ミュラー再び
いつも読みに来ていだだいて、ありがとうございます。
平日の仕事の後はいつも厨房でまかないを食べてから帰る。
ギルベルト様とのお話しも終わったので、まかないを食べに厨房へと向かう。
「こんばんは。まかない一つお願いします。」
「ああ、ロリーちゃんね。ちょっとだけ待っててもらえる?」
「はい、いいですよ。その間に何かお手伝いしましょうか?」
「じゃあ、そこのそれを裏口に持っていってもらえるかな?」
「はい、わかりました。」
まあ、ゴミ捨ててやつだ。
裏口でゴミを捨てていると、通りがかった馬車が止まる。
馬車から降りてきたのはミュラーだった。
ミュラーとは、表の顔は代筆屋の取りまとめ。裏の顔は違法売春の斡旋業をやっている男だ。
代筆屋の仕事だと女性を集めては、『もっといい稼ぎがある。』と裏稼業の違法売春をさせる。
しかも相手をさせられるのは、普通の売春宿では断られる性癖を持った男達なのだ。
ゲームではまんまと表の顔に捕まって、私はクセの強い様々な男達にいいようにされてしまう。
だから、この男は要注意人物なのだ。
「お嬢さん、こんな所で下働きなんて大変だろう?うちに働きに来ないかい?
おや、よく見たら君はロリーちゃんじゃないか。かわいそうに、うちならもっと楽して稼げるよ。」
嘘つけ!よくもぬけぬけと言える。
「いいえ、ここで満足しているので大丈夫です。では。」
と、厨房へ戻ろうとすると、はしっと手首をつかまれた。
「まあ、そう言わずに、一度うちへ来てごらんよ。君ならすぐ売れっ子になれるよ。こんな所でゴミ捨てしてるよりずっといいよ。悪い話しじゃないだろう。」
ニタァと笑いながら話す。
笑顔がキモっ、つかまれている手首も、なんかネトネトしてるような気がする。
全体的に無理!
「本当に結構ですので離して下さい。」
振りほどこうとするが、ガッチリつかまれて、振り切れない。焦る。
「斡旋所のロミー姉さんに聞いたよ。お母さんが病気なんだって?お薬代、必要だよね。
なんならドーンと先払いしてあげてもいい。だから、一度でいいからうちに来てみてごらん。うちは安心できる職場だから。」
ええ、ええ、そうやって安心させて、給金をドーンと先払いして。
『もう、お金を受け取ったんだからそのぶん、体で返してもらおう。』て、なるんだよ。知ってるんだから。
「ちょっ、本当に離して下さい。大きな声を出しますよ!」
ミュラーはニヤリと笑いながら
「それは困ったねえ。」と言いつつ、反対の手で私の口をふさぐ。そしてそのまま馬車に連れ込もうとしている。
ひえー、マジでピンチ!誰か!!助けて。
「モゴモゴモゴー!」
ジタバタして、馬車に乗らないよう暴れてみる。
しかし、男の力は存外に強くて、どんどん引きづられてゆく。
本当に誰か助けて!
すると、
「そこで何をしている!彼女を離せ!」
厨房の方から誰かが走ってくる。
この声はレインハルト様だ。
レインハルト様が助けに来てくれたんだ。。
うれしさと安心感でボロボロと涙があふれてくる。
「チッ、」
ミュラーは舌打ちをして、私を離して慌てて一人で馬車へ駆け込む。
そしては馬車はあっという間にいなくなってしまった。
ホッとしてその場にへたり込んでしまう。
レインハルト様は、ハアハアと息を切らせながら駆け寄ってきた。
「ロリー、ロリー、大丈夫だった?」
と、言いながら優しく私を抱きしめる。
「レインハルト様、レインハルト様!怖かった。助けて下さってありがとうございます。」
私もレインハルト様を抱きしめ返す。
少し汗ばんだレインハルト様の体温を感じて、本当に安心する。
「ロリー、何があったの?あの男は?」
と、問われたので、実は…と、あった事を話す。
「あの時の斡旋所の男か。完全に目をつけられているな。今度会ったら◯してやる!」
と、それはもう大層怒ってくれた。
「レイン、◯してはダメですよ。それは、私も今回大分危なかったけれど…
こうしてちゃんとレインが助けに来てくれたから嬉しかったです。」
「どこか痛い所はない?大丈夫?」
うーん、痛いというより握りしめられた手首が気持ち悪かったなあ。と、手首を見ると
ガッチリとミュラーの手の跡が手首に残って赤くなっていた。
レインハルト様はそれを見て青ざめる。
「早く館に戻って冷やそう。これは絶対に痛いやつじゃないか。」
「見た目程は痛くないので大丈夫ですよ。でも、安心したらお腹がすきました。」
ニコリと微笑み返す。
レインハルト様は私のボロボロに泣いた顔をハンカチで拭き取ってくれた。
優しいし、気が利くし、ピンチの時に助けに来てくれるしで、
これはマジで惚れ直してまうわ。
いや、もう大分好きになっていたけれど、今回の件でより惚れ直した。
厨房で2人でまかないを食べながらレインハルト様が話してくれた。
私の仕事が終わったと聞いたから、厨房に会いに来たら、
ゴミ捨てに行ったきり、なかなか戻ってこない。
これはおかしいなと、レインハルト様が外に出たら、私がミュラーにつかまっていたという。
「心臓が止まるかと思った。」
はい、心配させて、すみません。
でも、まさか夜の館の裏口でミュラーに会うとは思いもしませんでした。
ミュラーフラグ、しっかり立ったままだったんですね。
ここのところご無沙汰だったので、ミュラーの事を半分忘れていました。
その日の帰りの馬車の中でずっとレインハルト様は私の手を握ってくれていた。




