お仕事斡旋所
いつも誤字脱字報告ありがとうございます。
翌朝はスッキリと目が覚めた。
昨日は1日で色んな事があり過ぎて、よく眠れないかと思いきや、
あっさり寝付いて、かつ熟睡だった。
図太い自分がちょっと恨めしい。
ここでうりうり悩んで、ゲッソリして月曜日にレインハルト様から
「どうしたの?大丈夫?」とか心配されたりするようなはかなげな女になってみたいものだ。
残念ながら前世の記憶が戻っても、ここが男性向けゲームの世界であったと知っても、
『ま、なっちゃったものは仕方ないか』て納得しちゃってる。
この図太さはローレライのか、亜希のか??
どちらの記憶をさかのぼってみても、どうやらどちらも図太いみたいだ。
やはり、ローレライも亜希も同じ魂の持ち主なのだな。と、妙に得心する。
しかし、どんなに図太くても取り急ぎお金は必要だ。
前世の記憶を取り戻した今なら、ド貧乏領地でもまだやれる事がないかと
ゆっくり記憶をまさぐりたいが、
領地改革を実行して、軌道に乗って、現金収入を得られるまではどうしてもタイムラグがある。
それまで待てないのだ。
苦しむお母様に、今、痛み止めが必要なのだから。
昨日はお金の事で頭が一杯になりハプニングが起こったが、
いつまで頭を一杯にさせてても、お金は湧いてこない。
実はレインハルト様に泣きつけば、なんとかなるネタを亜希の記憶から思い出したのだが、
まだレインハルト様と親しくなったわけでないので泣きつくのは はばかられる。
それに、まずは、できるだけ自分の力でなんとかすべき。とも強く思う。
いつもの、繕いものの内職は これ以上増やすと勉強に支障が出る。
ド貧乏子爵家からないお金を捻出して学院に通わせてもらっているのだ。
落第は避けたい。
とりあえず行動あるのみ! じっとしててもお金は増えないのだ。
まずはいつものお仕事斡旋所に行ってみよう。
◆◆◆◆◆
王都の街は寮から徒歩20分くらいの所にある。
馬車を頼むお金ももったいないし、足腰には自信があるので
『どうか割のいい内職がみつかりますように。』と祈りながら街まで歩く。
今日は天気も良いのでお散歩日和だが、私の心はイマイチだ。
割のいい内職といっても、単発では困るのだ。
勉強に支障が出ない範囲で、かつ、長期の割のいい内職。
そんな、都合のいい仕事あるかな? 見つからなかったら一体どうしたらいいのだろう?
一歩進むごとに気が滅入ってくる。
いくら図太くても それとこれとは話しが別だ。
斡旋所のお仕事依頼コーナーはよくある異世界ものの、冒険者ギルドのように
仕事の依頼がメモ書きで壁に張り出してある。
私はそれを端から端まで目を皿のようにしてチェックする。
隅から隅までチェックして、3回見直したところで途方にくれる。
やっぱりないなあ、割のいい内職。
ちょっと涙目になるけど、泣いたからって状況は変わるわけではない。
前世アラフォーなので、その辺も図太い。
こんな状況で、その図太さが ちょっと悲しくなるけど
いやいや、くじけけたまるか!
わずかな望みをかけて、受け付けのお姉さんに声をかけに行く。
「ロミーさん、割のいい内職、なんかないですか?」
毎週のように内職をもらいに来る私はお仕事斡旋所の常連さんで、
受け付けのロミーお姉さんとも顔なじみなのだ。
「ロリーちゃん、可哀想だけど張り出してあるだけなのよ。
学院に通いながらできる内職は なかなかないのよねえ。」
頬に手を当て、困ったようにロミーさんは、言う。
そうか、やはりないのか。
わかっちゃいたけど、足元に底なしの穴があいたような絶望的な気分になる。
「ロミーさん、そこをなんとか!」
それでもあきらめきれずに手を合わせてロミーさんを拝み倒してみる。
「そう言われても、うちは斡旋してるだけだからねえ。」
可哀想な子を見る目で見られるが、同情するなら金をくれ!と言いたい気分だ。
ああ、本当に内職ないんだ。
本当にないんだな。
2回言う。2回言ってみても 『ない事実』は変わらない。
それでもしつこくロミーさんを拝み倒していたら
「お嬢さん、割のいい内職を探してるのかい?
ちょうど今から仕事依頼を出そうとしてたところだよ。
うちで働いてみない?」
恰幅の良い、と言えば聞こえが、いいが、ややでっぷりした
栗毛の中年男性に声をかけられた。
がばりとおじさんの方を、向き
「本当ですか? どんなお仕事なのですか?
学院通いながらでもできますか?教えて下さい!」
「ああ、私はアルベルト·ミュラー。
うちはね、手紙の代筆屋をしているんだ。お嬢ちゃん学院に通ってるて事は貴族なんだらろう?
もちろん字は書けるよね。学院が終わった後、手紙の代筆をしてくれればいいよ。
うちは花街のお得意様をたくさん抱えてるから仕事も安定しているし、
へたな内職よりずっと割がいいよ。どうだい?」
ピキッ! 私は固まってしまった。
ブーブーブー! 頭の中で赤いランプが点滅し、ブザーの音が鳴り響く。
アルベルト・ミュラー 代筆屋
知ってる。亜希の記憶が怒涛のように流れ出てくる。
代筆屋は<誘惑の花園>のメインの舞台で、
この、アルベルト・ミュラーはプレイヤーが選べる3人いる変態オヤジの中の一人だ。
こいつに関わってしまったが最後、ゲームのシナリオ本編が始まってしまう。
冗談じゃない。お金には困っているが、変態R18の世界はごめんだ。
お金払ってでも断りたい。
なにせ私は今世こそは目指せ、幸せな結婚なのだ。
本来の、ゲーム通りに変態R18メニューをこなしても、
ゲーム上では、幸せな結婚はできるはずだが、
欲張りな私は 目指せ、初めての人とゴールインという野望も密かにいだいているのだ。
断る一択だ。
「あの、ミュラーさん、せっかくのお申し出なのに申し訳ないのですが、
花街にかかわる事はちょっと。家族も、許さないと思いますのでお断りさせて下さい。」
速攻スパッと断った。
「そう?でも受け付け嬢と仲良くなるくらいここに通っているらみたいだから
お金が必要なんじゃないの?ずいぶん必死でお願いしていたじゃない?いいの?」
ミュラーは、笑顔で食い下がる。
笑顔がキモい。
そして、不躾に私の体を舐めるように見ている。
キモっ、キモっ、
絶対あり得ないから。こんな、キモ男とRするなんて。
心の、中でブンブン頭を振る。
「本当に申し訳ありませんが、結構です。」
「うちは金払いいいよ。試しでいいから ちょっとやってみなよ。」
ミュラーしつこい。困った。張り倒したいが、斡旋所で揉め事は避けたい。
それに、こうして大柄な男性に迫られると、ちょっと怖いものがある。
前世アラフォーだったが、今は16才の小娘だ。
本当にどうしよう? 真面目に困っていたその時
「その娘、困っているだろう。
しつこくするのは、やめるべきでは」
強い口調で若い男性が 私とミュラーの間に割り込んできた。
ミュラーは、一瞬 顔をしかめると
「チッ、わかったよ。でも気が向いたら是非おいで。」
と未練たらしく言って去っていった。
「あの、ありがとうございます。」
ペコッと頭を下げ、顔をあげてみると
助けてくれた男性はレインハルト様だった。




