ギルベルト様とコーヒータイム
いつも読みに来ていただいて、ありがとうございます。
今日もギルベルト様に付いて通訳をしていた。
会合が終わって、相手が帰った後でギルベルト様が
「ロリーさん、少し老人の相手をしてもらえないかな?コーヒーはいかが?」
と言ってきた。興味本位で応じる事にする。
「私には娘がいてね、出来の良い娘だったから、それはもう期待していた。
それなのに、駆け落ちまがいの事をして出ていってしまってね。
その当時の私は怒り狂ったよ。ちょうど今のロリーさんとたいして変わらなそうな年でね。
思い出さないようにしていたのだが、ロリーさんと会ったら娘の事を次から次へ思い出してしまったよ。」
コーヒーを一口含んでから続ける。
「ロリーさんは貴族なのだろう?なぜここで働いているのかね?」
「実は母が病気なのです。お薬代が高価なので、縁あってこちらて働かせていただいています。」
「薬代の為に何故あなたが働く必要がある?父上は一体何をしているんだ。そんなに甲斐性がないのか!」
「いえ、父は馬車の事故で10年前に亡くなっています。
本当は領地経営のお金を使えば払えない事もないのですが、やっと軌道に乗ってきた領地経営を潰したくないから、薬はいらないと母が頑固に拒否をするのです。
そして先行き長くない母の為に、私から何かをしてあげたかったというのもあります。」
身を乗り出していたギルベルト様はドサッと椅子に座り込む
「そうか、父上は亡くなっていたのか。失礼な事を言ってすまなかったね。
ちなみに母上は何という病気なのかね?」
「はい、クレスプという病気です。」
「クレスプ…あの、治らないという。」
ギルベルト様の顔色が悪くなる。
「ギルベルト様はクレスプをご存知でしたか?」
「ああ、私の祖父がそうだった。病気がわかってからはあっという間だった。」
考え込むかのように腕を組み、しばしば沈黙か訪れる。
「しかし、治らないのであれば薬はいらないのではないかな?」
「ええ、確かに病気を治す薬はないのですが、母の場合、痛みが相当酷いのです。せめて生きている間は苦しんで欲しくなくて……」
今度は私が沈黙する。
「これは暗い話題になってしまったな。
ロリーさん、あなたの所作は大変美しくて、いつも思わず目で追ってしまうよ。
どなたか高名な方に従事していたのかな?」
「ふふふ、母です。うちは貧乏だったので家庭教師を雇えなくて、私も弟も母からみっちりしごかれました。語学もそうです。いずれ交易て使えるから、しっかり覚えておきなさい。と叩き込まれました。」
「たいした母上だね。あなたには弟もいるのだね。今は何を?」
「弟は私の4つ下で、今は領地を取り回してもらっています。もちろん、手紙で母や私とやり取りしながらなのですが。あと2年したら学院に通うため王都に来るので、私と入れ替わろうと思っています。
今は爵位は王家預かりになっていて、弟が成人次第叙爵される予定です。
身内びいきかもしれませんが、弟は大変優秀なんですよ。」
にっこり微笑んでおく。
「そうか、君達姉弟は苦労をなさっているのだね。
ところでロリーさんには婚約者はいるのかね?」
うおっと、今この話しの流れでそう来る?
「はい、私にはもったいない素敵な方がいます。」
思わず顔が赤くなる。
「はははは。その顔を見ただけでよくわかるよ。
良かった、素敵な相手で。
ロリーさん、あなたから見て父上と母上は幸せそうだったかね?」
「はい、それはもう、私にもこんな風に想い会える人がいたらいいなとずっと思っていたくらいです。」
「そうか、それなら良かったね。
そしてロリーさんも想い会える素敵な人と巡り会えたみたいだしね。
うん、老人の長話につき合わせてしまって悪かったね。
君はまだ学院生なのだろう?早くお帰り。」
そしてギルベルト様は過分なチップを置いて帰っていった。
あのタヌキオヤジ。深刻そうな顔はしていたが、結局、お母様への心配の言葉なんて一言も出なかった。
絶対にまだ許せていないね。
私や弟、つまり、孫には優しさっぽいものは見せたけど、どこまで本心なんだが。
爵位を息子に譲ってはいるが、商売には今でもしっかりこうして現役で交渉している。
どこまでが本心なのか分かったものじゃない。
まあ、ゲーム通り進むのなら、まだまだ当分、頑固タヌキジジイだ。
私はいつも通り接するだけだけどね。
夏風邪ひいて3日間寝込みました。
皆さんもお気をつけてー




