不確定な想い
いつも読みに来ていただいてありがとうございます。
レインハルト様に送ってもらい、タウンハウスに到着する。
うちのタウンハウスは、とても貴族のタウンハウスとは思えない大きさの
小さくて、庭も猫の額程しかない、質素な屋敷だ。
そして、貴族街のすみっこのすみっこにある。
侯爵令息のレインハルト様からしたら、さぞみすぼらしい屋敷だろう。
だけれども、レインハルト様はそのような事は全く気にされていない様子で
私より先に馬車を降りて、馬車を降りる私に手を差し出してくれて
「ではまた、明日 迎えにくるから。決して一人で行動しないように。」
と、念を押す。
信用ないなあ。
「はい、では明日、お待ちしております。
本日は本当にありがとうございました。」
レインハルト様を見送ってからお母様のお部屋へ行く。
私はお母様似なので、私と同じブルーシルバーのストレートの髪に
アイスブルーの瞳、たれ目がちな目をしている。
「お母様、たたいま。おかげんはいかがですか?」
ベットで上半身だけおこして読書をしていたお母様は優しく微笑んで
「おかえり、私の可愛いロリー。今日は、ずいぶん具合がいいの。
男性の声が聞こえたような気がしたけれど、どうかしたの?」
うっ、耳ざとい。
ベットの隣に椅子を移動して腰かける。
「ええ、街でクラスメイトに会ったら、送って下さったの。」
「ふふふ、その話、ゆっくり聞かせてもらうわよ。」
いたずらっ子のようにお母様はほほ笑む。
お母様のそのほほ笑みがちょっと怖くて苦笑いをする。
でも、今日は加減がいいみたいでホッとする。
このところ、痛み止めの効きが悪くなっているので
辛そうに耐えている日が確実に増えてきているのだ。
ゆっくりと今日あった事を話しだす。
「あら、それで今日は手ぶらなのね。」
そう、いつもは内職の繕い物をしながら2人で話しをする。
週末はタウンハウスに帰り、繕い物をしながら
1週間であった学院での話しなどを話したり、
弟からの手紙を読んで、領地経営を話し合ったりして過ごすのがルーティンなので
今日はなにか手持ち無沙汰だが、お陰で話しに熱が入る。
「ふうん。そのヴァイスリヒト侯爵令息様は ずいぶんとお優しいのね。
氷の君と呼ばれて、女性には冷たいと学院では噂されているとは思えないわね。」
「うーん、確かに優しく接してくれたのだけれども、顔はずっとしかめっ面だったのよねえ。」
「学院では他の女性にもやはり 優しく接するけど、しかめっ面なの?」
えーと、えーと、どうだったかな?
レインハルト様は自分からは女性に関わっていなかったように思える。
他の女性に対し、優しかったかなあ?礼儀正しくはあったように思う。ただそれだけ。
そして、女性に対しては しかめっ面が標準装備だ。
同性相手だと、もっと自然な表情を見せている。
過去に女性と何かあったのだろうか??
そんな設定あったかな? その辺は覚えてないや。
「明日は斡旋所のあと、お買い物にも付き合ってくれるんでしょ?デートね、デート!
クラスメイト以上の関係になっちゃったりして。キャア。」
両手を頬に当て、何故かお母様がポッと頬を赤くする。
いやなんでお母様が赤くなってるのよ。お陰で私が赤くなるヒマがない。
デート?デートかな?ただ心配されただけのような気もするけれど。
「心配してくれるていうのは、それだけ気を向けられているという事よ。
明日は楽しんでらっしゃい。
ああ、あと、もう、無理に内職しなくていいのよ。
私はもう長くないのはわかっているわ。私に気をかけずに、自分の事に気を配りなさい。」
そう言った後、お母様は苦しそうになる。
「少しはしゃいじゃったから疲れたみたい。ごめんなさい。横になるわ。」
「うん、私は部屋にもどるよ。無理しないでね。」
挨拶をして自分の部屋へ戻る。
自室に戻り、ソファーに腰掛けてゆっくり考える。
やはり、今の痛み止めでは効きが悪いのだ。
長くないといっても、つらい思いはさせたくない。
それは私と弟、2人の共通の思い。
割がよくなくても、お母様がやめろと言っても内職は続けなければならない。
とりあえず、明日は今ま通り、できる内職をもらおう。
せめて今のお薬は続けたい。
それから問題はアルベルト・ミュラー
ゲームではお薬代に困った私はミュラーの経営している代筆屋で働き始める。
ミュラーは表では代筆屋を経営しているが、
裏ではお金に困った 少々上流階級の娘を代筆屋で働かせ (字がかけるのはほぼ上流階級)
女性が安心したところで『もっといい稼ぎがある』と誘い変態オヤジの相手をさせるのだ。
この変態オヤジは、普通の娼館では断られるような性癖を持ったオヤジで
ミュラーはそういう男ばかりを集めて荒稼ぎしているのだ。
もっとも女性にもきちんと破格の対価を支払ってくれはする。
だからお金に困ったお嬢様方は辞めるに辞められなくなる。
ゲームの中の私も気がつけば、しっかりお相手をさせられる。
私は男性向け成人指定ゲームの主人公だけあって ボンキュッボンのナイスバディだ。
出るとこ、しっかり出ています。
その上、たれ目がちな目がとろけた時にそそると変態オヤジ達から大好評であった。
いらん標準装備だ。
しかし、そのお陰で より効きのよいお薬を買えるようになっただめ
泣く泣くミュラーの言いなりになるしかなくなる。
お薬代は欲しい。喉から手が出るほど欲しい。
が、変態複数プレイが待っていると分かっている今の私は
そこに飛び込めない。
お母様、ごめんなさい。
残る手だてはレインハルト様。
散々オヤジ共にもて遊ばれたあとで、何故かレインハルト様と想い合う。
そして、私の困窮ぶりを知ったレインハルト様が手を差し伸べてくれる。
ゲームのプレイヤーは、3人いるそれぞれ嗜好の違ったオヤジの中から好きなオヤジを選び、
ローレライを好き放題する事ができる。
プレイヤーは散々、変態プレイを楽しんだ後で、正統派レインハルト様となり、
今度は甘々情熱的なプレイを楽しめるというストーリーなのだ。
しかし肝心の どうして、そこからレインハルト様と両想いになったかは
例によって晩酌ホニャホニャ頭で聞いていたのでよく覚えていない。
多分、亜希の弟もその辺はどーでも良かったように思う。
彼は責め立てられた時のローレライの表情がたまらなく萌える。
そうなので、情緒面は二の次なのだった。
感謝すべきはレインハルト様だ。
色々な目にあったローレライの全てを知った上で
受け入れて下さり、愛してくれるのだ。
とにかく、レインハルト様に頼るにしても
今はまだ、その時期ではないということは確かだし、
あまり頼りたくはない。自分の家の事は自分達でなんとかしたいと思うし、
そもそも今現在想い合っていないしね。
「はあー、行き詰まってる。」
ゲームの知識はあっても、あまり役に立たない。
もし私がミュラーのフラグを全て折ってしまったら
レインハルト様との仲はどうなるのだろう?
ミュラーイベントを発生させなければ、
レインハルト様との想い合う未来も発生しなくなるのだろうか?
わからない。未知数だわ。
少なくとも、未来が変わってしまうにしても、ミュラーイベントは絶対に避けたい。
それよりも、私自身はレインハルト様の事をどう思っているのだろうか。
亜希の記憶が戻る前までの私にとってレインハルト様とは
遠くからながめてたアイドルという感じ。
地味で (と、自分では思っている)、ド貧乏子爵令嬢の私が
侯爵家嫡男で、学院1のイケメンと どうこうなる日が来るなんて
1ミリも思いはしていなかった。
だが、昨日、今日と接してみて
あんなに自分の心臓にくるなんて!
この2日で確実に異性として意識しつつある。
が、まだその程度だ。
そして、たった2日の接触だけれども、今現在レインハルト様は私の事をどう思っているのか?
そこもまだ分からない。
この2日の接触はゲームにはなかったような気がする。
もう、ここがゲームの世界とは思わない方がいいのかもしれない。
よく、自分で考えて、手探りでも進んでいかなければならないのだろう。
とりあえず、今はまだ、一人でうだうだ悩んだところで何が分かるわけではない。
中身四十路だけど、16才のレインハルト様にドキドキしている私がいる。
16才のローレライに感情に引っ張られているのかもしれない。
レインハルト様の気持ちも、私の気持ちも明日以降の展開次第だ。
大丈夫、中身アラフォーだし。恋愛経験済みだし、
今更ティーンエイジャーの恋愛事であたあたはしないはずだ。
と、思っていました。その日までは。




