急展開
いつも読みに来ていたたいて ありがとうございます。
レインハルト様お勧めのお店は平民向けのお店ではあったが、内装は白一色で統一され、イスやテーブル等もおしゃれな物で、全体的に品のあるお店だった。
平民向けと言っても、アッパークラス向けのようだ。
私とレインハルト様は向かい合って座り、私は紅茶とアップルパイを。レインハルト様はコーヒーを頼む。
王都に来る前、領地にいた時から、私はアップルパイが大好きだった。まさかレインハルト様がそれを知ってはいなかったろうが、久しぶりのスイーツが大好物でテンションが上がる。
「レインハルト様はアップルパイはよろしいのですか?もしかして、あまり甘い物はお好きではありませんか?」
せっかくのおいしいお店なら、レインハルト様とも感動を分け合いたかった。
レインハルト様はへにょっと眉を下げ
「まだお腹が空いてなくてね。甘い物が嫌いな訳ではないよ。普通に食べるよ。ローレライ様は気にしないで食べてね。」
ふふふ、いつもしかめっ面なレインハルト様、そんなお顔もするんですね。ちょっと可愛いと思ってしまう。そして、私も朝食を食べてまだ数時間だが、断言できる。アップルパイなら満腹でも入る。
「そういう事なら遠慮なくいただきますね。」
そうこうしているうちにアップルパイが運ばれてきた。
ホッカホカのアップルパイの上にバニラアイスが乗っていて、フォークを入れるとパイはサクッとして、アイスはとろりとして、パイとアイスのマリアージュがたまらない。温かいパイに冷たいアイスがとても合う。私は思わず頬をほころばせながら夢中で久しぶりのスイーツを味わう。うん、本当に極上。レインハルト様お勧めのお店だけあるわ。
話しをしに来た事などすっかり忘れ去りホクホクと食べ進めた。レインハルト様が優しそうな瞳で私を見つめていた事になど気づきもせずに。
それにしてもアイスあるんだね、この中世ヨーロッパ風の設定の世界で。日月火水と曜日も日本と一緒だし、トイレも快適でその辺のご都合主義は正直とっても助かる。
ひとしきりアップルパイを堪能したあたりで、レインハルト様が話し出す。
「それで、一体何がどうして内職をするはめになっているの?期間限定とも言っていたけれど、そのあたりも差し支えない範囲で話してはくれないか。話しによっては何か力になれるかもしれないし。」
あ、あーそうだった。その話しをしに来たのだった。と、ようやく我に返り
「はい、実は母が病気で倒れてしまいました。我がハーゲン家では十分なお薬代を用意できなくて内職を始めたのです。もっとも私の内職代だけでは足りていないのですが、全くないよりはましなので。
期間限定というのは、母が病気の間だけと言う意味なのです。」
お母様の先が長くない事は何故だか言うのがはばかられた。分かってはいる事だが、改めて第三者に言うと、まるで逃げようがなく本当なのだと宣言しているような気分になって悲しい気持ちで心が暗くなりそうだったのだ。いや、それは本当で逃れようがない事実なのだが、あまり直視したくない事実であった。
レインハルト様は考え込んでいるようだった。
しばらくお互いに無言の時間が流れたあとで
「ここを、出て広場に行かないか?」
と声をかけてきた。きっとこの暗くなった雰囲気に、気をきかせてくれたのだろう。うなずいて2人、立ち上がる。
自分の分は払うと伝えると、私から誘った事だからとスマートに支払いを済ませた。
イケメンはやる事もいちいちカッコイイ。
はぐれるといけないから。と、再びレインハルト様に手をつながれ広場へ歩いてゆく。王都の街はにぎやかで人通りも多い。でもいつも一人で平気で歩いているんだけどね。レインハルト様って、過保護だよね。
広場は噴水を中心にすえてあり、その周りに屋台やベンチがある。私達は空いているベンチの一つに並んで座った。
しばらく無言だったレインハルト様口を開いて何か話そうとしたかと思えば、口を閉じたりを繰り返して、しばらくして意を決したように、私に向き直り
「ずっと、学院に入学してからあなたの事が好きでした。あなた以外の女性は私には考えられない。」
と、一言一言ゆっくりと話したかと思うと、おもむろに私の前にひざますき、私の手を取り
「ローレライ·フォン·ハーゲン様、どうか私、レインハルト·フォン·ヴァイスリヒトと婚約して下さい。」
と。のたまった。
え?え?え?何が起こっているの?私の耳がおかしくなった?
内職からお母様病気の流れで何がどうなって婚約になってるの??
頭の中は疑問符で一杯だが、体は正直で、顔は真っ赤っ赤で、心臓はバクバクいってる。
輝くようなセミロングの金色の髪がそよ風に吹かれてサラサラ流れており、金色の瞳も熱い熱をもっているのが分かる。金色の髪に金色の瞳で、金色、金色のダブルで本当にキラキラしている。そんなキラキラな人が私に婚約をお願いしている事実に気が動転する。
「こ、こ、こ、婚約ですか? わ、わ、わ、私と??」どもる。どもりまくりだ。でも仕方ないと思う。
「そうだ。本当に、私はあなたしか考えられないんだ、あなたしかいらない。あなたでなければ嫌だ。」
金色の瞳がまっすぐに私のアイスブルーの瞳を見つめる。その瞳の熱は本物だ。
「と、とりあえず座りませんか。」
「嫌だ。
あなたが婚約を受けてくれるまでこのままで。
私はあなたを深く愛している。どうか私を受け入れて欲しい。
あなたの瞳に私だけを映して欲しい。私ではだめだろうか、お願いだ。お願い。」
レインハルト様に請われるようなまっすぐな瞳で見つめられると、心臓がギュッてなる。
ひーっ、いや、全然だめな訳ではないけれど、
こんな美形にこんな熱く、真摯に愛を告白されるなんて、前世含めて、なかったです。
亜希の恋愛はもっとあっさりしたのばかりだった。お友だちから、なんとなく付き合いだして。というパターンがほとんどだった。甘いセリフをささやかれるなんて経験は皆無だった。
こんなのドギマギしない方がおかしい。
ティーンエイジャーの恋愛、甘くみていました。ごめんなさい。
婚約、婚約するの?というかしていいの?
レインハルト様をここままにしていいの?
どうやらレインハルト様は本気みたいだ。私?私の気持ちはどうなの?
好き?嫌い?いや。嫌いではない。どっちかというと好き。憧れのアイドルだったし。
いや、今はそれだけじゃない。この、心臓がドキドキしてて、ギュッてなる感じを私は知ってる。恋だ。
コンマ数秒の間に思考が高速回転する。
憧れのイケメンにこんなに情熱的に愛をささやかれて、断れる女がいるであろうか?いやいない。
ああっという間に私も恋に落ちたみたいだし。そしてレインハルト様は私が『うん』と言うまで、てこでも動かなそうだ。
あああああー!受けちゃう?受けていいのかな?よし、女は度胸だ。
「レインハルト様、謹んでお受けいたします。」
本当に言っちゃったよ。
「ありがとう!本当にありがとうローレライ様。」
と叫ぶように言ったかと思うとガバリと私に抱きつき、そのままお姫様だっこをし、その場でくるくると回りだした。
「よーう、兄ちゃん、良かったな。」
「やだー、素敵!おめでとう。」
「ヒューヒュー、おめでとう」
「キャー、お芝居みたい。ロマンチック!」
思いの外、私達の会話は大きかったようで、広場中の人達からパチパチも拍手が沸き、みんなに祝福される。
何これ、ちょっと。いや、結構恥ずかしい。
しかしそれ以上に心が温かいもので満ちてゆく。『こんなに思ってもらえて幸せだ』
自然と頬がゆるむ。
レインハルト様も嬉しそうな顔をして回っている。でも、そろそろ目が回りそうです。
「レ、レインハルト様、そろそろ めっ、目が回りそうです。」
くらくらしながら言葉をしぼり出す。こういうところが色気というかムードが足りないのだな私は。
ふと微笑んでから、レインハルト様はそっと私をベンチに降ろしてくれた。
「す、すまない。あまりに嬉しくてつい我を忘れてしまった。大丈夫?」
優しそうな金色の瞳で真っ直ぐに私の顔をのぞき込んでくる。
「は、はい、なんとか。」
ちっ、近い近い。顔が近い。イケメンのご尊顔の破壊力がすざましい。金色の瞳がまぶしい!私の顔は真っ赤のままだ。胸のドキドキも収まらない。もう少し手加減して欲しい。
やっと甘い所までたどりつきました。




