私の好きなもの
いつも読みに来ていだだいて、ありがとうございます。
さて、教科書はボロボロびりびりにされながらも、新しいお仕事は始まる。
その週から平日3日、見習いとして働き出した。
お客様につく前に、お給仕さんへの合図のジェスチャーを教わる。
数個だし、簡単なゼスチャーなのですぐに覚えられた。
通訳の仕事自体は、そう難しくはなさそうだった。
通訳なので、意見を求められる事もない。その辺は楽だ。
但し、この仕事をしっかりこなすには、普段から新聞などを精読しておく必要はありそうだった。
初日の翌日から新聞を3つ買って精読し始めた。
経済面、貿易面、娯楽面、それぞれ話題になりそうな語句をおさらいする。
ハウス·デア·ホフヌングで働かない日は、相変わらずレインハルト様とカフェテリアでお勉強会だ。
毎日が充実している。
けれどレインハルト様は心配してくれたようで
「新しい仕事も始めて、慣れなくて疲れているんじゃない?
週末は土日のどちらかうちに来て、ゆっくり庭を散策しないか?」
と、誘ってくれた。
ヴァイスリヒト家のお庭!素敵そう。
「はい、喜んで。では土曜日がいいです。」
と、いう事で土曜日はヴァイスリヒト家へ行く事になった。
はじめのお仕事3日間はつつが無く終わり、今日はヴァイスリヒト家へ行く。
2人で手を繋いで、ゆっくりと庭を散策する。
さすが国1、2を争う大商会を経営しているだけあってなのか、
王都の中心部近くだのに、すごい広さのお庭だった。
お庭の中に噴水や池まである。
「ロリーはどんな花が好きとかある?」
と聞かれ
「一般的ですが、薔薇です。特に白薔薇が好きです。
父と母が出会ったきっかけが白薔薇だったそうなのですよ。
以来、父も母もそのきっかけの
白薔薇を大事に育てていて、私もそれに憧れていました。」
「では薔薇のコーナーに行ってみようか。確か白薔薇もあったと思うよ。」
薔薇の一角には白薔薇もあった。
そして東屋もあったのでレインハルト様はここで一休みしよう。といった。
使用人に声をかけてお茶の準備をさせる。
その間に私達は様々な薔薇を見て歩いた。
「これからは白薔薇を見るとあなたを思い出しそうだ。あなたはまるで白薔薇の妖精のようだ。」
と、レインハルト様は笑う。
「ふふふ、お父様もそう言って、お母様を口説いたそうですよ。」
「ああ、あなたは母上とそっくりだからね。でも二番煎じだっかー。」
と苦笑する。
「それでも、そう言っていただけると、とても嬉しく思います。」
そしてお茶の準備ができたので東屋に行く。
今日の紅茶は薔薇の香りの紅茶だという。
ふわりと優しい薔薇の香りのする美味しい紅茶だった。
様々な焼き菓子に混じって小ぶりなアップルパイもあった。
嬉しい!アップルパイ大好き♡
……ん、待てよ?2人で初めて街歩きした時もアップルパイが美味しいお店に行った。
「レイン、もしかして私がアップルパイ好きだって知っていましたか?」
「う、うん。実は知っていた。去年、たまたまエルマさんと話しているのを聞いたんだ。」
「それであの日、わざわざアップルパイが美味しいお店に連れていってくれたのですね。
レイン、ありがとう。いつもいつも、あなたは私を気にかけてくれて。」
「あなたが喜んでくれたのなら、それでいいんだよ。」
と、レインハルト様は笑う。
ああ、その笑顔も素敵。
始めのうちこそ、ぎこちない笑顔だったが、最近は自然な笑顔になってきている。
「レイン、最近のあなたの笑顔、とても素敵ですよ。惚れ直しちゃいます。」
「そう言ってくれるのは、あなだだけだよ。あなたは私の心の氷すら溶かす。
私の方こそ毎日あなたに惚れ直している。」
うきゃー、照れくさい。顔が真っ赤になってるのが自分でわかる。
◆◆◆◆◆
私達がお庭の散策をしている間に侯爵夫婦かお母様に挨拶に行っていた。
「マリアお姉様、お久しぶりです。こんなにおやつれになって。」
ゾフィー様は涙を浮かべる。
「まあ、ゾフィー様、本当にお久しぶりですね。ベットからでごめんなさいね。」
「私を覚えていて下さったのですか?」
「もちろんよ。ゾフィー様がよく差し入れて下さっていたクッキー、いつも美味しかったわ。
忘れるものですか。
残念ながら私はもう長くありません。ただ、子供達の事だけが心残りでしたが、ローレライの事だけはお陰様で肩の荷がおりました。ニクラウス様、ゾフィー様、本当にありがとうございます。
そして、ローレライの事を何卒よろしくお願いします。」
「私達の方こそ、素敵なお嬢様と縁が出来て喜んでおります。息子、レインハルトは姉妹に囲まれて育ったせいか、ちょっと女性に対して変に達観した所があって内心困っておりました。
このままでどうなるのかと心配していたら、ローレライ嬢に出会い、やつは変わりました。
感謝しているのですよ。」
ニクラウス様は言う。
「そう言っていただけると、ありがたいですわ。
良いお医者様まで派遣していただいてこちらこそ感謝しています
お陰様で良いお薬を出していただけて、今は落ち着いて過ごせているのですよ。」
「マリアお姉様、ご実家には何もお知らせしてはいないのですか?」
「ふふふ、もう縁が切れていますから。」
「お子様たちにも何も話されてはいないのですね。」
「ええ、あの子達にも何も。それでいいのです。何も知らせずに終わらせます。」
そうして穏やかに顔合わせは済んだ。




