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ドキドキの再会

いつも誤字脱字報告ありがとうございます。

「行こう」

レインハルト様は私の腕をつかむと、斡旋所から私を引っ張り出した。

腕をつかんだ手が大きくて、がっしりしていて異性を感じてドキッとした。

が、そんな場合ではない。

私、まだ内職を一つも受けてないから困るわ。

というか、何故、斡旋所にレインハルト様が??

頭の中がハテナマークでいっぱいになったが、そうだ、とりあえずお礼を言わなければ!

と、今更思う。

「ヴァイスリヒト様、先ほどはありがとうございました。しつこくて困っていたので助かりました。」


レインハルト様は顔をしかめながら

「供の者はどこにいる?」

「供の者はおりません。一人です。」

ますます顔をしかめてさらに

「では、馬車まで送ろう。馬車はどこに停めてある?」

「寮から一人で歩いて来たので馬車はありません。」


ちょっと間があってから真顔で

「子爵令嬢が供の者もつけないで、一人で街を出歩くなんて危ないじゃないか。

だから、さっきみたいな目に会うんだぞ。

馬車も使わないなんて、もし、さっきの男のようなのにつけられていたらどうするつもりだったんだ。

もっと自分の身に気を配らなければだめだ。」

うん、まあ、それはそうなんだけど

私専属の使用人を雇うお金すらないのよね。うち。

王都でたった一人雇っている使用人はタウンハウスで病気のお母様の世話をしてもらっている。

馬車も、領地にはあるが、タウンハウス用にまでは維持費が賄えなかった。 

御者のお給金と馬の維持費、馬車を持っているだけでそれらがかかり続けるのだ。

今の我が家では維持できないので、必要に応じて辻馬車を使っている状況だ。

というか、レインハルト様、私が子爵令嬢だと知っていたのですね。いつの間に。

またまたドキッとさせられる私。


いやそれより えーと、なんて答えよう。

『うち、お金ないんです。』

なんてズバッとは言いづらいけど、事実だしなあ。

仕方ない、恥をさらすけど、ズバッと伝えるしかない。

「実は我が家はド貧乏子爵家で、使用人も馬車もどちらも維持できないのです。」

へにょっと目尻を下げて、困ったような顔をして言ってみる。


するとレインハルト様は一瞬 目を見開いたあとで片手で口をふさぎ

「……そうだったのか。すまなかったな。そこまでは気がまわらなかった。

しかし、今日はもう帰った方がいい。私が乗ってきた馬車があるから寮まで送ろう。」

「お申し出、ありがとうございます。でもまだ一つも内職を得られていないので、もう一度 斡旋所に戻って内職を得てから帰りますのでお気遣いなく。」

するとレインハルト様は焦ったように

「今日はやめておくんだ。まだあの男がうろうろしているかもしれない。

あの男、とても嫌な目であなたを見ていた。せめて明日にしておいた方がいい。」


ああ、この人、いつもしかめっ面で顔は怖いけど (いや、顔の造作自体はとっても素敵なのだが)

優しくて良い人なのだなあ。さすがヒーロー。

言われてみれば、斡旋所には まだあの変態R18男ミュラーがいるかもしれないから

今日のところは引いた方がいいのかもしれない。

「それもそうですね。分かりました。斡旋所はまた明日にします。

ただ、まだ街に用事がありますので、私はこれで。」


「その用事は明日ではためなのか?一人ではまた危ない目に合うかもしれなのだぞ。不用心過ぎる。

私は今日はまだ所用が残っているが、明日なら時間があるから、付き合おう。そうした方がいい。」

「ヴァイスリヒト様、お心遣いは有難いのですが、そこまでしていただくのは心苦しいです。」

「レインハルト。

私の事はレインハルトでいいハーゲン嬢。クラスメイトだろう。

それに、やはり明日も供の者をつけないのだろう?

一人での街歩きは危ないし、また斡旋所に行くのならなおさら私がついて行った方が安全だ。

むざむざ危ない目に合うかもしれないのを知ってしまったら、ほおってはおけないよ。」


えー、いつも一人で平気なんだけどな。

けど、せっかくの、みんなの憧れのイケメン、

レインハルト様からのお誘いをお断りするのももったいないし、

ゲームのヒーロー レインハルト様の現実世界の本性を垣間見るにはいい機会かもしれない。

「わかりました。ではレインハルト様と呼ばせていただきます。

私の事もどうかローレライとお呼び下さい。

それから、お言葉に甘えて明日、斡旋所と街歩きにお付き合いいただいてもよろしいですか?」

「もちろんだ。私から言い出した事だしな。

明日、馬車で寮まで迎えにゆこう。」


「いえ、今日はこれからタウンハウスに帰りますので、お手間ですが、

うちのタウンハウスまで迎えに来ていただけると助かります。」

「タウンハウスがあるのに寮生活しているのか?」

「うちのタウンハウスは学院まで馬車でないと通学が厳しい場所にあるので……」

そう、馬車がないからタウンハウスから通学できなくて、寮に入ったのだ。

馬車の維持費より寮費の方が安かったのだ。

全ては言わせないで下さい。


どうやら私の願いがかない、レインハルト様は察してくれたようだ。

「ああ、……では、とりあえずローレライ様、あなたをタウンハウスまで送ろう。」

その『……』部分が察してくれた部分らしいですね。

「レインハルト様はまだご用事が残っているのでは?」

「ああ、でもローレライ様を送ってゆく時間くらいは大丈夫だ。」


そう言うと、優しく私をエスコートしてくれてヴァイスリヒト家の馬車へ向かう。

男性にエスコートしてもらうなんて、小さい頃にお父様にしていただいて以来だわ。

まだお母様が元気な頃に弟相手にマナーのレッスンをしたのは除外していいだろう。

あれ?私、家族からしかエスコートしてもらったことがないわ。

16年生きてて家族以外はないって事実にちょっと涙がちょちょぎれそうになるが、

レインハルト様のエスコートの仕方が優しくて思いやりが感じられて嬉しくて、涙はすぐに引っ込んだ。

私て図太いだけじゃなくて現金な女だ。


しかし、図太くても、前世アラフォーであって男性とお付き合いの経験があっても

みんなの憧れのイケメンに優しくエスコートしてもらうなんて事態は前世含めて初めてなので

ドキドキが止まらない。

レインハルト様に聞こえてしまうのではないかと心配するくらいドキドキいってる。

こういうところは16才なんだなあと実感する。


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