートリアルやってからじゃないんですね。」
普通なら、基本操作をすべて覚えてから、ほかのプレイヤーと行動するものだと思っていた。
「そう。このゲームは人気が上がってから始める人が爆増してそこから初心者に優しいシステムが追加されたみたいだね。」
レオは目の前の何かを確認しながら、小さくつぶやいた。
「ソロが多いから俺も今確認した」
聞き返そうとしたとき、軽やかな通知音が鳴った。
半透明のウインドウが、私の目の前に浮かび上がる。
『レオからパーティー申請が届きました』
その下に、承認と拒否、二つの選択肢が並んでいる。
パーティーへ入れば、メンバー同士で位置や体力を確認できるらしい。説明を一通り読んでから、私は恐る恐る指を伸ばした。
『承認』
触れた瞬間、視界の端に新しい表示が追加された。
自分の名前と体力。その下には、レオの名前と体力が並んでいる。
彼の名前の隣には、見慣れない金色の紋章が浮かんでいた。
何を意味するものなのかは分からない。
装備か、称号のようなものだろうか。
「あ、ありがとうございます。よろしくお願いします!」
少し遅れて頭を下げると、レオは短く答えた。
「よろしく」
こうして私は、初めて名前以外は何も知らない男とパーティーを組むことになった。
まず街の中にある店を軽く見て回ることになった。
Vividの街を歩いて最初に感じたのは、ゲームと現実が不思議なほど自然に混ざり合っていることだった。
通りには、ゲームらしい武器屋や防具屋が並んでいる。店先には剣や杖、鎧などが展示され、性能だけでなく、見た目にこだわった装備も多い。
その一方で、現実の街にもありそうな服屋や雑貨店、カフェなども営業していた。
服屋に並んでいるのは、戦闘能力とは関係のない着せ替え用の衣装。少し歩けば、恋人同士で過ごすのに向いていそうなおしゃれな店もある。
冒険を楽しむだけではなく、この世界の中で暮らすこと自体を楽しめるように作られているらしい。
さらに驚いたのは、店で働いているのがNPCだけではなかったことだ。
接客をしている店員の中には、実際のプレイヤーもいる。VR内のアルバイトとして働き、現実と同じように給料を受け取っているのだという。
私が珍しそうに店内を見回している間、レオは必要なことだけを簡潔に説明してくれた。
知らないことを質問すれば、今後も役に立ちそうな情報まで添えて答えてくれる。けれど、必要以上に話を広げようとはしない。
口数が少ないというより、無駄なことをあまり言わない人なのかもしれない。
いくつかの店を見て回るうちに、もう一つ気になることがあった。
私たちの周囲に、一定数のプレイヤーが集まり始めている。
すぐそばまで近づいてくるわけではない。
こちらの邪魔にならない程度の距離を保ちながら、それでも明らかに私たち――というより、レオのことを見ていた。
最初は、王子様のように整った容姿が目立つからだと思った。
けれど、遠巻きに見ているのは女性だけではない。男性プレイヤーも、レオの姿を見つけると足を止めている。
知り合いなのだろうか。
それとも、このゲームでは有名な人なのだろうか。
気にはなったものの、本人は周囲から向けられる視線をまったく気にしていないようだった。
レオは相変わらず淡々としている。
私が何か言えば答えてくれるし、困っていればアドバイスもくれる。決して冷たいわけではない。
ただ、表情にも声にも変化が少なく、何を考えているのかはなかなか読み取れなかった。
一通り店を回ったあと、残っているチュートリアルの内容を確認する。
最後に指定されたモンスターを討伐すれば、初心者向けのチュートリアルは完了するらしい。
レオは、そこまで付き合ってくれるという。
案外、優しい人なのかもしれない。
そんなことを考えながらも、初めてモンスターと戦うことには緊張していた。
簡単な相手だと言われても、オンラインRPGでは何が正解なのか、まだよく分かっていない。経験者のレオが一緒に来てくれることは、正直かなり心強かった。
私は目の前に表示されたクエストの内容を読み上げる。
「えっと、始まりの森のゴブリンレベル5を5匹、、だそうです!!」
緊張のせいで、最後だけ妙に声が大きくなってしまった。
レオは気にした様子もなく、クエストの情報へ視線を向ける。
「なるほど。レベル上げしてから行きますか?」
さらりと言われ、私は思わず彼の顔を見上げた。
「そんなところまでお付き合いしてもらって本当にいいんですか?お店の案内の時も結構いろいろとお時間貰ってるし」
店を簡単に見て回るだけのつもりだった。
けれど実際には、武器や防具の違い、アイテムの使い方、マップの見方など、今後も役に立つことをいくつも教えてもらっている。
初対面の相手に、ここまで時間を使わせてしまっていいのだろうか。
「大丈夫です。話してて新鮮ですし。」
「え??」
新鮮。
思いがけない言葉に、私は首を傾げた。
「何でもないです」
レオはそう言って、わずかに視線を逸らした。
何が新鮮だったのだろう。
Vividの景色や人の多さに、私がいちいち感動していたことだろうか。
NPCだけではなく、本物のプレイヤーが店で働いていることに驚き、少し騒いでしまったことだろうか。
それとも、何も知らずにカップルだらけのカフェへ入ってしまい、レオが周囲から妙な視線を浴びることになったことだろうか。
初めてのことばかりだったとはいえ、すでにたくさん迷惑をかけている自覚はある。
王子様のような容姿をしているのに、レオはずっと淡々としている。
私と同じように――いや、もしかすると私以上に、人と関わることが得意ではないのかもしれない。
そう思うと、これ以上付き合わせることが申し訳なくなってくる。
ましてや、これから向かうのは初心者向けのクエストだ。
経験者である彼にとっては、退屈なだけではないだろうか。
しかし、当の本人には帰る気などないらしい。
レオは出発の準備を進めながら、回復用のアイテムをいくつか私に譲ってくれた。さらに武器選びまで手伝ってもらい、気づけば戦闘に必要なものが一通り揃っていた。
ここまで準備してもらった以上、もう断るほうが失礼な気がする。
い、行くしかないっ。
本当は、下手な姿を見られるくらいなら、慣れるまで一人で練習したかった。
ユキになら、多少迷惑をかけてもいいと思っていたのに。
まさか初めての戦闘を、知り合ったばかりの男の人――それも、周囲の視線を集め続けている謎のプレイヤーと一緒に迎えることになるなんて。
私は受け取った武器を握りしめ、レオとともに始まりの森へ向かうことになった。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
2話??目です。
慣れないせいでなかなか世界観とかの表現が難しくて戸惑ってます。
なにも分かってない主人公が今後どうなるのか?私にも分かってませんが主人公と一緒に成長していきたいと思いますので、暖かく見守ってくださると嬉しいです。




